定年後も再雇用で仕事を続ける人が増えています。再雇用時に多くの方が気になるのが、給与や待遇がどう変わるのかという点ではないでしょうか。
結論からお伝えすると、2025年9月公表の最新データ(国税庁・令和6年分 民間給与実態統計調査)では、60〜64歳の平均年収は男性604万円、女性294万円、全体473万円。直前の55〜59歳と比べて男性で約131万円、女性で約62万円ダウンするのが平均的な姿です。
さらに2026年現在は、2025年4月から高年齢者雇用安定法の経過措置が終了し、65歳までの雇用確保が完全義務化されたほか、高年齢雇用継続給付金の支給率が最大15%→10%に縮小されるなど、再雇用を取り巻く制度が大きく変わっています。
この記事では、令和6年最新データ+2025年法改正を踏まえ、定年後再雇用の給与相場・待遇変化・同一労働同一賃金の取り扱い・再雇用以外の選択肢までをわかりやすく解説します。ぜひ参考にしてみてください。

平成26年より神奈川県で社会保険労務士として開業登録を行い、以後地域における企業の人事労務や給与計算のアドバイザーとして活動を行う。
退職時におけるトラブル相談や、転職時のアドバイスなど、労働者側からの相談にも対応し、労使双方が円滑に働ける環境作りに努めている。
また、近時は活動の場をWeb上にも広げ、記事執筆や監修などを通し、精力的に情報発信を行っている。
60歳から65歳の再雇用後の給与相場を調査をもとに解説

まずは、定年後に再雇用される年齢層である60から65歳周辺の平均給与を確認していきましょう。
国税庁が公開している「令和6年分 民間給与実態統計調査」(2025年9月公表)の「年齢階層別平均給与」によると、60から65歳周辺の平均給与は以下のようになっています。
| 男性 | 女性 | 全体 | |
| 55〜59歳 | 735万円 | 356万円 | 572万円 |
| 60〜64歳 | 604万円 | 294万円 | 473万円 |
| 65〜69歳 | 472万円 | 240万円 | 376万円 |
調査によると、男性の平均給与額は、55歳から59歳で735万円、60歳から64歳で604万円、65歳を超えると472万円と段階的に下がっていきます。
女性の平均給与額は、55歳から59歳で356万円、60歳から64歳で294万円、65歳を超えると240万円と、同様に下がっていることがわかりました。
特に、定年世代となる60から65歳の給与は、直前の現役世代と比べ、男性で約18%、女性で約17%ほど減少するのが平均的な姿です。なお、令和4年(2022年)データと比べると、60〜64歳男性の平均給与は569万円→604万円と2年で約35万円増加しており、賃上げの追い風はシニア層にも徐々に波及していることがわかります。
多くの企業では、役職定年や再雇用に伴い、給与体系が見直される傾向にあります。定年後のキャリアプランを考える際には、これらの給与の変動を念頭に置くことが非常に重要です。
定年退職後の再雇用は、経済的な安定をもたらす一方で、待遇や人間関係において様々な変化や課題を伴います。大手食品会社で再雇用として働くAさんに、再雇用後の職場環境や仕事内容、人間関係の変化について詳しく伺いました。
Aさんのプロフ[…]
大企業における再雇用後の給与の事例
実際に大手広告代理店では、50歳の時点で年収が2000万円だった状況から、60歳になると年収が300〜500万円まで下がったというケースがあります。一般に大企業ほど現役時の年収が高く、再雇用後の下げ幅も大きい傾向があります。
またそれ以外にも大手総合電機メーカーでは、再雇用後の年収が300万円以下になるケースもあります。
弊社でもこれまで多くのシニアの方と面談をしてきましたが、「管理職として年収1500万円をもらっていたのに、再雇用後は年収300万円にまで落ちてしまった。もうやってられないよ。」と悲観的になられる方を多く見てきました。
後述しますが、あなたの価値は社内の評価では決まりません。「社内の評価 ≠ 市場価値」であるということをまずは念頭においていただきたいと思います。
【2025年4月改正】65歳までの雇用確保が完全義務化&雇用継続給付金は縮小
