相続税対策とは、相続税の負担を軽減し、大切な財産をスムーズに次の世代へ引き継ぐための生前からの取り組みのことをいいます。
不動産や預貯金、有価証券を多く保有している人は、相続税を減らすために早めに対策を行うことが大切です。
この記事では、生前贈与・不動産活用・生命保険・法人化など、効果的な相続税対策を徹底解説します。失敗を防ぐためのポイントも合わせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

伊藤FP事務所代表。ファイナンシャルプランナー(AFP)兼ライター。大学卒業後、証券会社・保険コンサルタントを経て事務所代表兼フリーライターとして活動を始める。家計の見直しから税金・保険・資産運用まで、人生の役に立つ記事を幅広く執筆。
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相続税対策とは?まずは基本を理解しよう

相続税対策とは、大切な財産を無理なく次の世代に受け渡し、相続税の負担をできるだけ軽くするために、生きているうちから準備しておくことをいいます。
相続税は、基礎控除額(「3,000万円+600万円×法定相続人の数」)を超える財産に課税されます。
相続税対策を怠って基礎控除額を大幅に超えてしまうと、相続税が高額になり、相続できる資産が大きく目減りしてしまうリスクがあります。
また、納税のために不動産などの資産を売却しなければならないこともあるため、生前からの対策が必要です。
相続税対策としては、生前贈与や生命保険の活用、小規模宅地等の特例の検討など、さまざまな方法があります。
相続税対策を行う場合は、まずは現状を把握することが大切です。相続財産と法定相続人を確認しておおまかな相続税額を試算してみると良いでしょう。
相続税における基礎控除と課税対象とは
相続税を計算する際は、「基礎控除」と「課税対象」を理解しておくことが大切です。
基礎控除とは、相続税が課税される前に差し引かれる非課税枠のことで、計算式は
- 「3,000万円+600万円×法定相続人の数」
です。
例えば、法定相続人が妻・子供の2人の場合、基礎控除額は4,200万円となります。
相続税の課税対象となる主な財産は、以下のとおりです。
相続税の課税対象資産の分類 | 資産の例 |
不動産 | 土地・建物(自宅・別荘・賃貸物件など) |
金融資産 | 預貯金・株式・投資信託・債券・暗号資産など |
動産 | 自動車・美術品・宝石・貴金属など |
事業用資産 | 店舗・設備・機械・売掛金など |
権利関係 | 借地権・特許権・著作権・ゴルフ会員権など |
生命保険金 | 被相続人が契約者・被保険者である保険契約に基づく死亡保険金(一部非課税枠あり) |
退職金 | 死亡退職金(一部非課税枠あり) |
相続財産の総額が基礎控除額を越えている場合は、相続税が発生します。
相続税対策を検討する際は、まず自身の財産状況を整理して課税対象資産額を明確にし、相続税が発生するかどうかを確認しましょう。
相続税対策はいつから始めるべき?
多くの人が、身内の体調が悪化するなど、相続が視野に入ってから対策を考え始めますが、そのタイミングでは選択肢が限られてしまい、効果的な相続税対策をするには遅すぎる場合があります。
きちんとした手順で相続税を減らすためには、早い段階から計画的に準備することが大切です。
例えば、生前贈与を活用する場合、年間110万円までの贈与は非課税となりますが、これを早い段階から継続することで、大きな節税効果を得ることができます。
また、生命保険に加入して一定額を非課税で相続できるようにしたり、不動産の評価引き下げのための方策を行うことも、早期に取り組むことで効果が高まります。
特に、生命保険は健康でないと加入できないケースが多いため、相続が近づいた段階での対策が難しい場合があります。
さらに、遺言書の作成や家族信託の活用など、法的な手続きを含む対策も、時間をかけて話し合いながら準備することで、家族トラブルも防げます。
効果的な相続税対策を行うには、将来の相続に備えて早めに専門家と相談し、自分自身の資産や状況に合った最適なプランを立てることが重要です。
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相続税対策の代表的な4つの方法

相続税の負担を軽減し、円滑な相続を実現するための対策方法は大きく分けて4つあります。
これらの対策は、個別に実行するだけでなく、複数組み合わせることでより効果的な節税が可能になります。
ここでは、相続税対策の主な方法について詳しく解説します。
