体験談|再雇用後は給与が半分以下に「定年前から準備した方がよい」

定年が近くなると再雇用について考え、不安を感じる方も多いでしょう。再雇用は安定収入が得られる反面、給与の減少や社内での立場や役割の大きな変化があります。

「辞めたい」「屈辱的だ」といったシニアの方たちの声をメディアで耳にすることもありますが、実際はどうなのでしょうか。

今回は60歳で定年を迎えて再雇用を選んだBさんにお話を伺いました。Bさんは「少なくとも、定年前の2〜3年前からキャリアプランを考えて準備しておいたほうがよい」と言います。

Bさんの再雇用前後の率直な心境や収入面の変化、再雇用を迎える方に向けたアドバイスなど、赤裸々に語っていただきました。

Bさんのプロフィール:
大手育児用品の会社で27年間勤務し、主にロジスティクス部門の責任者に従事。定年前には転職活動にも取り組んだが、年齢がネックとなり定年後は再雇用を選択。再雇用では開発部門の部署へ異動になり、これまで経験のない業務を担当している。給与の減少や立場の変化などの環境の変化に対応しながらも、現在は再雇用終了後の働き方を見据えて副業にも取り組んでいる。

定年前に転職活動をするも「9割方断られた」

―まずはご経歴を簡単にお願いします

私は育児用品の会社に27年勤務し、昨年9月に60歳となり定年を迎えました。約20年間は物流関連の業務に従事し、最終的にはロジスティクス部門の責任者として活動しました。また、本社の管理部門の業務(総務、法務、広報、内部監査など)にも一部関わりました。

定年退職後は再雇用となり、翌年の2月より未経験の開発部門に異動となり、総務業務を中心に、これまで経験のない分野の業務を担当しています。

―再雇用前には転職も検討していましたか?

本格的に転職活動に取り組んでいたわけではありませんが、定年の2〜3年前から転職サイトに登録し、いくつかの求人に応募していました。自分のこれまでの経験やスキルが、他社でも通用するかどうか単純に興味があったからです。

―ちなみに、どの転職サイトを利用していたのでしょうか?

具体的にはリクルートやビズリーチ、エン・ジャパンなどが運営する転職サイトを利用していました。

法律上、求人に年齢制限を設けることはできないのですが、実際に募集要項を見ると、若手や中堅の方向けに募集しているのだろうな、と感じる求人はありました。ひとまず「この業務ならできそうだ」と感じた業種には片っ端から応募してみましたが、9割方は断られてしまいました。

50件以上応募して、書類審査に通過できたのは10件くらい。でも途中で年齢の話が持ち上がり、難航することが多かったですね。当然ながら、年齢を理由に明確に断られたわけではありませんが、どの企業も同じで「募集要件に合わない」という返答でした。

転職活動の間も会社に再雇用の希望は出していたので、結果的に再雇用の道を選ぶことになりました。

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再雇用前後の率直な心境は「肩の荷が下りた」

―再雇用前後は、どのような心境でしたか?

私の場合は、役職の責任や権限がなくなったため「肩の荷が下りた」というのが正直な心境でしたね。「残念だな」というネガティブな感情はあまりなかった気がします。

再雇用で働く方は社内に結構いましたので、再雇用後の働き方や心境のイメージはなんとなくできていましたから。

再雇用後、希望とは異なる部門への異動

―再雇用後は希望していた部署に配属されましたか?

いえ、希望とは異なる部門に配属されました。

長年ロジスティクス部門で働いていたので、再雇用後は経験が活かせる経営企画部門に異動する話が定年前から出ており、私もよい機会だと思っていました。

ところが、会社の事情でその話が流れてしまったのです。

そのため再雇用後の約4か月間は同じ部署で働き、同僚のサポート役を務めていました。仕事内容は理解していたので、質問には何でも答えて、適宜フォローするというスタンスで部員には対応していました。

ただ、上司だった私が「部下」として働くことになり、指示を出したり何か依頼したりするときはやりにくいだろうなと感じましたね。

その状況をふまえて、別の部署へ異動したいことを人事部に伝え、開発部門に異動となりました。

―経験のない部門へ異動になり、戸惑いはありませんでしたか?

