親御さんの定年退職。長年勤め上げたことへの「お疲れ様」という気持ちと同時に、これからの生活に漠然とした不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
「退職してから、なんだかずっと家にいて元気がない…」 「特に趣味もなさそうだし、新しい仕事を探す気配もない…」 「このままでは、うつ状態になってしまうのではないか…」
そんな心配を抱え、親御さんのために何かできることはないかと悩む方に向けて、この記事では、定年退職後、親御さんが直面する可能性のある心境や状況を理解し、親御さんのセカンドライフをサポートするための具体的な方法やヒントを解説します。
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定年退職後、健康状態が「良い」人が行っている習慣とは?

定年退職後、心身ともに健康状態が良い人はどのような習慣を持っているのでしょうか。内閣府の令和5年版高齢社会白書によれば、65歳以上の男女の30.9%が「健康状態が良い」と回答しています。
また、
- 地域の清掃やサークルなど地域活動に参加する人の42.0%
- 毎日の散歩や軽いスポーツを続ける人の41.6%、
- 読書や手芸など趣味をもつ人の40.8%
が「健康状態が良い」と感じています。
また、同調査では「健康状態が良い人ほど生きがいを感じている」という結果も示されています。社会とのつながり、適度な運動、好きなことへの没頭というシンプルな行動が、退職後の心身を支え、生きがいを感じる重要な鍵といえます。
参考: 内閣府「令和5年版高齢社会白書 第3節 〈特集〉高齢者の健康をめぐる動向について」
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なぜ親は定年後に元気をなくしてしまうのか?考えられる原因とは

定年退職を機に、親御さんが元気をなくしたり、ふさぎ込んだりしてしまう背景には、いくつかの心理的・環境的要因が考えられます。
社会から求められる役割の変化に伴う喪失感
長年勤めてきた会社での役職や仕事内容が、その人のアイデンティティの一部となっていることは少なくありません。「〇〇社の部長」「〇〇の専門家」といった肩書がなくなり、社会から求められる役割を失ったと感じることで、大きな喪失感や虚無感に襲われることがあります。特に仕事一筋だった方ほど、この傾向は強いかもしれません。
生活リズムの乱れとメリハリのなさ
毎日決まった時間に起床し、出勤するという長年の生活リズムが、定年退職によって大きく変わります。時間に縛られない自由は喜ばしい反面、何をすれば良いかわからず、生活にメリハリがなくなってしまうことがあります。これにより、無気力になったり、昼夜逆転の生活に陥ったりするケースも見られます。
人との繋がりの希薄化
職場は、多くの人にとって主要なコミュニケーションの場です。退職によって、同僚や取引先との日常的な交流がなくなり、社会的な孤立感を深めることがあります。特に、地域社会との関わりが薄かったり、仕事以外の交友関係が少なかったりすると、孤独を感じやすくなります。
また先ほどの内閣府の調査では、健康状態が良くないと回答した人ほど、地域の活動に参加する割合が少ない結果となっています。
このように、人とのつながりは心身ともに健やかに過ごす上で重要といえます。
健康面への不安
定年退職前後は、加齢に伴い、体力や記憶力の低下など、身体的な変化を感じやすくなる時期です。自身の老いを強く意識させ、将来の健康に対する不安を増幅させることがあるでしょう。
「これから自分はどうなっていくのだろう」「この体力で新しいことを始められるのだろうか」という漠然とした不安が、気力の低下につながることも考えられます。
経済的な不安
定年退職を経て年金生活に入り、現役時代よりも収入が減少することで、経済的な不安を感じるタイミングでもあります。
「老後資金は足りるだろうか」「病気になったらどうしよう」といった経済的な不安が、精神的な負担になることがあります。
公益財団法人生命保険文化センターが行った調査によると、老後生活に「不安感あり」とした人の割合は8割を超える結果となりました。不安に感じる内容は「公的年金だけでは不十分(79.4%)」が最も高く、お金に関する心配を抱える人が多いことが伺えます。
これらの要因が絡み合い、親御さんの「元気がない」状態を引き起こしている可能性があります。
参考:公益財団法人生命保険文化センター「老後の生活にどれくらい不安を感じている?」
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定年退職後の親の不安を解消するためにできること