贈与や消費で財産を減らす方法
生前贈与は、比較的取り組みやすく、相続税対策としても有効な方法のひとつです。
年間110万円以内の贈与は非課税のため、数年にわたり贈与を行うことで、相続時の課税対象財産を大幅に減らすことができます。
また、教育資金や結婚資金の一括贈与など、贈与の非課税枠が拡大される制度も活用できます。
さらに、生活費や旅行、医療費などを生前に使う「消費」によっても財産は減ります。
これらの方法は早期から始めるほど効果が高まり、相続税の軽減と家族への資産移転を両立させることが可能になります。
不動産活用などで財産の相続税評価額を下げる方法
不動産の相続税評価額は、実勢価格よりも低くなることが多く、節税効果が期待できます。
たとえば、不動産に賃貸用住宅を建てて「賃貸用不動産」として活用すると「貸家建付地」としての評価が適用され、土地と建物の評価額が下がります。
さらに、相続によって取得した被相続人の自宅や事業用地の評価額を大幅に減額できる「小規模宅地等の特例」を利用できれば、最大80%の減額が可能です。
このように、不動産は評価方法次第で節税効果が大きいため、相続税対策として非常に有効です。
ただし、適用条件や手続きが複雑な場合もあるため、不動産の相続税対策は、税理士など専門家と相談しながら進めることが大切です。
保険などの活用で納税資金を確保する対策
生命保険の死亡保険金は、法定相続人1人あたり500万円まで非課税で受け取ることができます。この非課税枠を活用することで、より多くの資産を非課税で相続することが可能です。
また、死亡保険金は請求後、数日で振り込まれます。相続発生時にスムーズに現金を用意することが可能なため、葬儀資金などにも活用できます。
また、主な相続財産が不動産で納税のための現金がない場合は、死亡保険金を納税資金に充てることができるため、不動産を売却する必要がなくなるというメリットもあります。
財産の共有や法人化などで財産を分散する方法
財産を共有名義にしたり、法人化することで、相続税の課税評価額を下げたり、分散させることが可能です。
例えば、6,000万円の土地を兄弟3人で相続するケースを考えてみましょう。
不動産を複数の相続人で共有すれば、個々の評価額が分割され、相続税も軽減されます。
相続税は累進課税制度が適用されるため、一人で6,000万円相当の土地を相続すると高い税率がかかります。
しかし、3人で共有すれば、それぞれの相続額が2,000万円と低くなって税率が下がり、その結果相続税も軽減されます。
また、法人を設立して不動産を法人名義にすると、個人資産ではなく法人資産となるため、不動産が相続税の対象から外れます。
そして、その法人の株式を相続によって取得すると、「法人の株式の評価額」が相続財産となるため、不動産単体よりも低く評価されるケースもあります。
ただし、共有や法人化には管理や運営上の注意点もあるため、相続税対策として活用する際には、専門家に相談して計画的に進めることが大切です。
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生前贈与を活用した相続税対策

生前贈与は、相続税対策の基本的な手段のひとつです。被相続人が生きている間に財産を相続人へ移転することで、将来的な相続財産を減らすことができます。
ここでは、生前贈与を活用した相続税対策について、詳しく解説します。
暦年贈与する
暦年贈与とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間のあいだに贈与された金額が年間110万円以内であれば、贈与税が非課税となる制度です。
この非課税枠を活用し、数年にわたって計画的に財産を移転することで、相続財産を減らすことが可能です。
暦年贈与は最もシンプルな制度で広く利用されており、生前贈与の王道とも言える方法です。
メリットとデメリット
暦年贈与のメリットは、毎年の非課税枠を活用して相続財産を効率よく減らせる点です。特に数年にわたって贈与できる場合、合計で大きな節税が可能となります。また、特別な知識がなくても簡単にできるというメリットもあります。
一方、暦年贈与のデメリットとしては、場合によっては税務署に否認されることがあるという点です。
通帳や印鑑を親が管理している場合「名義預金」と見なされ、実質的に贈与されていないと税務署が判断することがあります。
また、毎年の定期的な贈与は「連年贈与」と見なされるケースがあります。
例えば、「毎年110万円ずつ10年間渡す」というように、事前に贈与総額や期間、贈与のタイミングを決めていた場合は、「初回に1,100万円を贈与した」と見なされ、高い税金を支払わなければならないケースがあるのです。
