50歳で住宅ローンを組める?審査のポイントや注意点まで解説

「50歳でも住宅ローンや団信の審査に通る?」
「50歳から住宅ローンを組む場合、借入額や返済期間はどれくらいが良いの?」
「退職金を住宅ローンの返済に充てるべき?」

このように、50歳から住宅ローンを利用しようと考えると、さまざまな疑問が出てくるのではないでしょうか。

50歳というと、老後の生活を少しずつイメージし始める時期でもあり、このタイミングで、老後のライフスタイルに合った家を購入する人も多くなっています。

50歳で住宅ローンを検討する場合は、審査に通るための要素をよく理解しつつ、無理のない返済計画を立てることが大切です。

この記事では、50歳で住宅ローンを組むケースについて、さまざまな角度から解説しますので、ぜひ参考にしてください。

この記事の執筆者
伊藤久実

伊藤FP事務所代表。ファイナンシャルプランナー(AFP)兼ライター。大学卒業後、証券会社・保険コンサルタントを経て事務所代表兼フリーライターとして活動を始める。家計の見直しから税金・保険・資産運用まで、人生の役に立つ記事を幅広く執筆。

50歳でも住宅ローンを組める

50歳で住宅ローンを組めるのか不安な人もいるかと思いますが、結論から言うと、50歳でも問題なく住宅ローンを利用できます。

50歳はまだまだ働きざかりの年代のため、年齢が理由で住宅ローンが組めないということはありません。

また、50歳前後は年収も高く、勤続年数も長いことから、若い人たちに比べて有利な面もあります。

返済面を考えても、50歳での住宅ローンは遅すぎることはありません。近年は、元気な間はいつまでも働きたいという人が増えており、働くシニアの割合は増加しています。

令和6年版 高齢社会白書」によると、労働力人口比率(人口に占める労働力人口の割合)は以下のようになっており、65~69歳では約半分の人、70~74歳では約3割強の人が、現役で働いているという実態があります。

年齢労働人口比率
65歳~69歳53.3%
70歳~74歳34.5%
75歳以上11.5%

50歳から70歳まで働くと仮定すると、約20年は働きながら住宅ローンを返済できる計算です。

このような状況を踏まえると、50歳は住宅ローンを組むのに遅すぎる年齢ではないことがわかります。

また、2024年の日本人の平均寿命は男性が81.05歳、女性が87.09歳となっており、最近は「人生100年時代」という言葉をよく耳にするようになりました。

50歳以降のライフスタイルに合わせた快適な住宅を購入することは、30年、40年と続く第二の人生を充実したものにする、価値ある投資ともいえるでしょう。

住宅を購入する人の平均年齢はどれくらい?

住宅を購入する世帯の平均年齢は、「住宅市場動向調査報告書(令和4年度)」によると、以下のようになっています。

住宅の種類世帯主の平均年齢(令和4年)
注文住宅(新築)41.1歳
注文住宅(建て替え)59.8歳
分譲戸建住宅39.5歳
分譲集合住宅44.8歳
既存(中古)戸建住宅45.8歳
既存(中古)集合住宅46.3歳
リフォーム住宅60.2歳

新築住宅や分譲戸建て住宅は、比較的若い人が購入しています。

注文住宅(建て替え)やリフォーム住宅の平均年齢は約60歳、分譲集合住宅や中古の戸建・集合住宅は45歳前後となっています。

50歳で住宅ローンを組む場合に理解しておきたいポイント

50歳で住宅ローンを検討する場合、50歳ならではの疑問や不安を感じる人も多いでしょう。ここでは、住宅ローンについて理解しておきたいポイントを解説します。

50歳の住宅ローンに年齢制限はある?

50歳で住宅ローンを借りる場合、年齢は特に問題ありません。住宅ローンにおいて、年齢制限が設けられているのは、以下の2点です。

  • 申し込み時の年齢
  • 完済時の年齢

多くの金融機関では、申込時の年齢制限を65歳~70歳くらいに設定しているため、50歳でも問題なく申し込めます。

50歳で住宅ローンを借りる場合、借入期間は何年まで?

50歳で住宅ローンを借りる場合、完済時の年齢を80歳というケースが多いため、借入期間は最長で30年と考えられます。

ただ、後述しますが、完済年齢をできるだけ低く抑えることで、住宅ローン審査に通る可能性が高くなります。

できれば年金受給開始までに完済できるような計画を立てるようにしましょう。

50歳から住宅ローンを組む際には団信に入れる?

