55歳役職定年後のPさんの転職体験談「現実は厳しい」

55歳で役職定年を迎える企業が多い中、「役職なしの働き方に耐えられるのか」「転職は可能なのか」と不安を抱える方も少なくありません。

今回は、課長職として活躍した後役職定年を迎えて退職。転職先で思わぬ展開に見舞われ、現在も転職活動を継続するPさんにお話を伺いました。

Pさんのプロフィール
大学卒業後化学薬品メーカーA社に入社し、課長として製造部や営業部などを経験する。55歳で役職定年を迎え役職なしで働いたのち、退職を選択。スカウトを受けて転職したB社では、所属していた部門が解散。現在は転職活動を継続しつつ、個人事業主として起業の準備も行っている。

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55歳になると当然のように役職定年。課長から「役職なし」に

ーこれまでのご経歴について教えてください。

大学卒業後、化学薬品メーカーA社に勤務し、営業部に長く在籍しました。その後品質管理部や製造部を経験。製造部で課長に昇進し、営業部を経て品質管理部で役職定年を迎えました。

役職定年は55歳と決まっていて、1ヶ月前に通知されます。あとは周知の通りといった感じで、55歳を迎えると同時に役職がなくなりました。

しばらく勤務したのちにB社に転職したのですが、事情があってB社も退職。現在は再び転職活動をしながら、次のステージを考えているところです。

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昔の部下が上司に……役職定年を迎えたときの複雑な心境

ー役職定年になり「課長」という肩書が外れたときには、どのような心境でしたか?

複雑な気持ちでした。役職定年のときに働いていた品質管理部の課長は、私の営業部時代の部下。つまり、元部下だった上司の下につくことになったわけです。

業務について色々と教えてもらう必要もありましたが、全く知らない仕事ではなかったため、スムーズに取り組めたように思います。また、その方との関係性にも問題はありませんでした。

ですから、すぐに会社を辞めるという気持ちにまではなりませんでした。でも、心の端の方では何か引っかかるものがありましたね。

ー役職がなくなったことで、仕事や会社に対する思いが変わったのでしょうか。

役職があってもなくても、仕事内容は同じです。ただ、会社からの評価が低かったことを実感して残念な気持ちになったということは、正直ありました。

私は役職定年によって完全に肩書きが外れたのですが、管理職の中には、役職定年後にも参与など何らかの肩書きが残る人も結構いたのです。営業の中には私より成績が悪かった人が課長職に残っていた例もありました。

所属部門によって対応が異なっていたことを知り、「役職の決定フローが不透明なのでは」と、納得いかない思いが残りました。

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収入は2〜3割減。「こんなに減らされるのか」とショックを受けた

ー役職定年後、給与やボーナス面ではどのような変化がありましたか?

まず、数万円程度の課長手当がなくなりました。給与はピーク時の7〜8割程度になり、年額にして百数十万円は減っています。また、役職がなくなったことでボーナスも減額されました。

課長時代までは、ベースアップの時期に給与交渉の機会がありましたが、役職定年によってそれも関係なくなってしまいました。

ーご家族の反応や生活への影響はいかがでしたか。

私は仕事のことを家で話すタイプではないので、役職定年について家族から何か言われることはありませんでした。

生活への影響としては、課長時代にマンションを購入していたため、住宅ローン返済の面で「気持ち的に痛いな」と感じたのは事実です。とはいえ、実際に生活が非常に苦しくなったわけではありません。生活への影響よりも、精神的に「こんなに減らされるんだ」という気持ちの方が大きかったですね。

ー経済面よりも、心理面での影響が大きかったということですね。

その通りです。会社から一切評価してもらえないというのはつらいものがあります。

ただ、私はそれが原因で仕事が適当になるようなタイプではないので、役職定年後も仕事への姿勢は変わりませんでした。 

結局、その仕事が好きかどうかが大事だと思うのです。私の場合は幸運にも嫌いな仕事ではなかったので、モチベーションが維持しやすかったのだと思います。

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「ここにいても仕方ないな」役職定年後に転職を決意

ーA社の退職を決断し、転職活動をスタートするに至った経緯をお話ください。

役職定年後に異動した製造部では、現場作業がメイン。当初聞いていた仕事内容とは異なっていました。自分の経験や能力を生かせず、居場所がないと感じたことがきっかけで、転職を意識し始めました。また再雇用で働いている先輩が、給与や待遇について色々と教えてくれました。

