「役職定年になり、これから転職するべきか悩む」と、50代で役職定年を迎える人も少なくありません。
今回は、大手メーカーに34年間勤めた後、役職定年を受けて55歳で転職を決意したFさんにお話を伺いました。
Fさんは55歳の転職活動や副業探しでさまざま壁に直面し、自身の体験から「早いうちにニーズのあるスキルを身につける、あるいは人脈を少しでも広げておくべき」と言います。
Fさんの役職定年をした際の率直な心境や収入の変化、55歳からの転職や副業事情、役職定年を迎えるであろう方へのアドバイスなど、赤裸々に語っていただきました。
「役職定年でみじめな思いをしないための準備」について知りたい方はこちら▼
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大手メーカーに34年間勤務し、55歳で役職定年を迎える。役職定年後は仕事にやりがいを感じられず、退職を決意。転職活動中は140社に応募するも多くは不採用。最終的に知人の紹介で転職に成功するものの、60歳で再雇用され、給与は激減。現在は本業の傍ら、講師業を中心に副業を行う。
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メーカー業界で課長職を務めたのちに役職定年

Q. これまでのご経歴について教えてください
私は大学卒業後、メーカーに入社し34年間在籍しました。商品企画、宣伝、調査など、マーケティング業務を中心にやりましたね。そして55歳のときに役職定年となりました。
役職定年後は仕事にやりがいを感じず、限界を感じて退職を決意。1年ほど転職活動をして、結果的に知人の紹介で、悪くない待遇で転職することができました。
しかし、60歳の頃に転職先の会社で再雇用され、嘱託社員となり給料は激減。「55歳以降は厳しい事ばかりだな」と痛感しました。
再雇用後、待遇が激変したものの転職活動はせずに、収入が減った分は副業でカバーすることにしました。
副業サイトで70社ほどエントリーし、今契約させてもらっているのは7、8個です。講師業を中心に受託していますが、下がった年収分はまだ完全に補えていません。
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役職定年後に経験したみじめな思い

Q.役職定年前と後では具体的にどのように状況が変わりましたか?
ガラッと大きく変わったことが大きく2つあります。
1つ目は部下の人数です。グループマネージャーだった私のチームには7人ほど部下がいましたが、役職定年後はいなくなりましたね。
2つ目は仕事内容です。以前は日本市場のマーケティングを担当しており、やりがいを感じていました。しかし、役職定年後は、業務効率化の仕事など、自分にとってはやりがいを感じにくい仕事ばかりでした。
仕事なので、その気持ちを抑えながら頑張っていましたが、とても辛かったですね。
Q. 当時を振り返るとどのような心境でしたか?
「本当に参ったな」と悲観していました。役職定年は3ヶ月前くらいに急に知らされました。50代で家を買っていて、住宅ローンの残債も莫大にあったものですから余計にショックでしたね。
Q. 役職定年を受けて、その後転職を決意されたのでしょうか?
そうですね。役職定年を受けて55歳のときに、転職を決めました。しかし、55歳を過ぎてからの転職は厳しいだろうなと予想していました。
また、私ができるのはマーケティング領域なので。「自分が求めるマーケティングの求人は少ないだろう」と想像してましたが、予想通り、実際多くなかったですね
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Q. 他に役職定年の処遇を受けている方も同じ状況でしたか?
人それぞれでしたね。転職せずに残っていく人たちが多かったと思います。メーカーのマーケティング系の場合は、独立するというのは難しいのではないでしょうか。大学の先輩で一人だけ、本を出版したり、経営のコンサルティングをしたりしているケースもありますが、かなり特殊です。
ただ、技術系エンジニアの場合は、スキルを生かして独立する人も多かったです。自分の手で何かを作れたり、設計できたりする場合は、個人事業主や起業の選択肢もあると思います。
あとは、テレビ局や広告代理店で働いていた同世代が、転職ではなく独立した話を聞きました。現役のときからコネクションが広かったので、独立できたのかなと思います。
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役職定年後からの転職活動。厳しい状況に直面

