体験談|50代の転職はみじめ?1年半も転職に苦労したCさんが語る現実

50代で転職に悩む人は少なくありません。希望する条件での転職先がなかなか見つからず、「50代からの転職はみじめだ」と感じている方もいるでしょう。

今回は、大手銀行に31年間勤めた後、50代で転職を決意するも、1年半転職先が見つからず苦労したと語るCさんに、50代の転職活動で直面する現実について伺いました。

Cさんのプロフィール:

大手銀行で31年間勤務し、海外で支店長として活躍。55歳でとある業界の商社のCFOに転職するも、経営方針の違いから辞任。その後、複数企業で働いた後、60歳で医療系企業の経営サポートの仕事を受託したことをきっかけに独立。現在は自ら高齢者ビジネスを起業する傍ら、 中堅・中小企業の経営者に向けて、幅広い業種の成長戦略立案やアドバイスを行っている。

50代で転職を決意した理由

―これまでのご経歴を教えていただけますでしょうか。

私は大手銀行に31年間勤務し、その間に海外で支店長など管理職も務めました。55歳を過ぎた頃に、ある業界の商社にCFO(最高財務責任者)として出向しましたが、出向先の社長と意見が合わず、銀行から出向している身でもあり、迷惑をかけられないということで辞任することにしました。

再び銀行経由で別の上場会社に出向しましたが、その会社はオーナー会社で、経営者の独特の仕事の進め方にやりづらさを感じたため、本格的に転職活動をすることを決意しました。

しかし、当時はコロナ感染症拡大の時期、かつ私の年齢は57、8歳ということもあり、求人がなかなか見つかりませんでした。

仕事が見つからない時期が1年半も続いたのですが、この間に「やりたいことは何だろう」「起業という選択肢も視野に入れよう」と考えるようになりました。

しかし、起業するといっても、生活のために十分な収入を確保する必要があったので、「副業ができる会社に入社しよう」と考え、給与は半分ほどに減りましたが、ご縁があったM&A仲介会社に入社することにして、起業の準備に取り掛かります。

M&Aの会社に入社し、副業ができるようになってからは、業務委託として、ベンチャー企業のCFOの業務を請け負ったりなど、起業に向けていろいろはじめましたね。

本業と副業を両立しながら独立のチャンスを模索する中で、医療業界の経営者から「銀行出身者で管理業務を立て直してくれる人材を求めている」とお仕事をいただき、収入が確保できたのを機に自分の事業を本格的に起業することになります。ちょうどその頃、還暦を迎えたタイミングでしたね。

―転職しようと思った最初のきっかけは出向先のオーナー会社での経験だったんですね。

はい、オーナー会社の中に入って溶け込むというのは、容易ではないと痛感しました。銀行員時代、そのオーナー会社はお客さんという立場で良好な関係を構築できていたんですが、実際に社員として入ってみるとガラッと立場が変わりましたね。

例えば会議で意見を出しても、オーナーの意に沿わないと大勢の前で非難されたりします。会社を背負っているという緊張感のオーナーからみると大企業出身者の仕事ぶりは心理的に受け入れがたいものがあるのでしょうね。あまりの反応に辛い思いをする日々が続きました。

出向先の環境が合わないとはいえ、元の銀行に戻ることはできません。当時は従業員が55歳頃になると、他の会社への出向の話が出るのですが、基本的に「片道」です。二度、銀行に斡旋してもらったのでもうさすがに次は無理だと思いました。

50代の転職活動で感じたみじめな思い

ー転職活動はどのように始められたのですか?

転職活動時は「幹部・部長職・経営者募集」と謳うエグゼクティブ向けの転職エージェントに登録しました。

登録後はオファーの数は多くはないものの、良い条件のものもあり、「意外とスムーズに転職できるかもしれない」と期待が膨らみました。

ーそこからなぜ苦労することになったのでしょうか?

転職活動がうまくいかなかった原因は自分の意識の中にあったなと、今振り返ると思います。

「これまで長年銀行で働いて、管理職としても活躍してきたんだぞ」という自己評価と、送られてくるオファーの会社の規模や仕事内容、待遇とのギャップに苦しみました。「もっといい求人があるんじゃないか」、「まだ見つけていないだけだろう」と、良い条件の求人があっても見送ることが多かったんですね。

自分のスキルや経験を客観的に見ても「自分は他社でも通用する」と思っていましたから。

例えば、エージェントに登録した後に、上場企業の執行役員のポジションでのオファーが来ましたが、そこで即決せずに「ちょっと考えます」と返答してしまいました。

そして翌日、そのオファーをいただいた会社に「よろしくお願いします」と返事をした時には、その企業は他の候補者にオファーを出し、その方に内定が決まっていたのです。

その後も数件オファーがあり、気持ちを切り替えて応募しましたが、選考に進んでも、途中で断られてしまうことが続きました。次第にコロナ感染症の影響で求人は減っていき、状況はさらに厳しくなっていきました。

ー転職活動が長期化していく中、どのような心境でしたか?

ネットや書籍には、「転職活動で売り込むには、自分のできることを棚卸しして、自分が持つスキル、価値を見直して..」といった内容がたくさん書かれていますが、正直「そんなことはわかっている」と感じていました。

世に出ているノウハウ通りに自分を客観的にみようとしても、「自分にはもっと価値があるんじゃないか」と思っていましたね。どうしても自分を冷徹に見つめるのは難しく、そのギャップのため転職活動がうまくいかないんです。

転職できない状況が続くにつれて、起業・独立という選択肢も検討するようになりました。

ー転職期間が長引く中で、どのような対策をされましたか?