暦年贈与では、贈与のたびに簡易な贈与契約書を作成しておくと、贈与の証明として提出できるため、税務署の調査の際に役立ちます。
また、非課税のつもりで暦年贈与していた場合でも、2024年1月以降の贈与については、「死亡日から7年以内の贈与分は相続税の課税対象に加算される」という新ルールが適用されるため、暦年贈与を検討する際は、早めの対策が重要です。
相続開始前3年超~7年以内に行われた贈与については、該当期間中の贈与財産の合計額から一律100万円を控除した残額が相続財産に組み入れられます。
さらに、2023年末以前に行われた贈与は、新ルールの対象外となります。つまり、2023年12月31日以前の贈与は、従来通り「死亡日から3年以内」の贈与のみが相続税の課税対象であり、7年加算や経過措置(100万円の控除)は適用されないため注意が必要です。
相続時精算課税制度を活用する
相続時精算課税制度とは、贈与者が60歳以上の親または祖父母、受贈者が18歳以上の子または孫であれば、2,500万円までの贈与について贈与時に非課税とし、2,500万円を超えた分は、将来の相続時にまとめて課税・納税するという制度です。
大きな財産を早期に移転したい場合に適しており、相続税対策として不動産の贈与などに活用できます。
ただし、制度を選択すると、その年度以降の贈与はすべて「相続時精算課税制度」が適用され、暦年贈与に戻すことはできないため、長期的な視点での活用計画が重要です。
また、2024年1月以降の贈与から、相続時精算課税制度と年間110万円までの非課税枠が併用できるようになりました。この改正により、計画的な相続税対策を行いやすくなっています。
メリットとデメリット
相続時精算課税制度は、最大2,500万円まで非課税で贈与ができるため、大きな財産を早期に移転できる点がメリットです。
例えば、暦年贈与で2,500万円を贈与しようとすると、約23年かかります。しかし、相続時精算課税制度を利用すると、一度に2,500万円分の財産を贈与できることになります。
この制度は一括で大きな財産を贈与できるため、暦年贈与でこまめに贈与しにくい不動産や事業用資産など高額資産の移転に適しています。
また、相続財産の評価額は、この制度を利用して贈与した際の評価額が適用されます。相続後に株式や不動産が値上がりしていた場合でも、上昇分には課税されないというメリットがあります。
さらに、生前に多くの贈与ができるため、自分の希望通りに資産を渡すことができること、親族間の争いを防止できることもメリットといえます。
一方で、デメリットは、一度この制度を選ぶと暦年贈与に戻せないという点です。
また、贈与された金額の大小にかかわらず、税務署への申告義務があること、土地を贈与した場合は、小規模宅地等の特例を適用できなくなることもデメリットです。
相続時精算課税制度を利用するかどうかは、メリットとデメリットをしっかりと比較して決めるようにしましょう。
教育資金や結婚子育て資金の一括贈与特例を活用する
教育資金や結婚・子育て資金の贈与の非課税措置を活用することで、非課税でまとまった資産を相続することが可能です。
「教育資金の一括贈与の特例」では、30歳未満の人が、祖父母などの直系尊属から教育資金に充てるための贈与を受けた場合、最大1,500万円までの教育資金が非課税になります。
「結婚・子育て資金の一括贈与の特例」では、親や祖父母から、18歳以上50歳未満の子や孫へ、結婚や子育てに使うお金を、最大1,000万円まで(結婚に関する支払いは300万円まで)非課税で贈与できる仕組みです。
これらの制度では、若い世代への支援と相続財産の圧縮を、同時に実現できる点が大きな魅力です。
また、贈与の目的が明確であるため、税務署に認められやすいことも特徴となっています。
メリットとデメリット
この特例のメリットは、非課税枠が大きく、相続税対策と子や孫への支援が同時に行える点です。
一方で、これらの制度では、信託口座などを通じて資金を移し、必要経費に使用することが条件となります。
贈与では、信託口座が使われます。目的以外での贈与は認められず、お金の使い道に制限があるため、領収書を提出しないと、贈与として認められません。また、期限や年齢制限があることもデメリットといえます。
制度の内容をよく理解して、利用するかどうかを決めるようにしましょう。
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不動産を活用した相続税対策

不動産を活用した方法も、相続税対策として効果的です。
