定年後再雇用の給与はどうなる?再雇用後の待遇の変化について解説。

現在は定年後も再雇用によって仕事を続ける人が多くいます。再雇用時に多くの方が気になるポイントは再雇用後の待遇ではないでしょうか。

そこで今回の記事では、定年後の再雇用における給与や待遇の変化、同一労働同一賃金の原則について解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。

この記事の監修者
涌井好文
平成26年より神奈川県で社会保険労務士として開業登録を行い、以後地域における企業の人事労務や給与計算のアドバイザーとして活動を行う。
退職時におけるトラブル相談や、転職時のアドバイスなど、労働者側からの相談にも対応し、労使双方が円滑に働ける環境作りに努めている。
また、近時は活動の場をWeb上にも広げ、記事執筆や監修などを通し、精力的に情報発信を行っている。

60歳から65歳の再雇用後の給与相場

まずは、定年後に再雇用される年齢層である60から65歳周辺の平均給与を確認していきましょう。

国税庁が公開している「令和4年民間給与実態統計調査」での「年齢階層別平均給与」によると、60から65歳周辺の平均給与は以下のようになっています。

男性女性全体
55〜59歳702万円329万円546万円
60〜64歳569万円267万円441万円
65〜69歳428万円227万円342万円

調査によると、男性の平均給与額は、55歳から59歳で702万円、60歳から64歳で569万円、65歳を超えると428万円と段階的に下がっていっています。

女性の平均給与額は、55歳から59歳で329万円、60歳から64歳で267万円、65歳を超えると227万円と、同様に下がっていることがわかりました。

特に、定年世代となる60から65歳の給与は、直前の現役世代と比べ、男性では20〜40%、女性では20〜30%ほど減っています。

多くの企業では、役職定年や再雇用に伴い、給与体系が見直される傾向にあります。定年後のキャリアプランを考える際には、これらの給与の変動を念頭に置くことが非常に重要です。

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大企業における再雇用後の給与の事例

実際に大手広告代理店では、50歳の時点で年収が2000万円だった状況から、60歳になると年収が300〜500万円まで下がったというケースがあります。

またそれ以外にも大手総合電機メーカーでは、再雇用後の年収が300万円以下になるケースもあります。

弊社でもこれまで多くのシニアの方と面談をしてきましたが、「管理職として年収1500万円をもらっていたのに、再雇用後は年収300万円にまで落ちてしまった。もうやってられないよ。」と悲観的になられる方を多く見てきました。

後述しますが、あなたの価値は社内の評価では決まりません。「社内の評価 市場価値」であるということをまずは念頭においていただきたいと思います。

同一労働同一賃金の原則による60歳以上の再雇用の扱いとは?

同一労働同一賃金の原則とは、「正規雇用(無期雇用フルタイム労働者) 」「非正規雇用(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)」の不合理な待遇差を解消する取り組みのことです。

同じ仕事をしている従業員に対しては、雇用形態に関係なく同じような報酬が支払われるべきとされています。

つまり、定年後の再雇用であっても同一労働同一賃金の原則に基づいて、業務内容が同じであれば同等の報酬を支払う必要があるのです。

一方で、同じ業務内容であっても、年金の受給や退職金の支給などの待遇差がある場合や、加齢による体力低下などの合理的な理由がある時は、他の雇用者に比べて賃金を低くすることが認められています。

定年後の再雇用では、同一労働同一賃金の原則の対象とはなるものの、合理的な理由により、必ずしも同じ賃金にはならないということを理解しておきましょう。

再雇用制度と勤務延長制度の違い

定年後の再雇用制度とは、従業員が定年退職したあと、同じ企業と再び雇用契約を結ぶ雇用継続制度のことです。

少子高齢化による労働力不足や、定年退職年齢と年金受給開始年齢の差の解決を図って制度が導入されました。

定年後再雇用では一度退職して再び雇用契約を結ぶため、定年退職時には退職金が支払われるのが一般的です。また、新しい雇用契約になるため、雇用形態や給与、業務内容が変わってしまうこともありえます。

定年後の再雇用と類似する勤務延長制度は、定年を迎えた従業員が退職をせずに、そのままの雇用形態で勤務を継続できる制度です。一般的に勤務延長制度では、給与体系や業務内容などが定年前と変わらず、これまでと同じように働くことができます。

この場合、退職はしていないので延長する時点では退職金は支払われません。

再雇用後の待遇は給与以外にどのように変化するのか?

