50代以降のキャリアにAIスキルが必須になる未来について

日本の50代以降のビジネスパーソンにとって、キャリアの在り方が大きな転換期を迎えています。人生100年時代と言われ、50代以降もまだ働き盛りですが、一方で急速に進化するAI(人工知能)技術が仕事の現場を変えつつあります。

「AIなんて自分には関係ない」と毛嫌いしていると、今後のキャリア構築が厳しくなるかもしれません。

本記事では、国内外の調査データなどをもとに、50代以降のキャリアの現状と課題、AIがもたらす仕事環境の変化、AIを避けるリスクと活用するメリット、そして50代から始められるAI活用法やキャリアを伸ばす具体的ステップについて解説します。

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AIがもたらす仕事環境の変化

世界経済フォーラム(WEF)が実施した、世界各地域803社を対象とした調査「The Future of Jobs Report 2023」によれば、今後5年間で6,900万の新規職種が生まれる一方、8,300万の職種が消滅し、約1,400万の雇用が純減するという予測が示されています。​

このように技術革新による雇用の創出と破壊の波(構造的な労働市場の変化)が加速しており、特にAIの進化は無視できないトレンドとなっています

一方、日本においても生成AI(ChatGPTのようなテキスト生成AI)は急速に普及し始めており、博報堂が実施した調査によれば、全世代で認知度93%と非常に高く、実際に使ったことがある人も全体の35.6%に達しています​。

定期的に利用している層は20代が24.7%と最も高い一方、若年層での利用率が目立ちます。一方、50代・60代のシニア層ではそれぞれ15.2%、16.9%と低めの水準にあり、若者と比べると利用頻度が控えめな傾向が見られます。

参考:

World Economic Forum”The Future of Jobs Report 2023”

株式会社 博報堂”変化の波に乗れ!人生100年時代と生成AIの向き合い方”

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AIを毛嫌いすることで生じるリスク

AIを毛嫌いし敬遠する人も少なくありません。博報堂の調査によれば、生成AIについてはどの年代でも革新的・便利といったポジティブなイメージを抱く割合に差はない一方、情報を悪用されるのではといった不安など、ネガティブなイメージのスコアは50代から大幅に高くなることが分かりました​。

つまりシニア世代は若年層よりも技術革新への期待と同時に、不安も強く感じているのです。しかし、「難しそうだから」「自分には関係ない」とAIを遠ざけてしまうとしたら、それ自体が大きなリスクになり得ます。

以下ではAIを避けることでどのようなリスクがあるのかについて解説します。

労働市場におけるスキルの陳腐化

AIを避け続けるリスクの一つは、スキルの陳腐化により淘汰されてしまうリスクです。Marsh & McLennan Companies(MMC)の報告によれば、高齢労働者ほど自動化による職業喪失リスクが高いと指摘されています。

高齢労働者の多くは、過去の業務に特化したスキルを持つため、新しいテクノロジーによる変化に適応しにくく、AIの影響を受けやすいとされています。

また同論文で紹介されているOECDの調査によると、55〜65歳の成人のうち、新しいテクノロジーを活用した業務をこなせる人の割合は10%にとどまり、25〜54歳の42%と比べて大幅に低い傾向にあるとされています。

AIの普及に伴い、デジタルツールの活用が求められる職場が増える中で、ICTスキルの欠如が再就職などの障壁となるリスクがあります。

過去のやり方やスキルに固執しアップデートしないままでいると、「昨日まで通用した仕事」が「明日の職場から消えている」可能性があるのです。

世代間で広がるAIスキル習得の格差

全米経済研究所の調査では、50歳以上の労働者で、職場で生成AIを活用している人は17%程度と、40歳未満の約34%に比べ半分ほどしかいないとの結果があります​。

さらに人材サービス企業Randstadの調査では、Z世代の45%がAIスキル訓練の機会を与えられているのに対し、Boomer世代(一般的に50代以上)はその半数程度しか訓練機会を得ていないことが分かっています​。

AIスキル習得の機会格差が存在する中で「自分はAIなんて使わない」と尻込みしていると、会社からも「学ぶ気がない人」と見なされ重要な仕事や昇進のチャンスを逃す恐れがあります。

AIを学ぶことが差別化要因に

周囲がAIに尻込みする中いち早く学べば、それだけで差別化要因にもなり得るのですが、毛嫌いしていてはその土俵にも立てません。

そして何より、AIを避ける人はその恩恵を受けられないという明確な機会損失があります。次の章で述べますが、AIを上手に使えば業務効率や成果、さらには仕事への満足感にまで良い影響があることがデータで示されています​

参考:

Marsh & McLennan Companies(MMC)”THE TWIN THREATS OF AGING AND AUTOMATION”

National Bureau of Economic Research”Workplace Adoption of Generative AI”

DIGIDAY MEDIA “AI skills gap widens: Employers embrace AI, but employees left behind”

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AIを活用することで得られるメリット

50代の方がAIを積極的に活用するとどんなメリットがあるのでしょうか。各種調査から、その具体的な恩恵を見てみます。

作業の効率化

実際にAIを味方につけて成果を出した50代の例も出てきています。キラメックス株式会社が公開した情報によると、50代のビジネスパーソンがオンライン講座でリスキリングし、自社の総務部門向けにAIを活用したアプリケーションを開発したところ、月次処理にかかる時間を87.5%も削減できたそうです​。