そんな時、現場作業中に怪我をしてしまったのです。上司であった部門長に配慮を求めましたが、十分なフォローが得られませんでした。そんな対応に不満を感じ、「ここにいても仕方ないかな」と退職を考えるようになったのです。

製造の課長も年下の後輩でよく知った仲でした。彼は私の怪我を心配していろいろと配慮してくれたり、休養を勧めたりしてくれました。でも部門長は退職の意思を伝えた際にも事情を理解せず、怪我をしているから今の仕事は出来ないと伝えたにもかかわらずに引き止めようとし、今の仕事を数カ月続けるよう依頼してきたのです。かえって退職への決意を固める要因となりました。課長がみかねて、直ぐに退職してもいいですよと言ってくれたので、有給をほんの少し取って退職する事にしました。

ー転職活動では、どのような媒体を使って何社ほど応募されたのですか。

LinkedInやビズリーチなど、有名な転職サイトに登録し、できるだけ細かくプロフィールを記載しました。

実際に転職が決まったのはLinkedIn経由です。自分の経歴とスキルを日本語・英語で記載していたところ、イギリスの転職エージェントからスカウトがありました。早速連絡を取り、紹介されたIT企業について話を聞きました。

ビデオ会議での面接で英語でのプレゼンテーションを3回行う予定でしたが、最終プレゼンテーションは免除に。結局、2回のプレゼンテーションで合格が決まりました。

前職よりも待遇が良く、好きな仕事内容であることが決め手。運良くすぐに転職できました。

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転職先は外資系企業。働きやすかったが、想定外の部門解散に

ー転職されたB社は、どのような企業だったのでしょうか。

アメリカに本社がある、IT関係の企業です。日本法人があるので国内のオフィスで働くのだと思っていたのですが、実態は異なっていました。確かに登記上は日本法人があるものの、オフィス自体はワンルームマンション程度の広さで、事務担当者が1人いるだけという状況だったのです。

私自身は在宅での勤務となり、上司はロンドン在住のイギリス人で、同僚たちもアメリカ、ヨーロッパ、インド、マレーシア、シンガポールなど、世界各地に散らばっていました。働き方は完全在宅ワークで、コミュニケーションは全てビデオ会議でとっていました。

形式上は日本の会社に所属していて給与も日本から支払われているのですが、実質的にはグローバル企業の一員として働いているような形でした。

ー外資系企業だったのですね。働きやすさはいかがでしたか。

もちろん、日本企業と異なる点はあります。例えば教育体制については、日本企業ほど手厚くない印象を受けましたが、自分から望めば、様々な学習機会が用意されている環境でした。

一方、営業担当者の中には業界知識が十分でない人もいるなど、少し物足りない部分も感じました。

特に印象的なのは時間の自由度です。例えば病院に行きたい時など、日本企業では上司の許可を得る必要がありますが、B社では自分の判断で時間調整ができました。

外出中でもビデオ会議やチャットで連絡が来る可能性があったので、予定表には外出予定をきちんと記入しておく必要はありましたが、日本企業と比べて柔軟に時間が使えました。

全体的にはとても働きやすい環境。仕事内容自体も自分に合っていて、特に嫌だと思うことはありませんでした。また給与も前職よりも大幅にアップしましたので、そこは満足していました。

その状況から、なぜ再び転職活動をすることになったのでしょうか。

残念なことに、所属していた部門が解散することになってしまったのです。再就職してから、1年ちょっとでの出来事です。

私はプリセールス担当として、主に製品のプレゼンテーションや、見込み客からの技術的な質問への対応などを担当していたのですが、徐々に様子が変化していたのです。具体的には、一緒に仕事をしていた営業担当者2名がいなくなり、それに伴って仕事量も減ってきました。既存のお客様からの問い合わせも少なくなってきて……。