不動産の相続税評価額は、実勢価格よりも低く評価されることが多く、現金や預金よりも相続税の節税効果が高いとされています。
ここでは、不動産を活用した相続税対策について、詳しく解説します。
小規模宅地等の特例を活用する
「小規模宅地等の特例」とは、被相続人の居住用または事業用の宅地について、一定の条件を満たせば最大80%まで評価額を減額できる相続税の特例制度です。
この特例を活用することで、相続税の課税対象となる評価額を大幅に抑えることができるため、相続税の納税負担を減らすことができます。
メリットとデメリット
小規模宅地等の特例の最も大きなメリットは、宅地の相続税評価額を最大80%減額でき、相続税負担を抑えられることです。
相続税を少なくできるため、不動産の相続に伴う現金での納税負担を減らせます。
ただし、この特例の適用には「同居継続」や「事業継続」などの細かい要件が定められていることがデメリットです。
この特例を利用できるかどうか、事前に専門家に確認するようにしましょう。
更地ではなく貸家にして評価額を下げる
不動産の相続税対策として、貸家を建てて賃貸運用することで土地の相続税評価額を引き下げるという方法があります。
賃貸用建物がある土地は「貸家建付地」として、更地の場合よりも約20~30%低い金額で評価されるため、相続税の節税につながります。
さらに建物自体も「貸家」として評価減の対象になるため、不動産全体の評価額を抑えることができます。
更地での保有ではなく貸家を建てて運用することは、長期的な資産運用と節税を両立させる、効果的な相続税対策といえます。
メリットとデメリット
貸家を建てて土地の評価額を下げるメリットは、土地と建物の両方で相続税評価額を減らせるため、相続税の負担を抑えられる点です。
また、継続的に賃料収入が得られるため、効果的な資産運用の手段としても活用できます。
デメリットとしては、空室リスクがあることや修繕費・管理負担が発生すること、そして不動産市況によっては資産価値が下がる可能性があることが挙げられます。
貸家を運用することは相続税対策としての効果は高いものの、リスクもあるため、不動産経営を理解し、長期的な視野で「貸家を建てるかどうか」を決めるようにしましょう。
不動産を管理する法人を設立して節税する
相続税対策の一環として、不動産を法人名義で管理する方法もあります。
不動産を法人の所有にすることで、不動産の収益や資産の移転をコントロールしやすくなり、将来の相続に備えた節税対策が可能になります。
メリットとデメリット
不動産のために法人を活用する大きなメリットは、相続時における財産評価額を減らせることです。
不動産を個人で所有している場合は、相続時の不動産評価額は「路線価」や「固定資産税評価額」がベースになります。
一方で、法人が不動産を所有し、その株式を相続する形式を取ると、相続時の課税対象が「法人の株式」となるため、不動産よりも評価額を圧縮しやすく、かつ分散もしやすいというメリットがあります。
また、法人ならではの経費計上も可能になります。
一方、デメリットとしては、法人設立・運営のコストがかかること、法人税の納税義務が発生する点です。
法人の設立には一定の手間もかかり、法人を運営する責任も発生しますので、相続税の節税効果とコストなどの負担を慎重に比較して決めるようにしましょう。
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生命保険を使った相続税対策

生命保険は、相続税対策として非常に有効な手段のひとつです。
保険金には特定の非課税枠が設けられているため、生命保険を活用することで、より多くの財産を非課税で相続できるなどのメリットがあります。
ここでは、生命保険を使った相続税対策について、詳しく解説します。
生命保険の非課税枠を活用する
相続税対策として、生命保険の「非課税枠」を活用するという方法があります。
死亡保険金は「500万円 × 法定相続人の数」で計算された非課税枠を利用できるため、より多くの財産を非課税で相続できます。
例えば相続人が3人であれば基礎控除額に非課税枠の1,500万円を上乗せできるため、大きな節税効果が期待できます。
メリットとデメリット
生命保険の非課税枠を活用することで、相続税を大きく節税できること、比較的すみやかに現金を受け取れることがメリットです。例えば、喪主を受取人とすることで、葬儀費用などの支出に保険金を充てられます。
また、保険金は遺産分割協議の対象外です。遺産分割協議より前に、被相続人が生前定めたとおりに保険金が支払われるため、親族同士のトラブルを防止できるというメリットもあります。
