50代以降で転職活動をする多くの方が、「50代以降で採用されるにはどんな点に気をつければ良いのだろう」と不安を抱いています。自身も転職活動の経験が豊富で、シニア人材の採用にも携わっている流通業界の採用担当者Bさんに、50代以降のシニア人材の強みや、転職を成功させる履歴書や面接のポイントについてお話を伺いました。
売上高4,000億円超、従業員数1万人以上を誇る流通業界の企業において、商業施設の運営に携わり、これまで全国の数多くの店舗展開を手掛けてきた。現在は経営企画担当として、シニア層の中途採用にもかかわっている。
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50代よりも60代を多く採用 時代の影響で求人にも大きな差が

―御社の事業内容について教えてください。
流通業界で百貨店商業施設の運営を行っています。営業担当として、様々な地域での店舗展開に力を尽くしてきました。現在は経営企画を担当し、採用業務にも携わっています。
ー御社では、50代以降の社員の方の割合はどれくらいなのでしょうか。
社員の約35%が50代です。この年代が多いのは、バブル期に多くの人が採用されたためです。
一方で、現在の定年は60歳のため、60代以上の社員は少数です。ただ、今後数年以内に定年が65歳まで延長される可能性が高いと考えられます。
―現在、シニア人材の採用はどの程度行っていらっしゃいますか。
現在の社員数とのバランスを考慮し、50代の採用は積極的には行っていないのですが、唯一、DX(デジタルトランスフォーメーション)分野では、必要に応じて採用しています。
我々流通業界は、オンラインビジネスのノウハウを求めているのです。ECサイトの運営など大規模な事業目標達成のために、一時的にまとまった人数を採用することもあります。
一方、60代の採用は特定の専門スキルを持つ人材を対象に積極的に行っています。例えば、商業施設の安全管理には消防署や警察のOBが必要になります。また、企業美術館の運営には学芸員が欠かせません。
そのほか、経営戦略に貢献できるMBA取得者や富裕層顧客に対応できるファイナンシャルプランナーを採用するケースも多いですね。
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シニアの強みは「大局観」と「危機管理能力」

ー若手人材と比較して、シニア人材が優れているのはどのような点ですか。
シニアの方は、やはり大局観と危機管理能力が違います。
ここで言う大局観とは、経験に基づく視野の広さです。シニアは物事を多角的に捉え、長期的な視点から判断を下す能力が高いのです。
たとえば、間もなく経営会議が始まるというタイミングで資料の数字の誤りが判明したとします。若手なら「大変だ、今から資料を差し替えなければ」と焦るでしょう。
でも、シニアは「経営会議に出席するほどの重役なら、数字の桁が違っても分かるはず。あとは出席者にお任せしよう」と判断できます。さらに、後々への影響も考え、「誤った数字が出回らないよう、広報には連絡を」と先手を打てるのです。
危機管理の面でも、シニアは過去の経験を生かしてリスクを予測し、適切に対応する能力に長けています。緊急事態が発生した場合に、根本的な原因を追及して再発防止策を講じる力があるのです。
たとえば、売り場で電気タップから煙が出るアクシデントが起きたとします。若手であれば、問題のあるタップを廃棄して対応を終えるかもしれません。しかし、シニアは「なぜこのような事態が起きたのか?」と原因を追究し、さらに「他の売り場でも同様のリスクがないか、全社的な点検を実施すべきだ」と提案できることが多いでしょう。
大局観と危機管理能力はすなわち、事象の背景にある要因や、将来への影響を予測する能力です。人生経験を重ねているからこそ、豊かな想像力がある。これこそシニア人材の強みです。
ーシニア人材に期待している強みや役割はどういうものでしょうか。
若さとバランス感覚、そしてフレキシビリティ(柔軟性)に期待しています。
「若さ」という言葉を聞くと、意外に思われるかもしれませんが、年齢に関わらず活力や意欲があることを重要視しているのです。もちろん「若作りをする」ということではありません。たとえばオンラインで最終面接まで進み、「遠方ですが、対面での面談にお越しいただけますか?」と尋ねられた際に、「はい、行きます」と即答できるかどうか。また、実際にお会いした際に、その人からエネルギーを感じられるかどうか。若さとは、仕事にかける熱意や行動力の表れともいえるでしょう。
次に、人と接する際のバランス感覚です。たとえば会話の中で自分ばかりが喋り続けるのではなく、相手の話も聞けるかどうか。空気を読む力や、自分のメッセージを短く伝える力、言葉の使い方に人柄がにじみ出るものです。
そして、与えられた仕事に柔軟に対応できるフレキシビリティです。入社が決まったシニアの方に名刺を作る際、職名の希望を伺うのですが、上位の職名にこだわる方ほど、ご自分のポジションを強く意識し、組織には少し定着しにくい傾向があります。
一方、役職名・肩書きにはあまりこだわりのない方は柔軟性が高く、新しい職場でも活躍できる方が多いですね。
ーフレキシビリティがあると、入社後、企業文化や新しい環境に馴染めそうですね。
どんな仕事でも柔軟に楽しんでこなし、貢献できる人は新しい環境に馴染みやすいですね。なぜなら、シニアの転職では、担当する業務は多岐にわたるケースがほとんどだからです。
例えば弊社では、警察OBの警備担当者であっても時にはお店の行列を整理したりお客様の車椅子を押したりしていただくことがあります。
厳しい言い方ですが、転職したシニア世代が役員に昇進する可能性はまずありません。それよりも、若いプロパー社員に「使ってもらいやすい」人材になることに喜びを見出すくらいの気持ちでないと、長続きしないでしょうね。
また、企業研究に熱心な人も企業文化に馴染みやすい傾向にあります。インターネットでコーポレートサイトを閲覧すれば、企業理念や事業内容、SDGsへの取り組みなどがわかるはずです。
加えて、雇用条件をしっかり確認し、試用期間や契約期間などを知っておくことも大切です。もっとも、面接で根掘り葉掘り聞くと「えり好みする人」という印象を与えかねないので要注意です。
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シニアが転職を成功させるために必要なポイント