焦らず、親御さんの気持ちに寄り添いながら、少しずつ前向きな変化をサポートするための具体的なステップをご紹介します。
まずはじっくり話を聞く「傾聴」が重要
最も大切なのは、親御さんの気持ちを否定せずに、ありのまま受け止めることです。「もっとこうした方がいい」、「なぜ何もしないの?」といったアドバイスや詰問は避け、まずは「最近どう?」「何か必要なサポートがあったら言ってね」と優しく声をかけ、じっくりと話を聞く「傾聴」の姿勢を心がけましょう。
親御さんにとっても率直に全てを相談することは難しいかもしれませんが、子どもが自分の気持ちを理解しようとしてくれていると感じるだけでも、安心感につながります。
一緒に新しい趣味や生きがいを探す手伝い
「何か新しいことを始めてみたら?」と提案するだけでなく、具体的に一緒に探す手伝いをしてみましょう。
例えば、「昔好きだったことは?」「若い頃にやってみたかったことはある?」など、過去の経験や興味関心について尋ねてみて、実現できそうなところから一緒に始めてみましょう。
家庭菜園、料理、ウォーキング、写真、絵画、楽器演奏など、自宅で手軽に始められることから促してみるのも一つの方法です。小さなことでも「できた」「楽しい」という経験が、次のステップへの意欲につながります。
地域活動やボランティアへの参加を促す
新しい社会とのつながりを作ることは、孤独感の解消や生きがいの再発見に非常に有効です。地域のサークル、ボランティア活動(学童の見守り、地域の清掃活動、イベントの手伝いなど)を紹介してみましょう。
「人の役に立っている」という実感は、精神的な充実感をもたらします。最初は気乗りしないかもしれませんが、「一度見に行くだけでも」と誘ってみるのも良いでしょう。
働く意欲がある場合は再就職をサポート
もし親御さんに働く意欲があるものの、一歩踏み出せないでいる場合は、情報提供や手続きの面でサポートできます。
履歴書の作成を手伝ったり、パソコン操作に不慣れであれば求人サイトの探し方を教えたりしましょう。体力的に無理のない範囲で、経験やスキルを活かせる業務や軽作業などの仕事を探すこともおすすめです。
BEYOND AGEでは、定年を迎えた親御さんについてのご相談も多く寄せられています。シニアのキャリアを理解しているBEYOND AGEだからこそ、皆様のお力になれることがあります。
ぜひお気軽にお問い合わせください。
健康管理への意識を高める声かけ
心身の健康は、充実したセカンドライフを送るための重要な基盤です。
「一緒に散歩しない?」「健康診断の結果どうだった?」など、さりげなく健康を気遣う言葉をかけましょう。またどこか体調が悪そうな時には「今月中に必ず病院に行ってね」と定期的な健康診断の受診を促し、必要であれば付き添うことも検討しましょう。
自分の意思では病院に行かない方も、子どもから言われて病院に行く方も多くいらっしゃいます。
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定年退職後も「イキイキと働くこと」を選択した方の事例を紹介