この事例では手作業の定型業務をAIと自動化ツールでほぼ置き換え、大幅な効率化に成功しています。

このように、正しく学んで活用すれば「自分には無理」と思えることでも実現できる可能性がありますし、それが会社への貢献や自身の評価向上にも直結します。

仕事の質、精度の向上に寄与

仕事の質や精度向上も大きなメリットです。グローバル非営利団体Generationの調査によれば、45歳以上の労働者でAIツールを使っている人はまだ15%に過ぎませんが、その少数の利用者たちは生産性向上だけでなく、仕事の質や成果物のクオリティ向上を実現しています。

また仕事への満足度アップなど「目に見える恩恵」を享受しているといいます。

例えば、

  • AIに文章の下書きをさせて人間が仕上げることで文章の構成が論理的になる
  • データ分析AIの力を借りてより精緻な意思決定ができる

などアウトプットの質が高まり、結果として顧客満足や自己満足感も高まるケースがあるのです。

さらに、キャリアの延伸や新たな機会創出も見逃せません。AIスキルを身につけ活用できる50代は、長年の経験+最新テクノロジーという希少な強みを発揮できます。

今後のキャリアへの好影響

人材サービス大手アデコの調査では、「これまでにリスキリング(学び直し)に取り組んだことがある」会社員の約80%が、その結果仕事やキャリアに良い影響があったと答えたとのことです​。

また85.1%の社員が今後働いていく上でリスキリングが必要と考えているとも報告されています​。

AI活用に限らず新しいスキル習得はメリットが大きいという裏付けであり、AIはその有力な選択肢と言えるでしょう。

参考:

キラメックス株式会社:50代のビジネスパーソンがリスキリング、オリジナルのアプリ開発で総務部門の定期タスクにかかる時間を87.5%削減

Generation”Age-Proofing AI: Enabling an intergenerational workforce to benefit from AI”

アデコ株式会社「会社員1,600人を対象にしたリスキリングに関する調査:リスキリングに取り組んだ会社員の8割が仕事に良い影響があったと回答会社員の約6割が現在の仕事で生成AIをまったく使っていないと回答」

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50代以降でも簡単に始められるAI活用方法

「とはいえ具体的に何をすればいいのか…」と戸惑う方もいるかもしれません。ここでは50代からでも無理なく始められるAI活用の方法をいくつか紹介します。難しい専門知識やプログラミングは必ずしも必要ありません。ポイントは楽しみながら日常や仕事に少しずつ取り入れてみることです。

身近なAIサービスを試してみる

まずは手元のスマホやPCで使える身近なAIから始めましょう。例えば、スマートフォンの音声アシスタント(SiriやGoogleアシスタント)に話しかけて予定を聞いたり、天気を尋ねたりするだけでも立派なAI活用です。

最近話題のChatGPTのような対話型AIも、ウェブサイトにアクセスして「無料ユーザー登録」すればすぐに使えます。試しに「会議の議事録の要点を箇条書きでまとめて」といった質問を投げてみると、驚くほど自然な文章を返してくれるでしょう。まずは好奇心を持って一度触れてみることが大切です。

日常業務のちょっとした作業に使う

次に、自分の仕事の中で「この業務にAIを使えそうかも」と思う場面を探してみましょう。

例えば、文章作成や翻訳です。メールや企画書の文章を考える際にChatGPTに下書きを作ってもらい、自分で加筆修正すると格段に楽になります。

また、表計算ソフトの関数やグラフ作成で困ったときにAIに聞いてみるのも手です。

最初は簡単な補助的利用で構いません。例えば会議資料の要点まとめや、翻訳チェック、アイデア出しのブレインストーミング相手としてAIを使ってみると、「お、便利かも!」と実感できるはずです。

無料のオンライン講座や教材を活用する

AIの基礎を学べる入門講座も数多く公開されています。YouTube上の解説動画や、企業・大学が提供する無料のeラーニングなど、初歩から丁寧に教えてくれる資源を活用しましょう。

特にChatGPTの使い方ガイドや実例紹介の記事・書籍も増えています(「50代からはじめるChatGPT入門」のような書籍も市販されています)。独学が不安な場合は、有料でも社会人向けのオンラインスクールを受講するのも効果的です。先述の総務部門の例のように、短期間の講座受講で劇的な成果を出した50代もいます​。

身近な人と情報交換してみる

 同年代でAIに詳しい人や、逆に若手社員から教わるのも良い方法です。社内でDX推進を担当している部署や、ITに明るい同僚がいれば話を聞いてみましょう。

「最近ChatGPTって使ってみた?どう?」と話題を振るだけでも、新しい発見があるかもしれません。あるいは社外のコミュニティに参加するのも刺激になります。

シニア向けのスクールや、地域のIT講習会などで同世代の仲間と学べば安心です。人と一緒に学ぶことでモチベーションも上がりやすくなります。

小さなプロジェクトにチャレンジする

ある程度AIに慣れてきたら、自分なりのミニプロジェクトを設定してみましょう。例えば「部門内の業務マニュアルをAIで要約して検索しやすくする」や「営業メールの文例集をAIで作って共有してみる」など、身の回りの課題をAIで解決するプチプロジェクトです。

最初はうまくいかなくても、試行錯誤する中で「ここはAIが得意なんだ」「こう指示すればいいのか」と理解が深まります。実践を通じて得た知見は貴重で、それ自体が仕事の成果にもつながります。

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まとめ

50代以降のキャリアはまだまだこれからです。変化の激しい時代だからこそ、AIという新しい武器を利用し、シニアの可能性を大いに伸ばしていきましょう。

今回紹介したような方法で、50代からでも十分にAI活用の第一歩を踏み出すことができます。職場でも徐々にAI活用が当たり前になりつつあります。ぜひ食わず嫌いをせず、まずはできることからトライしてみてください。

 

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