住宅ローンに申し込む場合は、団体信用生命保険(団信)も同時に申し込むケースが一般的です。

住宅ローンの団体信用生命保険とは、住宅ローンの契約者が死亡したり、高度障害になった場合に、住宅ローン残高分の保険金が支払われる保険です。団信に加入していれば、万が一の時でも、残された人の返済義務がなくなります。

団体信用保険の加入年齢の上限は、金融機関によって異なりますが、50歳であればどの団信でも申し込めるため安心してください。

50歳で持病があっても団信に申し込める?

50歳で持病がある場合は、通常の団信に申し込めないことがありますが、金融機関の中には、持病がある人向けの「ワイド団信」を用意しているところもあります。

一般的な団信の告知内容は、主に以下の3点です。

  • 過去3ヶ月以内の、医師の投薬や治療の有無と内容
  • 過去3年以内の、保険会社が指定する病気(告知書に記載)での治療や投薬の有無と内容
  • 障害があるか

通常の団信に入れるかどうか不安な人は、ワイド団信に申し込める住宅ローンを選びましょう。ただし、告知内容によっては、ワイド団信に加入できないこともあります。

団信の加入が義務ではない住宅ローンもある

独立行政法人住宅金融支援機構が民間の金融機関と提携して提供している、全期間固定型の住宅ローン「フラット35」は、原則として、団信の加入は任意です。

持病などの理由で団信に入れず、一般的な住宅ローンを契約できなかったという人も、フラット35であれば団信が不要なため住宅ローンを申し込めます。

フラット35で団信に加入しない場合は、適用金利が0.2%ほど低くなるため、毎月の返済額を低く抑えられます。

団信に加入しない場合は対策が必要

フラット35は団信の加入が義務ではないため、健康状態に不安がある人でも住宅ローンを申し込めます。

しかし、団信のような保険を契約しなかった場合、契約者に万が一のことがあると家族に返済義務が残ります。

返済が滞ってしまった場合は、最終的に自宅が差し押さえられてしまう可能性があるため注意が必要です。

潤沢な貯蓄があったり、まとまった金額がおりる生命保険にすでに加入している場合は問題ありません。

しかし、いずれの対策もできていない場合で、団信なしの住宅ローンを組む場合は、持病がある人でも加入しやすい「緩和型の生命保険」や「緩和型の収入補償保険」を別途検討することをおすすめします。

住宅ローン審査は50歳でも通る?審査通過のコツも紹介

50歳から住宅ローンを検討するとき、最も不安を感じるのが「住宅ローンの審査に通るのか」ということではないでしょうか。

結論からいうと、50歳だから不利になるということはありません。住宅ローンの審査項目できちんと評価されれば、問題なく住宅ローンを利用できます。

住宅ローン審査の項目とおさえるべきポイント

「令和5年度 民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書(国土交通省 住宅局)」によると、住宅ローンにおいて、多くの金融機関が審査項目としているのは、以下の8項目です。