そういった状況の中で、会社側から退職を促されているような雰囲気を強く感じるようになってきて、辞めることを決めました。

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100社以上応募しても決まらない。2度目の転職で直面した厳しい現実

ーそこで、転職活動を再び始められたということなのですね。

はい。B社退社後に転職活動を再開し、現在も継続中です。

実は、昨年夏にある企業から内定を得ることができました。他にやり取りしていた企業をすべて断り、出社開始日まで取り決めていたのですが、入社直前になって内定取り消しになってしまいました。「本国からの指示で増員ができなくなった」というのが理由のようです。

ー現時点では、転職の進捗状況はいかがですか。

化学薬品の法規関連業務や営業など、これまでの経験を活かせる企業と出会えたらと思っていますが、現実は厳しいです。

100社以上は応募していますが、書類通過率は数%程度。面接が受けられても、その先にはなかなか進めません。私が希望しているのは経験が重んじられる職種ですが、それでも同じ能力なら若い人を採用する傾向があるのでしょう。

先方からお話をいただくこともあるものの、給与が希望より低かったり遠方への転勤があったりと、希望条件と合致せずにお断りすることが多いです。

中には「タクシー運転手」や「警備員」など、全く希望条件に入れていない職種でのオファーが届くこともあり、煩わしさを感じます。AIが自動的に求人情報を送ってきているために、ミスマッチが多いのかもしれません。

そのような中でも、エージェントの方からのご紹介は比較的企業とのマッチング精度が高く、企業に直接聞きにくいことも確認できるのがメリットだと感じています。

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「自分のためにも会社のためにもなる仕事を」独立も視野に、次のステージを探る

ー今後のキャリアはどのように構築していきたいと思われますか。

基本的に、「生活のために、やりたくない仕事も我慢しよう」という考えはありません。

それよりも、自分のためにも会社のためにもなる仕事を選びたい。給料以上にお客様や会社の役に立つことや、自分のキャリアアップに繋がる仕事であることを重視しています。

異なる分野へのキャリアチェンジも視野に入れてはいますが、年齢的に難しいかもしれません。

並行して、個人事業主としての独立も考えています。スピーチ講師の経験があるので、今後はそちらの活動にも取り組みたいと思い、準備しているところです。

ーこれから役職定年を迎える方にアドバイスをお願いします。

前提として、役職定年などの通告が突然なのか、ある程度の余裕をもって伝えられるのかによって難易度はだいぶ違います。給与の変化や役職定年後のキャリアパスなどについては、会社から事前に十分な情報提供があることが理想ですね。心構えや準備がしやすいですから。

どちらにせよ、役職定年後のキャリアプランについては事前に十分に検討しておくことが大切。給与が減った場合の生活設計を立てておきましょう。もちろん、会社に貢献したいという気持ちがあれば、給与が下がっても働き続けるのも選択肢の一つです。

一方、転職を考えている場合は、すぐに転職が叶う可能性が高いのか、実際には難しいのかなど、早めに情報収集や準備を始めることをおすすめします。

ただ転職については後悔していませんし、転職して良かったと思っています。自分の実力がよく分かったのと、転職してから以前の会社のことや自分の現状などを俯瞰できるようになりました。

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まとめ

Pさんのケースからもわかるように、役職定年を迎えた後のキャリアには、給与ダウンや肩書きを失うことによる心理的な影響、転職の難しさなど、さまざまな課題があります。特に転職市場では、これまでの経験が思うように評価されず、希望する条件での仕事探しが難しいことも少なくありません。

とはいえ、役職定年後も自分の強みを活かし、新しい道を切り開くことは十分可能です。転職活動を続けて自分に合った仕事を探すのも一つの方法ですし、個人事業主として新しいチャレンジをする選択肢もあります。

役職定年は、キャリアの転換期でもあります。これから役職定年を迎える人は、今のうちに転職市場の現状を知り、自分の経験やスキルが活かせる場を考えておきましょう。また、転職にこだわらず、副業や起業といった選択肢も視野に入れることで、より自分らしいセカンドキャリアが実現できるかもしれません。

 

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