転職当初は、上場企業や有名企業を軸として転職先を探していましたが、軸を変えてベンチャー企業を中心に仕事を探しました。

ただ、スタートアップ、ベンチャー企業には資金が十分でないことも多く、私の求める給与水準では雇えないと言われ、内定にはなかなか至りませんでした。

若い人が立ち上げている会社であれば、私のような年齢の社員も必要だろうと考えていましたが、少し世間知らずだったのかもしれません。

転職活動が1年半続く中で、あらゆる面で妥協しなければならない状況に追い込まれました。しかし、それを乗り越えようと、自分の本当にやりたいことや、それを実現するまでの条件等を必死に考え直した結果、ようやく転職への道がつながりました。

つまり給与は減っても、「副業」可能な仕事に転職し、「副業」で起業の準備をするという道でした。

50代での転職がみじめと感じる原因とは

ー転職活動を振り返り、50代の転職がみじめ、厳しいと感じる理由は何だと思いますか?

自分の中での評価や勤めている企業内での評価と、実際の転職市場での評価のギャップが大きいことが、転職活動を難しくしていると私は思います。

50代で役職がピークに達したところから、いざ転職市場に出るとその評価が一気に下がってしまう。そのギャップを受け入れるのは、つらかったですね。「自分はこれほど価値がない人間だったのか…」とショックでした。

ー周りの50代から転職した人で、採用がすぐ決まる人はいましたか?

エンジニアや経理などの専門職は50代でも転職できている人が多いと思います。

一方で、私のような銀行の管理職は厳しいですね。銀行出身で金融の知識はあると言っても、企業側は管理者ではなく会計処理や決算書を作成できる「実務で動ける方」を求めているためです。

そのような背景から、私と同じような境遇の同僚も、転職後は畑違いの部署や職種に就く方も多いですね。

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50代で転職するには妥協や割り切りも必要

ー最終的に転職できた理由は何だと思いますか?

50代で転職するには、仕事内容や待遇などに妥協する必要があると思います。私の場合、転職活動の長期化を通じて、副業や独立起業を意識したことで、

  • 副業では自分が本当にやりたいこと(私の場合、社会貢献型のスタートアップ)に近づくような仕事を見つけ、起業の準備をする
  • 副業だけでは収入が足りないので、転職活動では収入を補うための本業を見つける

と割り切ったことで、諸々条件にも折り合いをつけることができました。

ー今振り返ると、どのタイミングで転職を検討すれば良いと思いますか?

これは実際には難しいことでしたが、今振り返ると市場のニーズと自分の能力のピークを考えるとやはり50代前半までが勝負だったかな、と思います。

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ー50代が転職活動をする場合、いつ、どのような準備を始めるべきだと考えていますか?

「ポジション的にピークだな」と感じたら、転職を考えるとよいと思います。ただ、私のように長年勤務の末に一定の役職につけたというような成功体験をもつ人が転職エージェントに駆け込むと、先ほど説明したような転職市場とのギャップにショックを受けることもあると思います。

それでも、次のキャリアに向かってできることを洗い出すべきですね。例えば、取得できる資格は取っておくことをおすすめします。年齢を重ねると暗記力や体力は55歳と60歳では大きく変わるので、この5年間をどう過ごすかが重要だと思います。

50代以降のキャリアは「自分のやりたいことを明確に」

ー最後に、50代で転職活動を検討されている方や、新たなキャリアを選択しようとしている方へのアドバイスをお願いします

これから転職活動を検討される50代の方は、まずは人生観や価値観を見つめ直し、「自分は何がしたいのか?」を考えてみることをおすすめします。

私の場合、現在の収入は銀行時代やその後の上場企業幹部時代と比べれば間違いなく下がっていますが、先ほど述べたような「副業」での準備期間を経て高齢者ビジネスの起業にこぎつけることができ自分のやりたいことをやれている今の状態をありがたいと思っています。

誰かの顔色をうかがいながら仕事をするということはなくなりました。事業がうまくいくかどうかはさておき、自分の信念に逆らわず「うまくいくと信じて取り組んでいる状態」は精神的にも良いと思います。

また、転職活動で困ったときに相談できるような人間関係を構築しておくことも重要ですね。

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まとめ

今回は、50代での転職に苦労して独立を決断したCさんのエピソードを紹介しました。

Cさんの事例が示すように、50代での転職では、キャリアで築いた評価と転職市場での評価とのギャップに直面し、転職先が見つからないことは少なくありません。そんなときは、自分の人生観や価値観を振り返り、「自分のやりたいことを見つめ直すことが大切」だとCさんは言います。

これまで培ってきた知見やスキルを活かして、独立という新たなキャリアに挑戦するのも一つの手です。独立を検討されている方は「独立伴走アカデミー」の利用もおすすめです。

独立伴走アカデミーでは、豊富な実務経験を持つ50代~60代への独立支援実績があり、独立の一歩を踏み出すための講義や個別面談を提供しています。

「転職活動において相談できる人の存在は重要」とCさんも言われていました。信頼できる専門家に相談できる独立伴走アカデミーのようなサービスは、精神的な支えにもなるでしょう。

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