Q.役職定年を受けて、転職活動を決意されますが、そこからどのような苦労がありましたか?
想像通り、転職は結構厳しいものでした。応募数は140ほどですね。ふたを開ければ「不採用」の結果通知ばかり。途中で数えるのが嫌になりましたね。
マーケティング関連なら企業規模に関係なく、とにかくエントリーしました。ビズリーチ、リクルートエージェント、他の転職マッチングサイトを含め、6〜7社ぐらいのサイトに登録しながら進めていました。
転職エージェントも最初は親身になってくれるのですが、結局年齢が原因でうまく進まないんですよね。「これまでのスキルを活かせる会社はありませんか」と転職エージェントに聞いても「どこまで支援できるかわかりません。」と返答されました。
転職エージェントの立場的にも採用企業の要望を聞く必要がありますからね。若い人材が優先されるのでしょう。
いくつかスカウトも来ましたけど、面談に進んだのはゼロ。すべて書類審査で落とされました。「ヘッドハンターとして向こうからスカウトを送ってきているのになぜ?」と、驚きとショックを隠しきれませんでした。
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Q.転職活動を受けて、どのような心境でしたか?
転職活動の時はかなり疲れましたね。今はパソコン上でエントリーできるので、昔と比べたら楽かもしれません。それでもメンタルもエネルギーも相当消費しますね。
毎日転職サイトをチェックして、とにかくエントリーしていく。結果が来ても大体不採用なので、どんどん疲弊していきました。
Q. そのような状況を受けて、どのように改善しましたか?
あるタイミングで、相談に乗ってくれるエージェントの方がいて、転職活動の厳しい現状を素直に伝えてみたんです。
すると「今の会社に籍を置きながら副業を探す方が良いのではないか」とアドバイスも受け、そこから「副業を探してみよう」と方向性を変えました。
そんな中、運よく10年以上のお付き合いのある人とのご縁で、転職先が決まったんです。それも、前職と同じ給与をいただけたので、決して悪くない待遇でのオファーでした。
彼が懇意にしている会社が、ちょうどコーポレートブランディングの経験がある人を探しており、その知人が間に入って一度会食があり、その際に「ぜひうちに」となりました。
Q. 転職活動を経て、新しい会社に入社されていますが、状況はどう変化しましたか?
入社してみたら「思っていた状況と違う」という状況に直面しました。
入社前は、ある程度自分でリーダーシップを取れると思っていたのですが、実際は全然違いましたね。自分より一つ年上の上司の下に配属されましたが、その人が全てを牛耳っていたので、仕事はほとんど与えられませんでした。
「話が全然違う」と落胆しました。そういう状況もあり、転職活動は転職先に入社後も続けましたね。
もうすぐ62歳になりますが、転職はせず籍を置いたまま副業をしています。入社当時は前職と同じ額をもらっていましたが、60歳で再雇用嘱託になったときに減額され、最終的には入社時の3分の1にまで減りました。
勤務も週5日から週4日になり、実労働としては週1日してるかどうかぐらいです。
会社側は「どれだけ副業をやってもいいよ。」と言っているので、継続して副業をやっています。
定年が近くなると再雇用について考え、不安を感じる方も多いでしょう。再雇用は安定収入が得られる反面、給与の減少や社内での立場や役割の大きな変化があります。 「辞めたい」「屈辱的だ」といったシニアの方たちの声をメディアで耳にすることもあ[…]
Q. 副業はどのように探されたのですか?
複業クラウドを1番活用したと思います。あとは他の副業サイトにも登録しましたが、転職と同じように不採用になることの方が多いですね。
副業サイト以外にも、会社の人材募集ページに直接申し込みをして採用されたケースもあります。
今受けている副業の中でも安定的に仕事をもらえてるのは講師業が多いです。例えば、ある団体のマーケティング講座や、企業のセミナー講師です。
最近は、研修をアウトソースする会社が多いので、講師の需要があるみたいですね。
Q. 副業を見つける際に重要なこととは?
先方が求めるニーズにあったスキルやノウハウを持っているかが重要です。
副業の職種は、IT関係が圧倒的に多いです。「ホームページ作ってくれ」「デジタル運用してくれ」など。それから営業職も需要がありますね。マーケティング関係の領域は本当に数が少ないです。
ただ転職市場ほど、年齢を見ていないと感じました。社員として雇うよりも採用のハードルが低いのだと思います。
副業を受ける前に面談もありましたが、特にスキルや経験などに問題がなければ、基本採用するというスタンスが多かったです。
ですから、職務経歴書で何をアピールするかが大切です。常識かもしれませんが、問われていること、やってきたことをわかりやすく丁寧に記載することが採用につながるのではないでしょうか。

