50代を迎え、今後の働き方や、社会との関わりを模索する方が増えています。現職を続けつつ新たな社外での活動を望むものの、就業規則により副業が難しかったり、リスクを避けたいという方も少なくありません。
そのように悩む50代の方は「プロボノ」への挑戦がおすすめです。プロボノは経験や専門スキルを活かし、社会貢献しつつ、リスクを抑えながらセカンドキャリアのヒントを見つける有力な方法です。
今回はプロボノを始めるメリットや注意点、プロボノの探し方、始め方について解説します。
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データで見るシニア世代の就労意識と課題

50代を迎え、多くの方が定年後のキャリアや人生設計について考え始めます。現代のシニア層は、かつての「定年=引退」のイメージとは異なり、定年後も高い就労意欲を持っています。
Indeed Japanの調査によれば、50代の実に75.5%が、60代や70代になっても「働きたい」または「働く必要がある」と感じています。
この背景には、経済的な理由だけでなく、社会との繋がりを保ちたい、健康を維持したい、そして何よりも仕事を通じてやりがいを感じたいという、多様な動機が存在します。
50代以降のキャリアにおける選択肢の中には転職以外にも、独立や副業(複業)などが挙げられます。
50代以降は役職定年や再雇用といった年収が下がるタイミングもあり、年収が下がることを懸念して、副業を始めたいと考える方もいらっしゃいます。
副業に関しては、株式会社パーソル総合研究所の調査によると、シニア就業者の実施率は7.5%(2023年)と、20代に次いで高いものの、全体としてはまだ少数派です。
その背景には「副業に挑戦したいが就業規則が原因でできない」という方もいるでしょう。
そのような50代の方々にとっては、プロボノが有力な選択肢となり得るでしょう。プロボノは、原則として「無報酬」であるため、「就業規則で副業ができない」状況にある方々にとっても、経験を活かし、やりがいを感じながら、柔軟に関われる魅力的な活動といえます。
参考:
Indeed「「シニア世代の就業」に関する意識調査を実施」
株式会社パーソル総合研究所「働く10,000人の就業・成長定点調査」
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そもそも「プロボノ」とは?ボランティアや副業との違いを理解する

「プロボノ」という言葉を耳にしたことはあっても、その正確な意味や、ボランティアや副業(複業)と何が違うのか、はっきりと理解している方はまだ少ないかもしれません。
「プロボノ」とはラテン語の「Pro Bono Publico(公共善のために)」を語源とし、専門家が職業で培った知識やスキル、経験を活かして、NPOや地域団体などに無償または実費のみで取り組む社会貢献活動です。
プロボノとボランティアの主な違い
プロボノとボランティアは、どちらも社会貢献を目的とする点では共通していますが、決定的な違いは「専門性の活用」にあります。
一般的なボランティア活動は、特別なスキルや経験がなくても参加できるものが多く、例えばイベントの手伝いや清掃活動など、労働力を提供する形が主です。
一方、プロボノは、参加者が本業で培ってきた専門知識や、実務経験を直接的に活かすことが前提となります。
プロボノと副業(複業)の主な違い
プロボノと副業(複業)の最も大きな違いは、「報酬の有無」と「主たる目的」です。副業(複業)は、多くの場合、現在の本業に加えて追加の収入を得ることを主な目的とします。
もちろん、自己実現やスキルアップ、キャリアの複線化といった目的も含まれますが、金銭的な対価が発生する点が基本です。
これに対してプロボノは、原則として無償で行われる社会貢献活動であり、金銭的な報酬よりも、社会貢献の実感、やりがい、自己実現、新たな人脈形成などを重視する点が異なります。
「就業規則により副業ができない」50代の方々にとって、この「無報酬である」という点が、プロボノを検討する上で非常に重要なポイントとなります。
企業によっては副業を禁止している場合でも、無報酬の社会貢献活動であるプロボノであれば、会社の規定に抵触せずに参加できる可能性があるからです(ただし、就業規則の確認は必須です)。
シニア世代の方々にとって、副業は収入源を確保する以上に重要な意味を持ちます。50代、60代になると、転職や役職定年、再雇用などにより収入が減少するケースが多々あります。 また、それらの状況の変化を通じて仕事へのやりがいを失う可能性も[…]
これらの違いをより分かりやすくするために、以下の表にまとめました。
プロボノ・ボランティア・副業(複業)の比較
特徴 | プロボノ | 一般的なボランティア | 副業・複業 |
主な目的 | 社会貢献、専門スキルの活用、自己実現、やりがい | 社会貢献、労働力提供、経験 | 収入獲得、キャリア複線化、スキルアップ |
報酬の有無 | 原則無償(交通費などの実費支給の場合あり) | 原則無償 | 有償 |
求められるスキル | 高い専門知識・実務経験 | 不問の場合が多い、または特定の作業スキル | 専門スキル、労働力、または特定の資格 |
活動例 | NPOのウェブサイト構築、経営戦略支援、法務相談 | イベント運営補助、清掃活動、被災地支援 | コンサルティング業務(有償)、ライティング業務(有償)、講師 |
このように、プロボノは、ボランティアの「社会貢献性」と、専門職としての「スキル活用」を組み合わせた活動であり、副業とは異なり「無報酬」であるという点が大きな特徴です。
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50代からプロボノを始めるメリットとは?