正直、定年前に聞いていた経営企画部門への異動がなくなり、未経験の部門へ異動となったことには戸惑いがありましたね。

とはいえ、現在の配属先ではこれまで培った経験が役に立ち、業務は問題なくこなせています。

ただ、再雇用期間が満了した65歳以降は、できれば物流の経験や知識を活かしたいと考えています。今やっている業務と将来目指したい業務にはギャップがあるので、その差をどう埋めていくのかが今後の課題ですね。

再雇用の労働条件はさほど変わらず、収入は半分以下に

―再雇用後、労働条件や給与などは、どのような変化がありましたか?

再雇用後の大きな変化としては、給与形態は月給制で業績給がなくなり、年収も半分以下になってしまいましたね。

予測はしていましたが、実際目の当たりにすると「こんなもんなのか…」と思いました。

―ちなみに、ほかの再雇用を迎えた方の様子はどうでしたか?

私と同時期に再雇用になった数名の方は、再雇用前と仕事内容や労働環境は変わらず、給与だけ減額という状況で働いています。やはり気の毒に思います。

その点、私の場合は役職の権限や責任がなくなったのと同時に給料も減ったため、割と給与の減額による変化は受け入れやすかったのかもしれません。

再雇用後に不満や後悔などネガティブな気持ちになるかどうかは、役職の有無などの立場や仕事内容によって変わってくるのではないかと思います。

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再雇用後の私生活の影響は「子どもの年齢」で負担が大きく変わる

―収入が半分に減額したとのことですが、生活パターンも変わったのでしょうか?

私の家族は妻と子どもが2人、ペットの犬がいます。幸いにも子どもは就職しているため、生活に困るような状況ではありません。

今は妻と街道歩きや長年の趣味だった模型作りに時間を割いて楽しんでおり、それで十分満足しています。

ただ、定年後の翌年である今年に関しては、去年の収入ベースで算出された税金が発生するので、経済的な負担が大きいかもしれないと感じています。

―もし子どもが学生で再雇用を迎えていたら経済的に厳しくなるのでしょうか?

そうですね、子どもがまだ学生で定年を迎える場合、経済的な負担は大きくなると思います。

実際、2人の子どもが大学に通っていた時期は、経済的な負担が非常に大きかったですね。子どもが独立した後は、百万円単位で発生していた出費も減りました。

同僚には子どもが小学生で定年を迎える方もいますが、これから経済的に大変だろうなと感じています。

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再雇用の社員は邪魔者扱いされる?考え方次第で重宝される存在にも

―よく再雇用で「やる気が出ない」「やめたい」などの声もメディアで見かけますが、つらいことはありましたか?

幸い、再雇用後にやる気がなくなることや辞めたいと悩むことはありませんでした。再雇用後の仕事内容や働くイメージはある程度予測できていましたから。

逆に、部門全体を見ていた役職での経験を活かしています。たとえば、業務上「あると便利なデータ」を作成すれば、周りからは「そこまでやってくれるのですか!」と感謝されて、重宝されることもあります。

今の職場には若い方が多く、一生懸命がんばっている様子を見ると、自然に協力したくなるのです。若手の社員が困っていたら「こうすればよいのではないか」と提案すると、それを受け入れてくれることもあります。

ただ、一般的には再雇用後、やる気がなくなる方もいるかもしれません。その方の経歴や考え方による影響もあるのではないかと思います。

―Bさんは再雇用後の立場の変化にも比較的適応されていたのですね

そうですね。上下関係が厳格な職場ではなかったため、再雇用後も急に周りの態度が変わることはありませんでした。

ただ、管理職ではなくなったため、業務上何かを判断しなければならないとき、どう行動すべきか私には何となくわかっていても、あえて元部下に「言わない」「伝えない」という選択をしたり、割り切って自分を納得させたりする瞬間が増えました。

そういう場面で「もどかしさ」を感じることはありますね。

―ほかの再雇用の方は、周囲との関係で苦労される方も多いのでしょうか?

