50代で大企業から中小企業に転職したMさん「大企業出身というだけで期待される」

50代以降、役職定年を機に多くの方が転職を検討しますが、「人材エージェントから紹介される企業は中小企業ばかり…」「中小企業に転職しても問題ないのか」と不安に感じる方も中にはいらっしゃいます。

今回は大企業で管理職を経験した後、中小企業に転職したMさんに、中小企業での働き方や転職後に直面したギャップについてお話を伺いました。

Mさんのプロフィール
大学卒業後大企業A社に入社し、管理職を10年間経験する。役職定年をきっかけに関連会社であるB社に勤務し、チームリーダーや法人向けの営業に携わるも、中小企業C社に再度転職。現在は管理職として、経営企画から人事まで幅広く管掌している。

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大企業管理職から中小企業へ転職した理由とは

ーこれまでのご経歴について教えてください。

大手企業A社で約30年勤務しました。この間、会社の合併などを経験しながらも、同じグループ内で一貫して働き続けました。本部で勤務後、現場での経験を積み、最後の10年ほどは管理職としてチームマネジメントを行っていました。

しかし、役職定年を迎え、関連会社のB社へ転籍することになります。B社では4年間、営業チームのリーダーとして働き、主に法人取引先に対して営業提案を行っていました。

その後、関連会社から中小企業C社に転職し、管理本部次長として勤務しています。この会社では経営企画から、グループ会社の運営、経理、総務、人事まで、幅広い管理業務を担当しています。

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突然の役職定年、やりがいのないポストに失望した

ー大企業A社で役職定年を経験されています。そのときの心境はどのようなものだったのでしょうか。

マネジメントから離れることや給与・賞与が減ることは、正直なところ、かなり辛かったですね。また、役職定年に関する通達は突然でした。もちろん企業は上層部と人事の間でやり取りを経たうえで後任を探し、決定しているのでしょうが、本人にとっては突然知らされるようなものです

引き継ぎを含めて、おおよそ4日から1週間、長くても2週間以内で次の職場に着任します。給与も着任日から異なる基準で計算されますから、翌月から下がってしまいます。

ー役職定年後、関連会社のB社に転籍された時は、どのような心境でしたか?

まず、配置されたポストに対して不満を抱いていました。A社で管理職を経験していましたから、B社でもそれなりの職にはつけるだろうと思っていたのですが、上席部長代理という、管理職に一歩届かないポストだったのです。

業務内容にも不満は少なからずありました。それまでは大手法人の部長クラスや中小企業の社長クラスを相手に仕事をしていましたが、転職先では個人向けの営業が中心でした。またチームリーダーを任されましたが、チームには気の強い年配女性が多く、精神的な負担を感じていましたね。

給与面では、他の関連会社と比較すると悪くはありませんでしたが、与えられたポストが自身の希望に合致しなかったことや、チーム運営の困難さから、大きなストレスを感じていたと思います。

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「やっぱりマネジメントがやりたい」中小企業への転職を決断

ー上記のような背景もあり、再び転職を検討されたのですね。どのような理由があったのでしょうか。

「また管理職のポストで働きたい」そう強く感じたからです。これまでひとつの業種しか経験がなかったので、管理職として異なる業種でチャレンジしてみたいという思いもありました。転職先のC社では、新たなフィールドでマネジメントに携われる点を魅力だと感じたのです。

もちろん年収が減額することに対して懸念はありました。大企業A社に在籍していた頃はピーク時で約1500万円ほどあった年収が、転籍や転職を経て650万円ほどまで下がりました。

しかし、その時点では、ある程度の給与の減額は仕方がないと考え、転職に踏み切りました。

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ー転職にあたっては、どのような準備をされましたか。

ビズリーチやリクルートなど、いくつかの転職サービスに登録したり、インターネットやYoutubeでの情報収集も行ったりして、自分なりにさまざまな方法で情報を集めました。