―そもそも、シニア世代が転職を考える際、どのような視点を持つべきでしょうか?
私自身も50代後半で転職活動をしました。そこで感じたのは、「シニアの転職活動を通じて得るものが非常に多い」ということです。
50代、60代の転職は、単なる仕事探しではなく、人生の後半をどうデザインするか、という視点が大切です。今後の働き方を見直し、70歳まで働ける形でキャリアを設計することをおすすめします。
―転職を考える際に、とくに意識すべきことは何でしょうか。
家族・健康・時間の裁量の3つです。
まず、家族の問題。親の介護や実家の管理は避けて通れません。次に、健康の問題。自分自身や家族の体調を考慮し、無理なく働ける環境を選ぶことが大切です。そして、時間の使い方。転職によって自由時間が増えるのか、逆に減るのかを見極める必要があります。
仕事を選ぶ際も、企業名や肩書きよりも、仕事内容と裁量の大きさを重視することをおすすめします。給与が高くても、勤務時間が固定されていたり、勤務地が遠かったりすると、自由度が下がってしまうこともあるのです。
昔は土日休みが良いとされていましたが、今は平日休みのほうがメリットになることもあります。
役所の手続きやご家族のための病院の予約など、平日に自由に動けることで、生活の質が向上することもあるのです。転職を機に、これまでの常識を見直すことも大事ですね。
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第一印象を左右する履歴書とは