定年後再雇用を取り巻く法制度は、2025年4月に大きな転換点を迎えました。
高年齢者雇用安定法の経過措置終了(65歳完全義務化)
これまで高年齢者雇用安定法では、企業に対して65歳までの雇用確保措置(①定年廃止、②定年延長、③継続雇用制度のいずれか)を求めつつ、対象者を労使協定で限定できる「経過措置」が認められていました。2025年4月1日にこの経過措置が完全終了し、すべての企業で希望者全員を65歳まで継続雇用することが義務化されました。
これにより、これまで「会社が選別する」形で再雇用されないケースがあった層も、原則として希望すれば再雇用される時代になっています。
あわせて、70歳までの就業機会確保(努力義務)も継続しており、継続雇用・業務委託・社会貢献事業などの選択肢が広がりつつあります。
高年齢雇用継続給付金の支給率縮小(15%→10%)
もう一つの大きな変更が、雇用保険の高年齢雇用継続給付金です。これは60〜64歳で再雇用に伴って賃金が大きく下がった人に対して、雇用保険から賃金の最大15%を支給する制度ですが、2025年4月以降に60歳に到達する人から、最大支給率が15%→10%に縮小されました。
| 2025年3月までに60歳到達 | 2025年4月以降に60歳到達 | |
| 賃金低下率61%以下 | 賃金の15%を支給 | 賃金の10%を支給 |
| 賃金低下率64% | 段階的に減額 | 段階的に減額 |
| 賃金低下率75%超 | 支給なし | 支給なし |
例えば、現役時の月収40万円が再雇用後に20万円(賃金低下率50%)になった場合、改正前は月3万円(15%)が給付されていたのが、改正後は月2万円(10%)に減ります。年間で約12万円の手取り減少となるため、2025年4月以降に60歳を迎える方は、再雇用後の手取り計画を早めに見直しておく必要があります。
同一労働同一賃金の原則による60歳以上の再雇用の扱いとは?

同一労働同一賃金の原則とは、「正規雇用(無期雇用フルタイム労働者) 」「非正規雇用(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)」の不合理な待遇差を解消する取り組みのことです。
同じ仕事をしている従業員に対しては、雇用形態に関係なく同じような報酬が支払われるべきとされています。
つまり、定年後の再雇用であっても同一労働同一賃金の原則に基づいて、業務内容が同じであれば同等の報酬を支払う必要があるのです。
一方で、同じ業務内容であっても、年金の受給や退職金の支給などの待遇差がある場合や、加齢による体力低下などの合理的な理由がある時は、他の雇用者に比べて賃金を低くすることが認められています。
定年後の再雇用では、同一労働同一賃金の原則の対象とはなるものの、合理的な理由により、必ずしも同じ賃金にはならないということを理解しておきましょう。
なお、2018年の長澤運輸事件最高裁判決以降、再雇用後の賃金減額については「業務内容・責任の違い」「賃金体系の違い」「定年退職を経た者であるという特別な事情」を考慮して合理性が判断されるようになっています。再雇用後も業務内容・責任が現役時と同じなのに大幅な賃金減額があった場合は、不合理な格差として争える余地があります。
再雇用制度と勤務延長制度の違い
定年後の再雇用制度とは、従業員が定年退職したあと、同じ企業と再び雇用契約を結ぶ雇用継続制度のことです。
少子高齢化による労働力不足や、定年退職年齢と年金受給開始年齢の差の解決を図って制度が導入されました。
定年後再雇用では一度退職して再び雇用契約を結ぶため、定年退職時には退職金が支払われるのが一般的です。また、新しい雇用契約になるため、雇用形態や給与、業務内容が変わってしまうこともありえます。
定年後の再雇用と類似する勤務延長制度は、定年を迎えた従業員が退職をせずに、そのままの雇用形態で勤務を継続できる制度です。一般的に勤務延長制度では、給与体系や業務内容などが定年前と変わらず、これまでと同じように働くことができます。
この場合、退職はしていないので延長する時点では退職金は支払われません。
再雇用後の待遇は給与以外にどのように変化するのか?

