人生100年時代といわれる現代、50代はまさに人生の後半戦に向けた重要なターニングポイントです。
長年勤めた会社でのキャリアや、従来の「定年=リタイア」という概念が変化する中で、「セカンドキャリア」をどのように築いていくかは、多くの50代が直面する課題です。
しかし、「今から新しい仕事が見つかるのか」「50代からどんな選択肢があるのか」「若い世代に混じってやっていけるのか」といった不安を感じる方も少なくありません。
この記事では50代以降の「セカンドキャリア」に焦点を当て、年代を取り巻く現状をデータから紐解き、セカンドキャリアにおける選択肢、自分らしい働き方を実現するための具体的なノウハウを詳しく解説します。
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50代を取り巻くセカンドキャリアのリアルな悩み

人生100年時代が現実のものとなる中で、働く人のキャリアに対する考え方も大きく変化しています。
特に50代は役職定年や定年後の働き方を具体的に意識し始める年代であり、セカンドキャリアへの関心が高まっています。
50代以降の就業状況について、総務省統計局の労働力調査2024年平均結果の概要から見てみましょう。
まず50代後半(55~59歳)の就業率は全体(男女計)で83.4%に達しています。続いて60代前半(60~64歳)でも全体(男女計)の就業率は74.3%と高い水準を維持しており、多くの方が年齢を重ねても働き続けていることがうかがえます。

一方、企業側の受け入れ体制も進んでいます。厚生労働省が発表した「令和5年高齢者雇用状況等報告」によれば、従業員21人以上の企業の約99.5%が、65歳までの雇用確保措置(定年制の廃止、定年の引き上げ、継続雇用制度の導入)を実施済みです。
このように「定年退職=リタイア」といった常識はすでになくなりつつあり、50代以降も20年、30年と、どう働き続けるべきかといったことを考えなければいけません。
「定年退職後の悠々自適な生活」は昔の話?定年後も働き続けたい理由とは
では、なぜ多くの人は50代、60代以降も働くことを望むのでしょうか。内閣府の「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査(令和元年)」を見ると、日本の60歳以上の就業者の働く理由として、「収入がほしいから」が最も多く(67.1%)、経済的な側面が大きいことがわかります。
しかし、ここで注目すべきは年齢が上がるにつれて「友人や仲間の獲得」や「健康維持・老化防止」を理由に挙げる人の割合が増加している点です。
たとえば、「働くのは体によいから、老化を防ぐから」と答えた人は、60〜64歳では12.6%だったのに対し、75〜79歳では34.5%と大幅に上昇しています。
同様に「仕事を通じて友人や仲間を得ることができるから」という理由も、60〜64歳の6.3%から、75〜79歳では15.5%と高くなっています。
セカンドキャリアの悩み
一方で、セカンドキャリアを考える50代が抱えるリアルな悩みや不安も少なくありません。
Indeedの調査によれば、50代〜70代の92.7%が働くことに対して何らかの不安を抱えており、特に「健康状態の維持」(59.6%)や「十分な収入が得られるか」(25.9%)といった点が上位に挙げられています。
セカンドキャリアを成功させるためには、こうした現状を正確に理解し、自身の状況と照らし合わせながら、準備を進めることが不可欠です。
参考元:
総務省統計局「労働力調査(詳細集計)2024年(令和6年)平均結果」
令和5年「『高年齢者雇用状況等報告』の集計結果を公表します」
内閣府「第9回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」
Indeed「『シニア世代の就業』に関する意識調査を実施」
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セカンドキャリアの具体的な選択肢とは

50代からのセカンドキャリアを実現する方法は一つではありません。これまでの経験やスキル、自身の価値観、そして経済状況や体力などを考慮し、どのような形で社会と関わっていくかを検討することが重要です。
ここでは、50代から検討できる選択肢をご紹介します。
転職
セカンドキャリアにおいて、最も多く検討される選択肢は転職でしょう。
もし50代から「転職」という選択肢を考えているのであれば、50代前半と後半、さらには60代以降では、採用される確率が大きく変わってくるという現実を知っておくことが重要です。
一般的に、50代前半はこれまでの経験・スキルを評価され採用される確率が高い年齢といえます。
給与水準も比較的維持しやすいケースがあり、キャリアアップや異業種へのチャレンジの可能性もゼロではありません。
しかし、50代後半は役職定年などがあり、ポストオフになる方も少なくありません。ポストオフになる前となった後では転職の成功確率が変わってきます。
このため、もしあなたが転職を考えているのであれば、自身の市場価値が維持されている50代前半のうちに、転職活動を開始することをおすすめします。
50代後半や60代以降でも転職は可能ですが、選択肢の幅や条件面で厳しくなるということを念頭に置いておきましょう。
これまでの経験を活かし独立する
会社に雇用されるのではなく、豊富な実務経験を活かし、個人事業主として企業から業務を請け負う働き方も、50代以降は実現可能です。
特に独立する際の職種に多いのが、コンサルタントや講師業です。自分で顧客開拓をする必要がありますが、時間や場所、そして年齢に縛られることなく自由な働き方を実現できます。
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事業を立ち上げて起業する
これまでの長いご経験を活かして、ご自身で事業を始めるという選択肢もあります。例えば、培ってきた知識や人脈を使い、コンサルティング業を始めたり、小規模のお店を開業したり、フランチャイズに加盟したりするなど、さまざまな選択肢が考えられます。
事業が軌道に乗り、人を採用してさらに拡大すれば個人事業主よりも大きな規模の収益が期待できるでしょう。
副業から始める
副業は現在の仕事を続けながら、並行して別の仕事から収入を得る方法ですが、独立までの準備期間として始めてみるのもよいでしょう。
特に将来的に独立、起業を検討している方は、まずは副業から始め、軌道に乗り始めてきたタイミングで副業を本業として取り組むといった方法もあります。
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ボランティア・プロボノをはじめてみる
ボランティア・プロボノは現在の職場で副業が難しいという方にとっても、社会との接点を持ち続けるためのおすすめの選択肢となります。
これらの活動は、社会貢献につながるだけでなく、社外で新たな人脈を築く上で非常に重要です。普段の業務では出会えない多様なバックグラウンドを持つ人々と協働することで、視野が広がり、新たな価値観に触れることができます。
さらに、社外でどのようなスキルや経験が求められているのかを具体的に知る貴重な機会にもなります。自身の強みが外部でどう活かせるか、ヒントを得られるでしょう。
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セカンドキャリアを充実させるための行動とは?