一方で、保険は契約の仕方によっては課税対象になるというデメリットもあります。非課税枠が適用されるのは、被保険者が被相続人で、受取人が相続人の時のみです。
受取人が孫などの相続人以外の場合は、非課税枠が適用されず、贈与税が課される場合があるため注意しましょう。
納税資金の準備として活用する
生命保険は、相続税の納税資金を確保する手段としても効果的です。
相続税は現金で一括納付が原則ですが、相続財産が不動産中心の場合は現金が足りずに困るケースも少なくありません。
最悪の場合は、納税資金を捻出するために不動産を売却したり、物納しなければならないこともあります。
生前に生命保険を契約しておけば、被相続人の死亡後すぐに現金を受け取れるため、納税資金として活用できます。
不動産など現金化しにくい財産を相続する場合は、「相続税の納税資金対策」として、死亡保険金を受け取る仕組みにしておくことが大切です。
メリットとデメリット
生命保険を活用すると、スムーズに現金を手に入れられるため、納税資金を確保できるというメリットがあります。
また、受取人として指定された人が死亡保険金を受け取ることになるため、故人の意志をきちんと反映できることも利点です。
一方で、継続的に保険料を支払う必要があること、健康状態によっては保険に加入できないことがデメリットです。
相続税対策として生命保険を活用したい場合は、健康な間に保険に加入しておくようにしましょう。
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財産の共有や法人化を活用した相続税対策

相続税対策として、財産の共有化や法人化を行うという方法があります。
不動産や金融資産を複数人で共有したり、法人を設立して資産管理を行うことで、相続税評価額の引き下げや、財産の分散が可能になります。
ここでは、4つの方法について詳しく解説します。
家族間で不動産を共有して評価額を下げる
不動産を相続する際に複数の相続人で共有名義にすると、それぞれの持ち分が分割されて個人ごとの課税対象額を抑えることができます。
相続税は以下のように累進課税制度となっており、相続財産が増えると税率が高くなります。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | ー |
1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超から3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超から6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
財産の共有で一人あたりの相続額が少なくなると、結果的に低い税率が適用され、相続税を少なくできる仕組みです。
また、共有名義にすることで不動産を自由に処分できなくなるという理由から、評価額が低く見積もられることもあります。
このように、複数の相続人で共有すると相続税を低く抑えられるというメリットがありますが、不動産を処分する場合など、全員の合意が必要なことはデメリットです。
将来不動産の管理や売却を検討する際は、共有するすべての人の合意が必要となるため、将来的な不動産の管理や処分はしにくくなるリスクがあることを覚えておきましょう。
家族信託で資産を分散管理する
家族信託とは、資産を信頼できる家族に「管理・運用・処分」してもらう制度です。
例えば、高齢者が認知症などで判断能力を失うと、本人名義の預金や不動産は基本的に「凍結」され、売却や運用ができなくなります。
家族信託を活用してあらかじめ財産の管理・処分権限を受託者(たとえば子)に託すことで、本人が判断能力を失ってもスムーズな管理・活用が可能になるというメリットがあります。
デメリットは、制度設計が複雑である点です。
信託財産を分別管理するために「信託用の銀行口座」を開設する必要がありますが、対応していない金融機関も多く、開設に時間がかかることがあります。
資産管理会社(不動産管理法人)を活用する
資産管理会社とは、不動産や有価証券などの個人資産を管理する法人のことを言います。
法人が保有する不動産は、法人株式として評価されるため、相続時の評価額を抑える効果があります。
また、所得を分散したり、経費の計上が可能になるというメリットもあります。
特に収益不動産を多く持つ人にとっては、相続対策と節税を同時に実現できる手段として注目されています。
一方で、法人設立や運営にかかるコストや毎年の法人税申告の手間、資金管理の複雑さがデメリットです。