ここまででは、再雇用後の給与変化について説明してきました。ここからは、再雇用後の給与以外の待遇変化についても確認していきましょう。
雇用形態
定年後の再雇用制度による雇用形態には、正社員や契約社員、パートタイム社員、派遣社員などがあります。定年前が正社員雇用であっても、定年後の再雇用でも同じ雇用形態にしなければならないという決まりはありません。
一般的に、定年後の再雇用では、正規雇用と非正規雇用の割合は、半々ほどといわれています。雇用形態によって、利用できる福利厚生が異なることもあるため注意しましょう。
業務内容
定年後の再雇用では、定年退職前と同じ業務や職務を引き継ぐこともあれば、新しい業務や職務に就くこともあるようです。体力の低下などを理由に、業務内容や業務への責任が軽減されるケースは少なくありません。
業務内容や責任が軽減されると、心身への負担が少なくなる一方で、給与の低下にも影響することは否めません。
有給休暇
労働基準法による有給休暇は、定年後再雇用制度によって再雇用された従業員にも適用されます。有給休暇は、原則定年退職前からの勤続年数を通算して日数を計算して付与されます。
また、雇用形態が変わっても以前の勤続年数が通算されることも覚えておきましょう。ただし、再雇用後に所定労働日数が減るときは、付与日数が再計算される場合があることに注意してください。
社会保険
定年後再雇用においても社会保険には加入できます。ただし、加入条件や保険料の負担などは、再雇用契約の労働条件によって変動することがあります。
たとえば、原則として再雇用後の契約で「1週間の所定労働時間」または「1ヶ月の所定労働日数」が通常の従業員(正社員等)の4分の3未満となった場合は、社会保険(健康保険および厚生年金保険)の被保険者資格が喪失してしまいます。
定年後も再雇用で働き続けた場合、厚生年金には加入できるのかを知りたいという人も多いのではないでしょうか。
定年を迎える60歳以降も長く働きたいという人が増えていますが、厚生年金に加入しながら働けるかどうかは大きなポイントです。
[…]退職金
定年後再雇用は定年退職をしたうえで、再び同一企業に雇用されます。そのため、定年退職時に退職金が支払われるのが一般的です。
また、再雇用後の2度目の退職金が支払われるケースもあります。ただし、退職金制度はあくまで企業が定める制度であり企業によって待遇が異なるため、事前に確認しておくことをお勧めします。
ボーナス
定年後再雇用において、ボーナスの扱いは企業の方針によって異なります。多くのケースでは、定年退職後の再雇用時にはボーナスが支給されない、または支給額が減少することがあります。したがって、再雇用後の計画を立てる際には、ボーナスの有無とその影響を考慮することが重要です。
定年退職時に支給される退職金。再雇用を予定している方でも定年時には退職金を受け取ることができます。しかし、再雇用が予定されている場合でも退職金に税金がかかるのか、自分に支給される退職金にどのように税金が課せられるか気になっている方も多いで[…]
定年後の再雇用で働く際に意識・注意すべきこと

シニアの方たちのお声を聞いていると、定年後再雇用での働き方について悩みを抱える人も多いようです。そこで、実際にどのような点に注意して働くべきかご紹介します。
現状、再雇用後の給与は減少するケースが多い
定年後の再雇用では、体力低下などを理由に、業務内容や責任が軽減され、それに伴い給与も下がってしまうことがあります。
定年後の再雇用世代となる60歳から65歳は、令和6年の平均給与が473万円(男性604万円、女性294万円)。多くの場合、現役時よりも15〜25%ほど下がることが平均的だという現実を知っておく必要があります。さらに2025年4月以降は高年齢雇用継続給付金の支給率も縮小されたため、手取りベースでの実質的な減少幅は以前より大きくなっています。
しかし、直前まで現役であった60代の人は、それまで培われてきたスキルや経験を持っていらっしゃり、外の世界では再雇用の給与以上にバリューがあると評価されるケースも珍しくありません。
会社では現役時以上には評価されないが、一歩社外に出るとそのスキル、経験が高く評価され、再雇用の給与以上の収入が見込めることもあります。
再雇用だからといって、今の待遇で仕方ないとご自分の能力を見切らずに、これまでの経験を活かして、独立や転職を視野に入れるのも1つの選択といえるでしょう。
再雇用後のキャリアプランは65歳まででなく人生全体で考える
再雇用後はキャリアのゴールを65歳とせずに、人生全体のキャリアプランを考えましょう。平均寿命が伸び、今では人生100年時代と呼ばれるようになりました。再雇用終了後も20年、30年と長い期間が残されているため、その期間をどのように過ごしていくかも考えなければなりません。
早い段階から副業や転職、独立も視野に入れて準備しておくことで、定年後や再雇用後の選択肢を広げることができます。
こちらの記事では再雇用中に考えるべきキャリアプランについてまとめています。
定年退職以降も再雇用を選択する方が少なくありません。しかし、「再雇用されたら待遇はどうなるのか?」「再雇用後も充実した会社員生活を送れるのか?」と不安に思う方も多いでしょう。
今回は、27年間にわたり人材の出口戦略、特に雇用調整およ[…]
定年後の再雇用以外の選択肢とは?