50代からのセカンドキャリアを充実させるためには、ただ漠然と考えるだけでなく、行動に移すことが重要です。
スキルの棚卸し、自己分析を行う
セカンドキャリアを考える上で、最も重要かつ基本的なステップは、スキルの棚卸しと自己分析です。これまでのキャリアの中で何を経験し、何を学び、何に価値を感じてきたのか、そしてこれから先の人生で何を大切にしたいのかを深く掘り下げて考えます。
おすすめの方法は職務経歴書を作成してみることです。職務経歴書は転職活動や業務委託先と面接、面談をする際にも利用できます。
また、自己分析は一人で行うのが難しい場合もあります。家族や信頼できる友人に協力してもらったり、専門のキャリアコンサルタントの支援を受けたりするのも有効です。
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社外の人と積極的に会い続ける
これまでの会社中心の生活から一歩踏み出し、社外の人と積極的に交流を持つことは、50代以降のキャリアを考える上で非常に有益です。
多様な業界や異なる世代の人々と接する中で、自分では当たり前だと思っていた経験やスキルが、社外では高く評価されたり、意外なニーズにつながったりすることに気づかされるかもしれません。
これは、自身の新たな強みを発見し、自信を深めるきっかけとなるでしょう。
実際に企業に応募したり、副業・複業を始めて世界を広げる
セカンドキャリアを具体的に考える上で、実際に企業に応募してみたり、副業や複業を始めてみたりすることは、有効な手段です。ただ頭の中で検討するだけでなく、行動することで見えてくる世界があります。
例えば、企業の採用面接を受けてみるだけでも、大きな収穫があります。採用担当者と直接話すことで、自身の経験やスキルが社会でどのように評価され、役立てられるのか、具体的なイメージを持つことができるでしょう。
また、他の会社がどのような働き方をしていて、どのような企業文化を持っているのか、社内にいるだけでは知り得ない情報を得る貴重な機会にもなります。
一方、副業や複業は、リスクを抑えながら新しい分野に挑戦したり、異なる環境で自分の力を試したりするのに最適です。本業以外の経験は、視野を広げ、新たなスキルや人脈の獲得にもつながります。
こうした実践的な活動を通じて、自身の市場価値を客観的に把握し、本当にやりたいこと、貢献できることを見極めていくことが、納得のいくセカンドキャリアの実現につながるでしょう。
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【事例紹介】弊社が取材した50代からのセカンドキャリア事例

以下では50代以降のセカンドキャリアにおいて、新しい挑戦をされた方の事例を紹介します。
早期退職後の挑戦。59歳で独立し、120社との契約を実現
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「やりたい仕事に集中できる」という喜びを胸に、コンサルティング会社を設立しました。会社員時代の人脈を活かしつつ、専門外の課題にも真摯に取り組み、常に学び続ける姿勢でクライアントに深く伴走。「利益より自分らしさを大切に、自分を信じる勇気を持って」と語る軽部さんの姿は、新たな一歩を考える多くの人に示唆を与えてくれます。
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57歳の転機を力に。60代で社労士・FPとして「自分らしいペース」を掴んだ新條さんの選択
JTB、外資系生命保険会社で営業管理職や人事管理職として30年以上のキャリアを積んだ新條千佳子さん。57歳でのリストラ、その後の転職支援コンサルタント業務を経て、60代で社会保険労務士・FPとして独立。
息子の事業を手伝ったことをきっかけに、「自分が満足できるか」を大切にできる現在の道を選びました。豊富な経験と資格を武器に、顧客に寄り添った質の高いサービスを自身のペースで提供。「シニア世代は経験や人脈があり、起業リスクは若い世代より低い。興味があるなら挑戦を」と、セカンドキャリアを考える人々にエールを送ります。
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セカンドキャリアで挑む地域再生。戸沢村での「現場第一」奮闘記
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「単なるアドバイザーではなく、現場目線で共に汗を流すプレイヤーであることが重要」と語り、ふるさと納税の拡大や事業者支援に奔走。過去の肩書きにこだわらず、地域住民と真摯に向き合い課題解決に取り組む勢古口さんの姿は、シニアが地域で新たな価値を生み出す可能性を示しています。
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まとめ
セカンドキャリアにおいて、年齢に伴う不安や、新しい環境への適応といった壁が存在するのも事実です。
しかし、これまでの長いキャリアで培った豊富な経験、専門知識、そして人間的な深みは、50代だからこそ持つことのできる強力な財産です。
自己分析を通じて自身の「軸」を定め、多様な情報収集を通じて「選択肢」を知り、必要であればリスキリングで「スキル」を磨き、自身の強みを活かして積極的に「行動」することで、これらの壁を乗り越えることは十分に可能です。
何よりも大切なのは、「まだ終わらない」「もっとこうなりたい」という前向きな気持ちと、新しいことへの好奇心、そして変化を楽しむ心構えです。
不安を希望に変え、あなたらしい輝かしいセカンドキャリアを築いていくための一歩を、今ここから踏み出しましょう。