ほかの再雇用の方を見ていると、周りから少し煙たがられているケースも見聞きしました。

やはり「うざいな…」などと部下から思われてしまうと、コミュニケーションが取りづらい場面もあるのかもしれないと見ていて感じました。

再雇用後のキャリア構築に向けての準備は「副業の求人マッチングサイト」への登録

―再雇用期間は65歳までとのことですが、それ以降のキャリアは考えていますか?
65歳の再雇用期間後も、可能な限り仕事は続けていきたいと考えています。

経験を活かして、在庫管理や購買調達、需給調整など物流関連の管理業務や、新しいシステムを導入して在庫管理を効率化する仕事にも興味があります。

実際に副業の求人マッチングサイトやインターネットで探すと、地方の中小企業には、こうした在庫管理のサポートを必要としている副業案件がありますね。

―ちなみに、どの求人マッチングサイトを利用して探しているのでしょうか?

HiPro Direct (ハイプロダイレクト)」や「サンカク」などの副業人材の求人マッチングサイトを利用して、副業の案件を探しています。案件には、月に3~5万円程度の収入、月10時間程度の副業案件などがありました。

私自身も地方出身で、地方の中小企業をサポートする仕事に興味があるので、そのような副業案件があればいいなと思っています。

―求人マッチングサイトの案件には、応募したり案件に取り組んだりされているのでしょうか?
案件には数件応募しています。最近1件面談したのですが、その企業の担当者さんから「実は、募集に64件以上も応募がきて困っているんです」と聞きました。そのため、あまり期待せずに結果を待っていたら、やはり不採用でしたね。

私の場合、直接の人脈で副業の案件を探すのは難しいと感じているので、インターネットやマッチングサイトをメインに探していこうと思っています。

―再雇用が終了した後、希望している働き方や挑戦したいことはありますか?

再雇用が終了した65歳以降も働き続けられるような企業や仕事に出会えればベストかなと考えています。そのため、今は準備期間として副業案件を探しています。

また、電気の技術系の資格を取得すれば設備管理の仕事に役立ちそうと思ったので、そのような資格取得にも今後チャレンジしてみたいという気持ちはあります。

再雇用が終了した後も社会とは積極的に繋がって、いろいろな方とコミュニケーションを取りながら過ごしていきたいですね。

―独立・起業という選択は考えていますか?

今のところ、会社を立ち上げて独立・起業することは大きなリスクや難易度が高いと感じており、考えていません。

というのも、私の知人で数十年前、一般企業から独立してファイナンシャルプランナーや会計コンサルティングの仕事をしている方がいたのですが、集客には苦戦しているようでした。その仕事だけでは生活できず、夜勤の仕事を掛け持ちしていましたね。

もちろん人によるとは思いますが、独立は大変なのだろうなと感じています。

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再雇用を検討中の方へ。「定年2~3年前から準備を。副業経験はおすすめ」

―最後に、再雇用を検討している方や、再雇用を選択しようとしている方へのアドバイスをお願いします

少なくとも定年の2~3年前にはキャリアプランを考えて、準備を始めておくのがよいと思います。なるべく早めに副業にチャレンジしておくことは、定年後のキャリア選択や自己評価の面でもプラスになるはずです。

私の場合はそこまで準備せずに再雇用になり、今の状況で満足しています。ただ、今取り組んでいる副業の案件探しや応募などを5年前くらいからやっておけば、より選択肢が広がったかもしれないな…と感じていますね。

副業はうまくいけばよい経験になりますし、うまくいかなくても学びになると思います。

会社を辞めていきなり独立するのは非常にリスクが高いと思いますが、副業はリスクが低くて都合がいい。今までの会社内での経験やスキルが、社外でも通用するかどうかを確認できるメリットもあります。

そのうえで、再雇用のほうが自分にとって待遇面がよいのか、人間関係を含めて働きやすいのか、新しい環境でやり直したほうがやりがいを感じられるのか。そのあたりを、定年前から天秤にかけて自分なりに判断することは大切だと思います。

定年が近づいたら、副業を検討したりチャレンジしたりしてみることを私はおすすめします。

まとめ

今回は、大手育児用品会社で再雇用として働くBさんのエピソードについて紹介しました。

Bさんの事例からもわかるように、再雇用後は収入面や立場の変化など、適応すべき点は少なくありません。再雇用を検討する際は、これらの変化を想定し、早めの準備と柔軟な姿勢が求められるでしょう。

また以下では再雇用時にどのようなキャリアを作るべきかについてまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。

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また、再雇用ではなく、独立・起業に挑戦したいとお考えの方は以下の独立支援アカデミーのご利用も検討してみてはいかがでしょうか。これまで培った実務経験をもとに独立の一歩を踏み出してみましょう。