ここまででは、再雇用後の給与変化について説明してきました。ここからは、再雇用後の給与以外の待遇変化についても確認していきましょう。

雇用形態

定年後の再雇用制度による雇用形態には、正社員や契約社員、パートタイム社員、派遣社員などがあります。定年前が正社員雇用であっても、定年後の再雇用でも同じ雇用形態にしなければならないという決まりはありません。

一般的に、定年後の再雇用では、正規雇用と非正規雇用の割合は、半々ほどといわれています。雇用形態によって、利用できる福利厚生が異なることもあるため注意しましょう。

業務内容

定年後の再雇用では、定年退職前と同じ業務や職務を引き継ぐこともあれば、新しい業務や職務に就くこともあるようです。体力の低下などを理由に、業務内容や業務への責任が軽減されるケースは少なくありません。

業務内容や責任が軽減されると、心身への負担が少なくなる一方で、給与の低下にも影響することは否めません。

有給休暇

労働基準法による有給休暇は、定年後再雇用制度によって再雇用された従業員にも適用されます。有給休暇は、原則定年退職前からの勤続年数を通算して日数を計算して付与されます。

また、雇用形態が変わっても以前の勤続年数が通算されることも覚えておきましょう。ただし、再雇用後に所定労働日数が減るときは、付与日数が再計算される場合があることに注意してください。

社会保険

定年後再雇用においても社会保険には加入できます。ただし、加入条件や保険料の負担などは、再雇用契約の労働条件によって変動することがあります。

たとえば、原則として再雇用後の契約で「1週間の所定労働時間」または「1ヶ月の所定労働日数」が通常の従業員(正社員等)の4分の3未満となった場合は、社会保険(健康保険および厚生年金保険)の被保険者資格が喪失してしまいます。

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退職金

定年後再雇用は定年退職をしたうえで、再び同一企業に雇用されます。そのため、定年退職時に退職金が支払われるのが一般的です。

また、再雇用後の2度目の退職金が支払われるケースもあります。ただし、退職金制度はあくまで企業が定める制度であり企業によって待遇が異なるため、事前に確認しておくことをお勧めします。

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現状、再雇用後の給与は減少するケースが多い

定年後の再雇用では、体力低下などを理由に、業務内容や責任が軽減され、それに伴い給与も下がってしまうことがあります。

定年後の再雇用世代となる60歳から65歳は、平均給与が300〜400万円ほどで、現役時よりも30〜40%ほど下がることがほとんどだという現実を知っておく必要があります。

しかし、直前まで現役であった60代の人は、それまで培われてきたスキルや経験を持っていらっしゃり、外の世界では再雇用の給与以上にバリューがあると評価されるケースも珍しくありません。

会社では現役時以上には評価されないが、一歩社外に出るとそのスキル、経験が高く評価され、再雇用の給与以上の収入が見込めることもあります。

再雇用だからといって、今の待遇で仕方ないとご自分の能力を見切らずに、これまでの経験を活かして、独立や転職を視野に入れるのも1つの選択といえるでしょう。

再雇用後のキャリアプランは65歳まででなく人生全体で考える

再雇用後はキャリアのゴールを65歳とせずに、人生全体のキャリアプランを考えましょう。平均寿命が伸び、今では人生100年時代と呼ばれるようになりました。再雇用終了後も20年、30年と長い期間が残されているため、その期間をどのように過ごしていくかも考えなければなりません。

早い段階から副業や転職、独立も視野に入れて準備しておくことで、定年後や再雇用後の選択肢を広げることができます。

こちらの記事では再雇用中に考えるべきキャリアプランについてまとめています。

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定年後の再雇用以外の選択肢とは?

定年後は再雇用だけでなく、さまざまな働く道があります。

1つ目は、転職して仕事を続ける選択肢です。スキルや経験を持っていれば、現在所属している会社以上に評価されることもあります。

しかし、一般的に50代以降の転職は、他の世代と比べて難易度が高いという現実があります。その実態について以下でまとめていますので、ぜひご覧ください。

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2つ目は、個人事業主として独立する選択肢です。シニア層が独立するメリットは、年齢に縛られない働き方を実現できることです。

今回紹介した再雇用においても、年齢が60歳になったからといって給与を大きく下げたり、転職しようとしても年齢だけで判断されてしまい、書類選考に通過しなかったりすることが多くあります。

しかし、独立することでこのような年齢による縛りから解放されます。独立と聞くとリスクがあると感じる人も多いようですが、独立するための事前準備をしっかりと行っておけば、それは夢物語ではなく現実的な選択になります。

以下の記事では、50代以降で独立を成功させるポイントを紹介しています。詳しく知りたい人は、ぜひ参考にしてみてください。

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まとめ

定年後再雇用における給与の変化を中心に紹介してきました。同一労働同一賃金の原則があるものの、体力低下や年金、退職金を理由に、給与が20〜40%下がってしまうのが現実です。

ただし、待遇の変化によって、業務内容や責任が軽減されることで、その分活用できる時間が増えてきます。長い人生において、60から65歳までの定年・再雇用を通過点と考え、自己研鑽や人脈形成などに時間を充てることで、その先のキャリアの選択肢を広げていきましょう。

また給与が下がってしまうことに備えて、再雇用だけでなく、独立などの選択肢もふまえて人生のキャリアプランを考えてみるのもいいでしょう。

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