Q. 副業が見つかってから、どのような心境の変化がありましたか?
今は3件ぐらいの副業が安定的に稼働しているので、その分生活は楽になってきています。
やっと最近、副業の月収が30万とか40万を超えるようになってきました。とはいえ、残った住宅ローンが大きいので、依然としてまだ余裕はありません。
副業は増やしていきたいと思いますが、正直スケジュールがパンパンです。休みなく、土日も働いていて、「もうこれ以上無理だ」と思って、3つほど案件を辞めざるを得なくなったこともありました。
だから趣味の時間も諦めています。ずっと細々と続けていた英会話も、エクササイズも、テレビを見る時間も全然ありません。
とにかく、空き時間がないんです。採用されるのは嬉しいですが、それだけ時間を奪われてしまうので難しいところです。
とはいえ、安心はできません。副業は一度仕事が決まっても、固定的に仕事が来るわけじゃないので。毎日と言ったら大げさかもしれませんが、毎月の勝負ですよね。「今回もこのコマをとれるのか」の勝負になってくるので。だから、自営業みたいに気が休まらないことがあります。
あと副業はただ働きも多いと感じます。講義をしようと思うと準備が必要じゃないですか。プレゼンテーションを自分で作る場合は、膨大な時間がかかります。本を買って情報収集をしないといけないこともありますね。
会社員時代はやっぱりよかったなと実感しました。仮に、予習が必要でも勤務時間内だから給料はちゃんと出てますし、有給休暇もありますから。
今の場合、体調不良で突然穴をあけたら、この先どうなるのだろう。仕事も来なくなるかも、という心配、不安は常に付き纏います。
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役職定年前にしておくべき準備とは

Q.役職定年から転職での苦労を経験し、今だから言える、準備しておくべきこととは?
私は転職活動などに動き始めるのが遅かったのですが、今思うともっと早く動き出せばよかったと思います。
転職の可能性がある人には「早く動いた方が良い」と伝えたいですね。また「売れるキャリアや能力」を意識した方がいいと思います。
Q.これから役職定年を迎えるであろう方にメッセージをお願いします。
もしかしたら、ニーズのある能力を身につけるのが難しい方もいるかもしれません。そんな方は人脈づくりだけは大切にしてください。
ネットワークは馬鹿にできません。ピンチのときに、知人が助けてくれるケースはよくありますから。人とのご縁を大切にした方がいいと感じます。
ぜひ社内に限らず社外のネットワークも広げてください。特に異業種です。どんどん新しいビジネスが生まれており、トレンドに追いつくためにも、社外のネットワークを大切にすることをおすすめします。
また、ビジネスでの出会いを創出するようなマッチングサイトもありますが、何かしらのサービスの過度な勧誘には気をつけてください。
一つひとつの繋がりを大切にしながら、できる限りたくさん人脈を作ることで、未来の自分を助けてくれることになるでしょう。
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まとめ
Fさんの事例からもわかるように、役職定年は厳しい状況を受けて、みじめな思いをすることもあります。55歳以降の転職活動は厳しく、転職できても給与の大幅な減額、やりがいのある仕事を与えてもらえない状況に苦労することも多くあるでしょう。
そのような状況に備えて副業するのも一つの手です。副業は転職よりは、年齢よりもスキルやキャリアが重視されるため、50代後半以降でもチャレンジしやすいといえます。役職定年の可能性がある場合は、自分のスキルやノウハウが転職や副業のニーズとマッチするかを擦り合わせておくことが大切です。