50代にプロボノ活動を始めることは、これまでのキャリアで培ってきたものを社会に還元するだけでなく、ご自身の今後のキャリアにとっても多くのメリットをもたらします。
ここでは、特に50代の方々がプロボノを通じて得られる具体的なメリットについて掘り下げていきます。
社会から何を求められているかを知る機会になる
最大のメリットは、長年培ってきた豊富な経験や専門スキルを社外で生かすことで、社会から実際に何を求められているのかを知る良い機会になる点です。
企業や組織の中で「当たり前」のように使っていた知識や技術が、NPOや地域団体といったリソースの限られた組織にとっては、まさに「喉から手が出るほど欲しい」貴重な財産となり得ます。
例えば、マーケティング戦略、ウェブサイト構築、財務管理、人材育成といった分野での専門性は、多くの非営利団体が抱える課題解決に、即戦力として貢献できます。
これまで所属していた「会社の看板」なしに、自分自身の能力で貢献し、成果を目の当たりにすることは、大きな自信につながるでしょう。特に定年が近づき、自身の市場価値について考える機会が増える50代にとって、非常に意義深い経験となります。
誰かの役に立っているという実感を得られる
50代以降になると、現役時代に比べて仕事の責任範囲が変化し、「現役と比べてやりがいを感じない」、「私は会社から求められていない」と感じる方も少なくありません。
プロボノを通じて社会の課題解決に関与し、誰かの役に立っているという実感は、精神的な充足感をもたらすでしょう。
金銭的な報酬とは異なる「心の報酬」とも言えるこの感覚は、特にセカンドキャリアにおいて、「今後どう働くか」を深く考えるきっかけになります。
新たな人脈形成と視野の拡大
プロボノ活動では、普段の職場や生活圏では出会うことのない、多様なバックグラウンドや価値観を持つ人との新たな出会いもあるでしょう。
NPOのスタッフ、他のプロボノワーカー、支援先の受益者など、様々な立場の人と協働する中で、刺激を受け、視野が大きく広がります。異業種・異世代との交流は、新しいアイデアや発想を生み出すきっかけにもなります。
こうした人脈は、セカンドキャリアを考える上でも貴重な財産となる可能性があります。
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プロボノ活動の具体的な分野と求められるスキル

プロボノの活動は多岐にわたる分野で、様々なスキルが求められています。
ここでは、50代の皆さんが持つ経験が活かせる具体的な活動分野と、そこで求められるスキルについて解説します。
経営・事業戦略支援
団体の持続的な活動を支えるための組織基盤強化に関わる支援です。中期的な事業計画の策定サポート、新たな収益事業の立案、既存業務プロセスの見直しと改善提案などが考えられます。
経営企画、事業開発、管理部門などでの経験が活きる分野です。
IT・Web関連支援
多くの団体が情報発信力の強化や業務効率化に課題を抱えています。ウェブサイトの新規構築やリニューアル、既存サイトの運用保守、会員管理システムの導入支援、SNSアカウントの立ち上げや効果的な活用方法の指導などが求められます。
プログラミングやデザインの専門スキルだけでなく、過去に社内システムの導入やウェブサイト運営に関わった経験も活かせます。
広報・マーケティング支援
団体の活動内容や理念を広く社会に伝え、支援者や参加者を増やすための支援です。魅力的な団体紹介パンフレットやイベントチラシの作成、プレスリリースの作成・配信、広報戦略全体の立案、効果的なファンドレイジング(資金調達)キャンペーンの企画・実行などが挙げられます。営業企画や広報部門での経験が直接役立ちます。
運営サポート、人材育成など
プロジェクト全体の進行管理を行うプロジェクトマネジメント、イベントの企画運営、日常的な事務作業の効率化支援、ボランティアスタッフの育成プログラム開発など、団体の具体的なニーズに応じた多様な活動があります。
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求められるスキルは専門性だけではない