定年後は再雇用だけでなく、さまざまな働く道があります。
1つ目は、転職して仕事を続ける選択肢です。スキルや経験を持っていれば、現在所属している会社以上に評価されることもあります。
しかし、一般的に50代以降の転職は、他の世代と比べて難易度が高いという現実があります。下記では、定年後も仕事を続けるための方法や、未経験から挑戦できるおすすめの仕事10選についてまとめております。ぜひ参考にしてください。
長年勤めた会社を退職し、定年という節目を迎えると、多くの方が新たな人生のスタートラインに立つことになります。そこで重要になってくるのが、「定年後の仕事」についてです。
この記事では、定年後の仕事に関する基本的な知識から、おすすめの仕[…]
かつては60歳といえば「定年退職=引退」というイメージが一般的でした。しかし近年、人生100年時代といわれるようになり、60歳以降も働き続けることを選ぶ人が増えています。その背景には、経済的な理由だけでなく、働くことによる生きがいや社会と[…]
また、50代転職の実態について以下でまとめていますので、ぜひご覧ください。
今回の記事では27年にわたり雇用調整および再就職支援を行ってきた髙松さんが、セカンドキャリアにおいて選択肢を増やす方法や、年齢に捉われないキャリア形成のヒントについて解説します。
役職定年を目の前に新たなキャリアを模索している方、転[…]
2つ目は、個人事業主として独立する選択肢です。シニア層が独立するメリットは、年齢に縛られない働き方を実現できることです。
今回紹介した再雇用においても、年齢が60歳になったからといって給与を大きく下げたり、転職しようとしても年齢だけで判断されてしまい、書類選考に通過しなかったりすることが多くあります。
しかし、独立することでこのような年齢による縛りから解放されます。独立と聞くとリスクがあると感じる人も多いようですが、独立するための事前準備をしっかりと行っておけば、それは夢物語ではなく現実的な選択になります。
以下の記事では、50代以降で独立を成功させるポイントを紹介しています。詳しく知りたい人は、ぜひ参考にしてみてください。
人生100年時代、健康寿命が年々伸びていく中で、60歳を超えてもバリバリ働きたいと思っている方は多いのではないでしょうか。定年を気にせず働く上で独立という選択肢について検討している方も増えてきています。
しかし、長年サラリーマンとし[…]
まとめ
令和6年最新データに基づくと、定年後再雇用の給与相場は60〜64歳で男性604万円・女性294万円・全体473万円。現役時の55〜59歳と比べて15〜25%ほど下がるのが平均的です。同一労働同一賃金の原則があるものの、業務内容・責任の見直しや退職金・年金との調整を理由に、ある程度の給与減少は受け入れざるを得ないのが現実です。
2025年4月の法改正で65歳までの雇用確保が完全義務化された一方、高年齢雇用継続給付金は最大15%→10%に縮小されました。再雇用後の手取り計画は、これらの最新制度を踏まえて早めに見直しておきたいところです。
【再雇用前後にやっておきたい4つの準備】
- 会社の再雇用条件(給与・役割・契約期間)を早めに確認する
- 2025年4月以降は雇用継続給付金10%に縮小、手取りベースで再シミュレーション
- 退職金の受取方法(一時金/年金)と税負担を比較検討する
- 再雇用以外の選択肢(転職・独立・副業)も視野に入れて市場価値を確認する
長い人生において、60から65歳までの定年・再雇用は通過点。65歳以降も20〜30年のキャリアが残されているからこそ、自己研鑽や人脈形成、副業・独立準備に時間を充てることで、その先の選択肢を広げていきましょう。「再雇用後の給与に納得できない」「自分の市場価値を確かめたい」と感じる方は、シニア世代に強い転職エージェントへの相談も有力な選択肢です。