―印象に残る履歴書・職務経歴書はどのようなものでしょうか?
履歴書・職務経歴書はいわば求職者のファーストインプレッション(第一印象)。とくに、丁寧さが大きなポイントです。
書き方のルールが守られ、誤字脱字なく記入欄が埋められているか。学歴や職歴の年月の記載、所属していた会社名が正確であるかどうかをチェックします。
細かいことですが、会社名を記載する際に「株式会社」と書いてある場合と「(株)」で済ませている場合では印象が異なります。所持資格があるなら、すべて書きましょう。MBAや防火管理者などの資格だけでなく、大型二輪免許など趣味の資格も細かく記載するのがおすすめです。
履歴書や職務経歴書は、今やPCを使用して作成するのが主流。書式全体のレイアウトや採用担当者が見やすいフォント、文字サイズを意識しましょう。プリントアウトした際に体裁が整っているか、入念にチェックしてください。
ー履歴書や職務経歴書に載せる写真についてはいかがでしょうか。
写真も印象を大きく左右します。私は、証明写真機の利用をおすすめします。最近の機種は撮影データをダウンロードでき、サイズを変更したり、必要に応じて再プリントしたりできます。また、背景色も変えられますし、なんといっても顔の映りがきれいです。
50代以降は経験豊富な年代といえますが、職務経歴書を通じて積み重ねた経験や実績をうまく伝えるためには、どのような工夫をすれば良いのでしょうか。 職務経歴書は転職活動で重要視される書類のため、読みやすく、かつ自分をアピールできる書き方[…]
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面接で「採用したい」と思わせる人、落とされる人の違い

ー面接まで進んだ際、気をつけるべきポイントはどのようなものでしょうか。
時間を守ることはもちろん、態度や身だしなみが適切であることは基本中の基本です。加えてシニアの場合、年齢相応の落ち着きや経験に基づく余裕も大切ですね。
オンライン面接・対面ともに、遅刻は厳禁です。必ず5分前には到着しましょう。礼儀正しさは大切ですが、硬すぎる表情は避け、丁寧な敬語を使いつつも適度にリラックスした態度で臨むのがベターです。
シニアにとって、伝える力は命。雄弁でなくてかまわないので、これまでの自分の経験やスキルを端的に1分間程度で話せるようにしておきましょう。質問に対して明確に答えられる方は判断力が高いと評価されます。
生き方や健康管理は姿勢や身のこなしにも現れるので、礼の仕方や歩き方、席の立ち方もチェックしています。服装は年齢相応の落ち着いたものを選んでください。おろしたての新品シャツよりは、「こなれ感」を与えるシャツを。腕時計は革ベルトのものが望ましいと私は感じます。カバンなどの持ち物も含め、清潔感と落ち着きのある身だしなみを心がけましょう。
ー最近はオンラインでの面接も多いのでしょうか。
一次面接はオンラインで行われることが多いです。インターネットの接続環境やPCの状態は入念にチェックしてください。「通信状況が悪くて」と弁解する方もいますが、それでは「そんな環境でオンライン面接を受けようとしているのか」と思われてしまいます。
画面上に映る顔の印象にも気を配り、照明を当てて明るくすると良いですね。音質も事前にチェックしましょう。また、雑然とした部屋が映り込むのは避け、バーチャル背景を使用したり、ぼかし機能を使ったりしましょう。
ーシニア世代が面接で注意すべき点はありますか。
意気込みが強い人ほど、面接官が話している途中で遮って答えてしまう傾向があります。落ち着きがない印象を与えかねません。
また、話しながら自分の世界に入ってしまう方、喋りすぎてしまう方も時折見受けられます。自分の実績や知識をアピールしすぎず、採用担当者の質問に耳を傾け、意図を理解して答えるようにしましょう。
ーこれまでに面接した中で、印象的なシニア求職者について教えてください。
とある行政OBの面接は強く印象に残っています。過去に非常に大きな仕事に関わった方で、言葉に重みがあり、圧倒的なエネルギーを感じました。深い印象を与える要因は「自信」だったのではと感じています。
この事例から学ぶべきは、過去の経験を振り返ることの大切さ。どんな方でも、職業人として生きてきた歴史があるはずです。履歴書や職務経歴書を作成する際には、これまでの人生を書き出し、整理しましょう。きっと、自信につながる経験やスキルが見つかります。
それを元に、履歴書・職務経歴書を徹底的に作り込むのです。アピールしたい経験がたくさんある方も、3つ程度に絞り込み、A4用紙2枚程度にまとめると良いでしょう。
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50代以降の転職者へのメッセージ

ー50代以降で転職を考えている方へ、アドバイスやメッセージをお願いします。
50代以降の転職は、人生の裁量権を取り戻すチャンス です。
これまでの経験を活かしながら、無理なく続けられる仕事を選ぶ ことが成功の鍵。収入だけでなく、どれだけ自由に働けるかを考えながら、より充実した人生をデザインしてください。