確かに、プロボノでは各分野における専門知識や技術が求められます。しかし、それ以上に重要視されるのが、長年の職業人経験を通じて培われた「ポータブルスキル(持ち運び可能なスキル)」です。
主に以下のような能力がプロボノで求められます。
求められる能力 | 説明 |
コミュニケーション能力 | 支援先の担当者や他のプロボノメンバーと円滑に意思疎通を図り、信頼関係を築く力。 |
課題解決能力 | 支援先が抱える問題の本質を見抜き、現状のリソースを踏まえた上で、実現可能な解決策を立案し実行する力。 |
プロジェクト遂行能力 | 目標設定、計画立案、進捗管理、チーム内の役割分担、成果物のとりまとめなど、プロジェクトを最後までやり遂げる力。 |
リーダーシップ・チームワーク | 必要に応じてチームをまとめたり、多様なメンバーと協力して目標達成を目指す力。 |
これらのポータブルスキルは、特定の業界や職種に限定されず、どのような仕事においても必要とされる普遍的な能力です。50代の皆さんは、これまでのキャリアの中で、意識せずともこれらのスキルを日々磨いてきているはずです。
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50代からプロボノを始めるまでの実践ステップ

プロボノに興味を持っても、「具体的にどうやって始めたらよいのか分からない」、「自分に合った活動が見つかるだろうか」といった不安を感じる方もいらっしゃるでしょう。
ここでは、50代の方が無理なくプロボノを始めるための具体的なステップと、活動機会の探し方について分かりやすく解説します。
自己分析とプロボノに参加する目的の明確化
まず最初に行うべきは、ご自身の「これまで」と「これから」を見つめ直すことです。
経験・スキルの棚卸し: これまでの職務経歴を振り返り、どのような業務に携わり、どんなスキルを習得してきたのかを具体的に書き出してみましょう。
得意なこと、成果を上げたことだけでなく、仕事を通じて喜びや情熱を感じたことも重要な手がかりになります。他者からのフィードバックも参考に、客観的に自身の強みを把握することが大切です。
一方、なぜプロボノをしたいのか、その目的をはっきりさせましょう。例えば、「社会に貢献したい」「特定の社会課題の解決に関わりたい」「新しい人脈を築きたい」「セカンドキャリアのヒントを得たい」「自分のスキルが通用するか試したい」など、目的によって選ぶべき活動や関わり方が変わってきます。
働き先を探す
以下ではプロボノの働き先を見つける方法を紹介します。
コーディネート団体・マッチングサイトの活用
プロボノワーカーと支援を必要とするNPOや地域団体を繋ぐ専門のコーディネート団体やオンラインのマッチングプラットフォームが数多く存在します。
代表的なものとしては、「認定NPO法人サービスグラント」、「activo(アクティボ)」、「ふるさと兼業」、「NPO法人 二枚目の名刺」 などがあります。
これらのサイトでは、様々な分野のプロジェクトが紹介されており、自身のスキルや希望条件に合うものを探すことができます。
まずは登録して、どのような募集があるのか情報収集から始めてみましょう。説明会が開催されている場合もあるので、積極的に参加してみるのも良いでしょう。
自治体・NPO団体の募集
自治体が主体となってプロボノプロジェクトを推進しているケースもあります。例えば、東京都の「地域の課題解決プロボノプロジェクト」 や、大阪府の「大阪ええまちプロジェクト」 などが知られています。また、関心のあるNPOや地域団体のウェブサイトを直接確認したり、問い合わせたりして、プロボノの募集がないか尋ねてみるのも一つの方法です。
所属企業の制度利用: 近年、企業のCSR(企業の社会的責任)活動の一環として、社員のプロボノ活動を支援する制度を設けている企業が増えています。SMBCグループ、SMBC日興証券、住友商事、SAPジャパンなどがその例です。自社にそのような制度がないか、人事部やCSR担当部署に確認してみましょう。企業経由であれば、安心して活動を始めやすいというメリットがあります。
応募と面談
関心のあるプロジェクトが見つかったら、応募に進みます。
支援先団体に対して、丁寧な自己紹介とともに、なぜその活動に関心を持ったのか、どのように貢献できると考えているのかを伝えましょう。
活動を始める前に、支援内容、活動期間や頻度、期待される役割や成果物について、支援先団体と十分に話し合い、双方の認識を合わせておくことが非常に重要です。これにより、後のミスマッチを防ぐことができます。
小さく始めてみる
特に初めてプロボノに挑戦する場合は、最初から大きな責任を伴うプロジェクトや長期間のコミットメントを求められる活動を選ぶのではなく、まずは短期のプロジェクトや、関与度の比較的低いものから試してみることをお勧めします。
例えば、数時間で終わる単発の相談会への参加や、数週間から2ヶ月程度の短期間で成果物を出すプロジェクトなどです。活動頻度も、週に1回、月に数時間程度から始められるものもあります。
小さな成功体験を積み重ねることで、自信を持って次のステップに進むことができるでしょう。この「小さく始める」というアプローチは、本記事で触れられているような「組織に縛られる不安」を軽減し、リスクを抑えたい50代の方々にとって、安心してプロボノの世界に足を踏み入れるための賢明な方法です。
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プロボノを始める際の注意点