定年退職後は必ずしも引退というわけではありません。定年退職後も多くの方が働いています。ここで、定年退職後に新たなキャリアを歩み、イキイキと働く方の事例を紹介します。
現役時代は4度の社長賞、NEC元部長が語るシニア独立成功術
長野のNEC支社1期生としてキャリアを開始し、東京異動後に600億円規模の大型プロジェクトを成功させて4度の社長賞を受賞した五十嵐剛氏。トップダウンから現場重視のボトムアップ型へとリーダーシップを転換し社内改革を牽引した経験を糧に、役職定年を機に独立を決意。
資格取得や出版準備で不安を克服し、リーダー育成支援会社を設立すると同時に刊行した初の著書はベストセラーとなり、講演依頼が相次ぐ。日本再生を目標に掲げる同氏は、豊富な経験を持つシニア世代へ「独立は早いほど良い。自信を持って挑戦を」と力強いメッセージを送る。リーダーシップで社会を元気にしたいという情熱が、第二の人生を輝かせている。
若い頃からがむしゃらに働き、経験や知識が豊富なシニア世代。しかし、「独立に興味はあるものの、なかなか一歩が踏み出せない」と感じる方も多いのではないでしょうか。 今回は、株式会社リーダーズクリエイティブラボ代表取締役CEOの五十嵐 剛[…]
「情報発信とコミュニティへの所属が重要」博報堂出身・永田弘道氏のシニア独立術
博報堂で30年以上、50社超のブランド戦略を担った永田弘道氏は、バブル崩壊を契機に「提案」から「ファシリテーション」へ働き方を転換し、一体感を生む手法を磨いた。58歳で独立すると、YouTubeやSNS発信、人脈営業で顧客を獲得。現在はインナーブランディングを武器に創業50〜100年企業を支援し、日本の地域経済活性を目指す。学びと行動を重ねて不安を乗り越える経験から、50・60代には「所属するコミュニティを選び、行動せよ」と助言。
「独立に関わる不安は払拭できるのだろうか」と、独立前にさまざまな不安を感じて踏み切れない方も多くいらっしゃるかと思います。 今回は博報堂でキャリアをスタートし、30年以上にわたり50社以上のクライアントと100を超える商品・ブランド[…]
定年後を自由に楽しむ“午前だけアルバイト”という新しい選択
大手電機メーカーで35年勤め60歳で定年退職したHさんは、自由時間を満喫するも半年で「予定がない日々」に飽きを感じた。そこで午前9〜12時だけスーパーで品出しを行うパートに就き、体を動かし社会と交わることで生活にリズムと充実感が復活。
基礎費用は年金と貯蓄で賄い、パート収入は趣味に充当する発想で金銭的な不安も抑えた。定年後を豊かにする鍵は①少し働いて“生活の軸”を作る、②趣味や学びに積極投資して今を楽しむ、③家族・社会への関心を広げ自己中心化を防ぐこと。定年は価値観をリセットし第二の人生を主体的に設計する好機だと語る。
人生100年時代と言われる今日、定年後の人生設計はますます重要になっています。定年退職や再雇用、転職、独立などさまざまな選択肢があり、「人生の再設計」が求められています。 35年働いてきた大手電気メーカーを60歳で定年退職したHさん[…]
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定年退職を迎えた親にアドバイスをする際の注意点

親御さんを心配するあまり、ついやってしまいがちな行動が、かえって状況を悪化させてしまうこともあります。ここでは、避けるべきNGな関わり方について確認しておきましょう。
過度な干渉や指示
「あれをしなさい」「これをやってみたら?」と一方的に指示したり、親御さんの行動を細かく管理しようとしたりするのは避けましょう。良かれと思っての行動でも、親御さんにとっては「子ども扱いされている」「信頼されていない」と感じ、反発心や無力感を強めてしまう可能性があります。
無理強いする
本人が乗り気でないのに、趣味や活動、再就職などを無理強いするのは禁物です。プレッシャーを感じさせたり、追い詰めたりするような言動は、かえって心を閉ざさせてしまいます。本人の意思とタイミングを尊重することが大切です。
他の家庭と比較する
「〇〇さんのお父さんは、退職後も元気に働いているのに」「〇〇さんのお母さんは趣味を楽しんでいるのに」などと、他の家庭の親御さんと比較するのはやめましょう。親御さんを焦らせたり、劣等感を抱かせたりするだけで、何の解決にもなりません。
「昔は良かった」と過去を否定するような発言
「昔はもっと活動的だったのに」「前の仕事では輝いていたのに」といった、過去と比較して現状を嘆くような言葉は、親御さんを傷つけ、自信を失わせる可能性があります。変化を受け入れ、今の親御さんを肯定的に見守る姿勢が大切です。
大切なのは、親御さんを一人の人間として尊重し、その人自身のペースや価値観を大切にすることです。
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まとめ
親御さんの定年退職は、本人だけでなく、家族にとっても大きな変化です。特に、退職後に親御さんが元気をなくしている様子を見るのは、子どもとして非常につらく、心配なことでしょう。
しかし、こうした変化は誰にでも起こり得ることであり、決して親御さんだけが特別なのではありません。大切なのは、その変化の背景にある気持ちを理解しようと努め、焦らず、根気強く寄り添うことです。
定年退職などによるご家族のキャリアの変化にお困りの方はいつでもお気軽にBEYOND AGEにご相談ください。