  • 完済時年齢
  • 健康状態
  • 借入時年齢
  • 担保評価
  • 勤続年数
  • 連帯保証
  • 返済負担率
  • 年収

主なものを解説します。

完済時年齢

完済時の年齢は、多くの金融機関がチェックしている項目です。

多くの場合、80歳までに完済すれば良いとされてはいるものの、借入期間を短くする方が、審査に通りやすくなります。

資金計画をしっかりとたてて、できれば年金受給開始までに完済する計画を立てるようにしましょう。

健康状態

民間の金融機関は、団信の加入が義務になっているところがほとんどです。

健康面に不安がある人は、「ワイド団信」のように、引き受け基準が緩い団信がある金融機関を選びましょう。

フラット35であれば、団信に加入しなくても住宅ローンを申し込めます。

担保評価

住宅ローンを借りる際の担保は、購入する住宅そのものです。万が一ローン返済が滞った場合は、金融機関は住宅を売却することで、貸したお金を回収する仕組みです。

新築の住宅の場合、実際の価格と資産評価額のつり合いがとれているため、希望の金額を借りやすいという特徴があります。

逆に、中古物件の場合は、担保としての資産価値が低い場合が多く、希望額を借りれないことがあります。

中古住宅を購入する場合は、頭金を多く用意して借入額を減らすようにしましょう。

勤続年数

勤続年数や年収は、30代、40代よりも高くなるケースが多いため、50歳で住宅ローンを申し込む場合、評価されやすい項目といえます。

ただし、早期退職をしたり転職した直後は、今までの勤続年数がリセットされてしまうため、審査に通りにくくなります。

早期退職を考えている人は、退職前に住宅ローンを申し込むようにしましょう。

返済負担率

住宅ローンの返済負担率とは、「年間収入に占める、年間の返済額の割合」のことをいいます。

返済負担率が少なければ少ないほど、余裕を持って返済できることになるため、審査における評価も高くなります。

逆に、返済負担率が高いと、金融機関は「将来きちんと返済できるのか」という不安を感じるため、融資が下りにくくなります。

返済負担率を下げる、つまり年間の返済額を減らす方法としては、以下の2つがあります。

  • 頭金を多くして総借入額を減らすことで、年間の返済額を減らす
  • 借入期間を長くして、年間の返済額を減らす

「住宅ローンの審査を通過するための返済負担率」の目安は、手取りベースで25%〜35%以下といわれています。

50歳から住宅ローンを組む場合、60歳以降は再雇用などで給与が減るケースも多いため、余裕をもった返済プランを立てるようにしましょう。

50歳からの住宅ローンではいくら借りるのが最適?シミュレーションを紹介

50歳から住宅ローンを検討する場合、将来の収入減を見すえて、毎月の返済額を考えましょう。

ここでは、2つのシミュレーションについて紹介しますので、参考にしてください。

50歳からの借入で3,000万円を返済する場合

50歳から3,000万円の住宅ローンを借りる場合、返済期間と毎月の返済額の関係は、以下のようになっています。

金利返済期間毎月の返済額総返済額
0.5 %(変動金利を想定)10年25 万6,354円3,076万2480円
15年17万3,029円3,114万5,220円
20年13万1,380円3,153万1,200円
1.5%(全期間固定を想定)10年26万9,374円3,232万4,880円
15年18万6,222円3,351万9,960円
20年14万4,763円3,474万3,120円

(元利均等返済で計算)

変動金利を選択した場合は、金利が半年ごとに見直されるため、将来返済額が上がるリスクがあります。

ただし、逆に金利が下がった場合は、返済額が少なくなるというメリットもあります。

全期間固定金利を選んだ場合は、毎月の返済額は最後まで変わらないものの、変動金利に比べると高い利息を支払う必要があります。

頭金を多くすることで、金利を下げられる金融機関もありますので、複数の住宅ローンの条件を比較して、金融機関を選ぶようにしましょう。

50歳からの借入で2,000万円を返済する場合

50歳から2000万円の住宅ローンを借りる場合、返済期間と返済額の関係は、以下のようになります。

金利返済期間毎月の返済額総返済額
0.5 %(変動金利を想定)10年17万902円2,050万8,240円
15年11万5,352円2,076万3,360円
20年8万7,586円2,102万640円
1.5%(全期間固定を想定)10年17万9,582円2,154万9,840円
15年12万4,148円2,234万6,640円
20年9万6,509円2,316万2,160円

3,000万円を借りる時に比べて、毎月の返済額は大きく抑えられます。

住宅ローンを組む際は、ゆとりを持って返済できる額を借りるようにしましょう。

50歳から住宅ローンで考えるべきポイント

50歳から住宅ローンを組むときに、どのような点に注意すれば良いのかを解説します。

老後に必要な資金を把握する

50歳は、老後に向けての資金を貯めていく時期でもあります。

「住宅ローンの返済が精一杯で、貯蓄はできていない」という状態が続くと、老後の資金を十分に用意できず、老後の生活が立ち行かなくなる可能性があります。

総務省統計局が発表している「家計調査報告(2023年)」によると、65歳以降にかかる生活費と、65歳以降にもらえる年金額は、以下のようになっています。

65歳から平均寿命までにかかる生活費65歳から平均寿命までにもらえる年金額不足額
単身世帯(男性)約3,030万円約2,144万円約886万円
単身世帯(女性)約4,165万円約2,948万円約1,217万円
二人以上世帯約6,779万円約4,280万円約2,499万円

(二人以上世帯は、妻は専業主婦で、夫婦ともに85歳まで生きることを想定)