転職活動に費やしたのは半年ぐらいでしょうか。応募した数は正確には覚えていませんが、年収が希望に合っていても管理職のポストではなかったり、管理職としての募集であっても給与が望む水準に達していなかったりと、希望するポストや年収の条件、さらには自分の年齢が合わず、苦労しました。

当時、私は57歳。定年まであと3年というところで、転職するには厳しい年代だったのでしょう。紹介のメールはたくさん来るのですが、採用されるには至りませんでした。

ー企業規模へのこだわりはありましたか。

ある程度の知名度がある企業が望ましいとは感じていましたが、「大企業でなければならない」というこだわりはありませんでした。

元々働いていたA社が大企業だったので、大企業特有の決裁スピードが遅いことや、責任範囲が狭いといった状況を、転職後は避けたいと思っていました。それよりも、これまでの経験を存分に活かせる環境であることを重視していました。

ーC社にはどのような経緯で転職されたのでしょうか?

知人の紹介です。大企業A社時代の先輩がC社で働いていたのですが、家庭の都合で退社することになり、後任を探す際に仲が良かった私を思い出して、声をかけてくださったようです。

話を聞いたうえで条件が合うと判断し、面接に進みました。給与に関しては自分が望む水準には達しませんでしたが、他にも候補者がいたので早く決めたいという思いもあり、妥協しました。

ー中小企業で働くにあたって、葛藤や不安はありましたか。

特に大きな葛藤や不安はありませんでした。A社時代の取引先には中堅・中小企業が多く、どのような環境で働いているかイメージできていたので、抵抗がなかったのかもしれません。

ー転職活動を振り返って「やっておくべきだった」と思うことはありますか?

転職先の企業にも独自の待遇制度があるので、転職先の待遇が60歳以降にどうなるのかという点は、転職時にもっとしっかり確認しておけば良かったと思っています。

最近では定年を65歳に延長している企業も増えていますが、依然として60歳以降は雇用形態が変わる可能性が高い状況です。

60歳の時点でどれくらい減額されるのか、60歳以降の昇給や昇格はあるのか、という点は、面接時によく確認することが大切です。

年金受給や住宅ローンの返済などにも関わってきますから。加えて、労働組合の有無についても確認しておくと良いと思います。

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大企業とのギャップを感じ、孤軍奮闘する日々

ー実際に中小企業で働き始めてから、ギャップを感じることはありましたか?

大いに感じました。率直に言えば、大企業と比較してさまざまな面で遅れを感じます。最も痛感したのは人材育成の違いでした。大企業では、新任の管理職に対して泊まりがけの研修やグループ討議、ケーススタディなど、徹底的な教育プログラムが整備されています。

一方、中小企業であるC社ではそういった体系的な育成システムが整っていないのが現状です。社員の意識の問題も顕著です。例えば、主任から係長に昇進しても、依然としてプレイヤーとしての意識のままで、マネジメントスキルが十分に習得されておらず、役割を果たせていません。

また能力のある人材に業務が集中する傾向が強く、一部の社員のストレスが蓄積されやすい状況も生まれているように思います。加えて、ハラスメントやコンプライアンス上の課題、待遇面での不満から、若手社員を中心に離職率が高い点も問題となっています。

給与面でも、60歳を過ぎると給与が減額され、昇給や昇格も対象外となってしまう。管理職は続けられるものの、これ以上昇格がないというのはモチベーションにも影響します。また、これは他の60歳以上の方からもよく聞くことですが、給与は下がっても業務は逆に増えていくのです。

ー仕事の進め方での違いはありますか。

ITインフラの整備状況は全く違いますね。C社は業務の多くを紙ベースや手作業、手入力に依存している状況で、システムも一貫性に欠けています。業務の途中で手作業が必要になるなど、効率的な一気通貫の処理ができない状況です。