節税メリットがある一方で、さまざまな知識や堅実な運営が求められるため、資産管理会社を活用するかどうかは慎重に検討するようにしましょう。
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相続税対策でよくある失敗と注意点

相続税対策は早い段階から行うことが重要ですが、方法を間違ったり、準備不足で失敗する例も少なくありません。
ここでは、相続税対策でよくある失敗例と注意点について解説します。
過度な節税は税務署に否認される可能性がある
相続税対策として過度な手法をとると、税務署に否認されるリスクがあります。
親が通帳や印鑑を管理する名義預金や形式的な贈与などは、税務調査で実態がないと判断されれば、加算税や延滞税の対象となる場合があるため注意しましょう。
生前贈与の記録があいまいだとトラブルになることも
生前贈与は相続税対策として最も一般的で有効な手段ですが、贈与の記録が不十分だと「名義預金」と判断され、相続財産に含まれて課税されるリスクがあります。
税務署から否認されるケースとしては、口頭だけで贈与を済ませたり、贈与契約書や振込記録がない場合です。
また、他の相続人との間で「もらった・もらっていない」といったトラブルが発生することもあります。贈与を行う際は、必ず書面と証拠を残しましょう。
不動産の分割で相続が複雑になるリスクがある
不動産は相続財産の中でも分割が難しい資産です。複数の相続人で共有すると、将来売却や運用で意見が分かれやすく、トラブルの原因となります。
また、不動産のように物理的に分けられない資産では、代償分割や共有持分の調整が必要となり、相続手続きが煩雑になります。
不動産の相続に関するトラブルを防ぐためには、生前から遺言書や家族信託などで分割方針を明確にしておくことが大切です。
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相続でもめない「争族」対策とは

相続におけるトラブル、いわゆる「争族」は、家族間の関係を悪化させるリスクがあります。
特に、遺言書がなかったり、財産の分け方に偏りがあると、相続人同士で対立が起こりやすくなります。
こうした相続トラブルを防ぐためには、早期から「争族対策」を行うことが重要です。ここでは、具体的な争族対策について解説します。
公正証書遺言を活用する
相続トラブルを防ぐためには、公正証書遺言の作成が効果的です。
公証人が関与して作成されるため、形式の不備などで無効になるリスクが低く、遺言の信頼性も高まります。
また、原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配もありません。
相続では「誰が何を相続するか」を当人同士で話し合うと、争いになる傾向があります。
公正証書遺言で、被相続人が「誰に何を残すか」を明確にしておくことで、家族間の争いを避けられるため、積極的に活用すると良いでしょう。
親族で話し合いを行う
もめない相続を実現するためには、事前の準備と家族間のコミュニケーションが大切です。
相続財産の内容や分割方法について、生前のうちに明確にし、必要に応じて遺言書や家族信託などの手続きを取っておくことが大切です。
相続人全員が納得できる形を目指して早めに話し合いを行っておくことが、争いを防ぐ鍵になると言えるでしょう。
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相続税対策を進める手順

相続税対策を効果的に進めるには、まず現状の財産を正確に把握することが重要です。
不動産や預貯金、有価証券などの資産を整理し、相続税の課税対象となる金額はどれくらいかを見積もる必要があります。
そのうえで、生前贈与や生命保険の活用など、個別の対策を計画的に進めていきます。
また、相続税対策は税務・法律・不動産の知識が必要なため、税理士や司法書士などの専門家に早めに相談することが大切です。
近年は無料相談会なども実施されているため、上手に活用すると良いでしょう。
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【まとめ】相続税対策は早めに準備しよう
相続税対策は、相続発生の直前になってからでは手遅れになるケースが多く、早期から準備しておくことが大切です。
特に生前贈与や不動産の活用などは、長期的な視点で行う必要があるため、数年単位で計画・対策することが成功の鍵となります。
スムーズな相続のために相続人とのコミュニケーションや遺言書の作成などを同時に進めておくようにしましょう。