プロボノ活動は多くのメリットをもたらしますが、始めるにあたって、いくつか注意すべき点があります。特に在職中の方は、本業とのバランスをどう取るか、そしてどのような心構えで臨むべきか、事前に理解しておくことが成功への鍵となります。
就業規則の確認
これは最も重要な確認事項です。 多くの企業では、副業や兼業に関する規定が就業規則に定められています。プロボノは原則無償ですが、活動内容や関与の仕方によっては、これらの規定に抵触する可能性もゼロではありません。
特に、競合避止義務や情報漏洩に関する規定には注意が必要です。活動を始める前に、必ず自社の就業規則を確認し、不明な点があれば人事部門や上司に相談しましょう。
企業によっては、プロボノ活動を業務時間内に行うか時間外に行うか、その線引きや労災の扱いについても検討が必要となる場合があります。この確認を怠ると、意図せずして社内規定に違反し、本業に影響が及ぶリスクがあります。
まさに「リスクのない方法」を求める50代の方々にとって、この点は細心の注意を払うべきです。
時間管理の徹底
プロボノに充てる時間を明確にし、本業の業務時間や休息時間を圧迫しないよう、自己管理を徹底する必要があります。無理のない範囲で活動計画を立てることが、長く続けるための秘訣です。
プロボノに対する期待値の調整
プロボノは素晴らしい活動ですが、過度な期待は禁物です。プロボノは基本的に無償の社会貢献活動であり、副業のような金銭的報酬は期待できません。主な報酬は、やりがいや達成感、社会貢献の実感といった非金銭的なものであることを理解しておきましょう。
責任感を欠かさない
プロボノは無償とはいえ、専門家としてのスキルを提供する以上、一定の責任が伴います。提供するスキルや成果物に対して、プロフェッショナルとしての責任を持ち、質の高いアウトプットを目指しましょう。
情報管理とリスク
活動を通じて、支援先の内部情報や個人情報に触れる機会があるかもしれません。
守秘義務の遵守: 業務上知り得た情報については、細心の注意を払い、外部に漏らさないよう守秘義務を徹底しましょう。これは、企業が従業員のプロボノ活動を認める上でも重要な懸念事項の一つです。
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まとめ
50代からの人生は、まだまだ長く、可能性に満ち溢れています。もし、あなたがこれまでの経験を活かして何か新しいことに挑戦したい、社会との繋がりを感じながら意義ある時間を過ごしたいと考えているのであれば、ぜひ「プロボノ」という扉を叩いてみてください。
まずは情報収集から、あるいは本記事で紹介したようなマッチングサイトを覗いてみることから、その小さな一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
その一歩が、想像以上に充実した、輝かしいセカンドライフへと繋がっていくかもしれません。
これまでのご経験をプロボノで活かしてみませんか?BEYOND AGEでは、プロボノに興味のある方からのご相談も歓迎しています。あなたの想いやスキルについて、まずはお気軽にお聞かせください。ご連絡お待ちしております。
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