これらの数字と、「退職金額」や「貯蓄額」を考慮して、老後の資金計画を考える必要があります。

また、これらのデータは通常の生活を元にしたものです。

ゆとりある老後生活を送りたい場合は、より多くの老後資金が必要になります。

50歳から住宅ローンを組む場合は、返済しながら老後資金が準備できるかという点もしっかり考慮するようにしましょう。

住宅ローン返済に退職金を使うかどうかは慎重に

上記で説明したように、今の日本では、老後の生活は年金だけでは足りず、退職金を充当したり、今までの貯蓄を充てたりして老後資金を補う必要があります。

住宅ローン返済に退職金を使った場合、老後資金が足りなくなる可能性があるため、住宅ローン返済に退職金を充当するかどうかは、慎重に考えるようにしましょう。

50歳からの住宅ローンで返済負担を減らす方法

50歳からの住宅ローンを検討しているけれど、返済負担が大きくなるので迷っているという人もいるでしょう。

このような問題を解決し、少ない返済負担で住宅ローンを組む方法として「親子リレーローン」や「リバースモーゲージを使った住宅ローン」がありますので紹介します。

親子リレーローン

親子リレーローンとは、親子など親族同士で同居することを前提にローンを組み、親子二世代に渡って返済していくことをいいます。

まず、中高年の親と成人した子供の二人が融資を受け、最初は親がローンを返済します。

そして、親が定年退職したタイミングで、返済を子供に引き継ぐ仕組みです。

親子二代に渡って返済するため、「契約者が80歳までに完済する」という条件は不要になり、35年、40年という長期の住宅ローンを組めることがメリットです。

ただし、親子リレーローンには以下のようなデメリットがあります。

  • 贈与や相続のトラブルが発生しやすい
  • 子供が未婚のときにローンを組むと、同居についてもめる場合がある
  • 親が早くに亡くなってもローンは免除されない

親子リレーローンの場合、団信に加入するのは子供のみです。

親が早くに亡くなった場合、想定より早く子供がローン返済を始めなければならないため、負担が大きくなります。

また、子供に兄弟がいる場合、相続の時にトラブルが発生することもあります。

親子ローンにはこのようなデメリットもあるため、仕組みをよく理解して慎重に検討するようにしましょう。

リバースモーゲージを利用した住宅ローン

リバースモーゲージを利用した住宅ローンは、まず自宅を担保にして金融機関からローンを借り、生前は利息だけを支払います。

そして、夫婦が亡くなった時に金融機関が自宅を売却し、元金を一括返済する仕組みの住宅ローンです。

一般的な住宅ローンでは、元本+利息を毎月返済します。

それに対して、リバースモーゲージの住宅ローンでは、生きている間に返済するのは利息だけのため、毎月の返済額を大幅に抑えられるというメリットがあります。

ただし、リバースモーゲージの住宅ローンを利用した場合、亡くなるまで自宅に住むことはできるものの、自宅の権利は金融機関のものになり、自由に現金化できません。

リバースモーゲージの住宅ローンは、通常の住宅ローンと大きな違いがありますので、慎重に検討するようにしましょう。

定年以降も働く場合は返済負担を減らせる

50歳から定年の60歳、もしくは65歳まで住宅ローンを組む場合、返済期間が10年もしくは15年と短くなるため、毎月の返済負担が大きくなります。

50歳で住宅ローンを組むときに、毎月の返済額を抑えたいという人は、返済期間を長くして、定年後も何らかの形で働くことを考えましょう。

働いて収入を得ることで、「社会の役に立っている」と実感できますし、金銭的な自由度も高くなるため、精神的にもゆとりが出て、生き生きと生活できます。

65歳以降の働き方としては、パートとして働いたり、今までの経験を活かして個人事業主として独立する方法もあります。

個人事業主の場合は、家庭の事情や体調に合わせて、自分のペースで働けます。

また、就職先を見つけにくくなる70歳以降でも、個人事業主であれば自分の意志でいつまでも働き続けることができます。

50歳から住宅ローンを検討する人は、定年後の働き方も考えた上で、借入期間を検討するようにしましょう。

まとめ

このように、50歳でも問題なく住宅ローンを借りられることがわかりました。

住宅ローンを申し込むときには、審査のポイントをしっかりと理解し、審査に通りやすいような返済計画を立てることが大切です。

50歳から住宅ローンを組む場合は、できるだけ長く働いて無理なく返済できるよう、さまざまな働き方も検討してみると良いでしょう。

 

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