情報セキュリティの管理体制が十分でないことも大きな課題でしょう。システムトラブルへの対応スピードや適切さも、大企業とは大きな差があります。リスクマネジメントも事後対応型で、問題が発生してから対策を考える傾向を感じます。

おそらく、年収が高くないために、システムを作れる優秀な人材確保が難しいのでしょう。結果としてシステム運営のレベルに大きな差が出てしまうのです。基本的なルールが整備されていない部分も多く、一から作り上げていく必要を感じています。

ーMさん自身は、どのようにC社で奮闘されているのでしょうか。

朝礼で書籍やインターネットの情報を引用し、リスクマネジメントの基礎知識やタスクをやり切る方法を伝えるなど、地道な取り組みをしています。

反応は人によってさまざまです。素直に受け止めて前向きに取り組むメンバーもいれば、モチベーションが低く、なかなか受け入れられない方もいます。長年同じ環境で働いてきた方々にとって、新しい取り組みへの抵抗感があるのは無理もないこと。諦めずに継続的に取り組んでいます。

社内コミュニケーションについては、年に数回程度の懇親会を実施しています。ただA社時代と比べると給与水準が違うため、部下を誘いづらく、頻繁に開催できないですね。

ー逆に、中小企業で働くことのメリットはありますか?

最大のメリットは、意思決定のスピードの速さです。私の上には代表取締役しかいないので、提案や相談事項があれば、1on1ですぐに方向性を決められます。

大企業では決裁に時間がかかり、承認を得るためだけに多大な労力を要していました。時間をかけたにも関わらず、時には全否定されることも。現在は、合理的な提案であれば採択される可能性が高く、その分の労力を本質的な業務に向けられます。

また、社員同士の距離が近いのもメリットです。部署間の垣根が低く、部署を超えて直接的なコミュニケーションが可能なので、相談や依頼などのやり取りはとてもスムーズです。

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活躍し続ける秘訣は「学ぶ姿勢」と「働き方の工夫」

ー50代以降、中小企業で働き続けるために必要なマインドセットはどのようなものでしょうか?

大企業での経験を持つ人は、転職先で「何でも知っているだろう」「即戦力になるはずだ」と思われる可能性がありますが、期待され過ぎると危険です。わからないことは素直に認め、自分で勉強したり、周囲に聞いたりして吸収しましょう。最初が肝心です。

他には、働き方を改善する姿勢も大切です。私は具体的な社内ルール作りを通じて、働き方改革を推進してきました。中小企業ほど、 非効率な会議や不必要な残業などの課題をもつ傾向があると感じています。

年齢を重ねるにしたがって、どうしても体力は落ちていくもの。ある程度割り切って定時退社したり、早めに出社すると決めたりと、自分自身に合った勤務スタイルを確立することが大切です。無理をすれば健康に影響が出てしまいますから。

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これまでの知識と経験を活かし、人生のラストステージを

ー今後はどのようなキャリアを積み上げていきたいですか?

65歳前後で、もう一度新たなステージに行ってみたいと考えています。

転職を経て、経営やマネジメントに関わる知見を積み重ねてきました。経営企画室での仕事や役員会議への出席など、実践を通して学んできた部分が大きいです。このような経験を、また別の会社で活かしてみたいですね。

次の転職では、中堅くらいの事業規模の企業で、ある程度自分の力が活かせるポジションを狙いたいと考えています。あるいは、起業するのも良いかもしれません。どちらにせよ、もう一回人生のラストステージで輝きたいですね。

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まとめ

今回のMさんの事例からも分かるように、50代以降の中小企業への転職では、待遇面や企業文化の違いなど大企業とのギャップを感じるケースが見られます。その一方で、意思決定の速さや組織の距離の近さといった中小企業ならではのメリットを活かせば、新たな価値を生み出すことも十分可能です。

転職を検討する方は、給与や雇用条件の確認に加え、企業風土や働き方を主体的にコントロールできる環境であるかを見極め、準備をしていきましょう。

 

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