55歳は働き盛りの年齢ですが「自分の給与は平均年収に比べて給与が低いのか」「このまま定年まで働き続けて老後の蓄えをしっかり作れるのか」など、収入に関する不安を感じる人も多いのではないでしょうか。
この記事では、55歳の平均年収に加え、企業規模・業界・雇用形態別など、さまざまな角度から55歳の平均年収を解説します。
55歳からの年収アップ方法についても詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
伊藤FP事務所代表。ファイナンシャルプランナー(AFP)兼ライター。大学卒業後、証券会社・保険コンサルタントを経て事務所代表兼フリーライターとして活動を始める。家計の見直しから税金・保険・資産運用まで、人生の役に立つ記事を幅広く執筆。
55歳の平均年収はどれくらい?
55歳の平均年収は、厚生労働省の「令和5年 賃金構造基本統計調査」によると約452万円です。
年代別の平均年収は以下のようになっており、55歳から59歳が平均年収のピークになっていることがわかります。
年齢階級 | 賃金(年収) |
20歳~24歳 | 約270万円 |
25歳~29歳 | 約310万円 |
30歳~34歳 | 約343万円 |
35歳~39歳 | 約377万円 |
40歳~44歳 | 約407万円 |
45歳~49歳 | 約427万円 |
50歳~54歳 | 約445万円 |
55歳~59歳 | 約452万円 |
60歳~64歳 | 約367万円 |
65歳~69歳 | 約324万円 |
このように、55歳は人生で最も高い年収が得られる年齢といえます。
なお、「令和5年 賃金構造基本統計調査」では55歳の具体的なデータはないため「55歳~59歳の平均年収」を、55歳の平均年収として考えていきます。
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55歳の手取り年収は?
平均年収は「額面」であり、所得税や住民税、健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料などを引いた金額が「手取り年収」です。
日々の生活に直結するのはこの「手取り年収」であり、一般的には平均年収の75%~80%ほどとされています。
55歳の手取り年収は、約452万円の75%と仮定すると、約339万円です。年代別の手取り年収は、以下のとおりです。
年齢階級 | 賃金(年収) | 手取り年収(年収の75%とする) |
20歳~24歳 | 約270万円 | 約203万円 |
25歳~29歳 | 約310万円 | 約233万円 |
30歳~34歳 | 約343万円 | 約257万円 |
35歳~39歳 | 約377万円 | 約283万円 |
40歳~44歳 | 約407万円 | 約305万円 |
45歳~49歳 | 約427万円 | 約320万円 |
50歳~54歳 | 約445万円 | 約334万円 |
55歳~59歳 | 約452万円 | 約339万円 |
60歳~64歳 | 約367万円 | 約275万円 |
65歳~69歳 | 約324万円 | 約243万円 |
60歳から64歳は再雇用で給与が減るケースが多いため、平均年収および手取り年収が減っています。
65歳以降は年金生活になるため、より収入が減ります。統計を見ると、年金生活水準は20代後半〜30代前半の水準とほぼ同等であることがわかります。
【企業規模別】55歳の平均年収は大企業がトップ
55歳の平均年収は約452万円ですが、企業規模別に見ると以下の通りです。
- 大企業は約515万円
- 中企業は約441万円
- 小企業は約392万円
このように平均年収に大きな差があることがわかります。また、企業規模別、および年齢階級別の平均年収は、以下の通りです。
年齢階級 | 大企業 | 中企業 | 小企業 |
20歳~24歳 | 約281万円 | 約265万円 | 約258万円 |
25歳~29歳 | 約325万円 | 約304万円 | 約295万円 |
30歳~34歳 | 約369万円 | 約333万円 | 約323万円 |
35歳~39歳 | 約411万円 | 約367万円 | 約349万円 |
40歳~44歳 | 約448万円 | 約398万円 | 約368万円 |
45歳~49歳 | 約471万円 | 約420万円 | 約386万円 |
50歳~54歳 | 約501万円 | 約433万円 | 約396万円 |
55歳~59歳 | 約515万円 | 約441万円 | 約392万円 |
60歳~64歳 | 約377万円 | 約367万円 | 約359万円 |
65歳~69歳 | 約332万円 | 約326万円 | 約318万円 |
60歳~64歳は、再雇用制度によりそのまま働き続ける人が多くなっていますが、給与水準がかなり下がるため、企業規模による違いがほとんどなくなります。
65歳~69歳になると、年金生活になる人が多く、企業規模による平均年収の違いはほぼなくなり、ほとんど同じ水準になっています。
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【業界別】55歳の平均年収の1位は?
55歳の平均年収は、企業規模別で数十万円単位の差があることがわかりましたが、業界別ではどうなっているのでしょうか。
55歳の業界別平均年収は以下の通りで、業界によって大きな違いがあることが確認できます。
業界 | 55歳~59歳の平均年収 |
鉱業・採石業・砂利採取業 | 約511万円 |
建設業 | 約519万円 |
製造業 | 約453万円 |
電気・ガス・熱供給・水道業 | 約624万円 |
情報通信業 | 約594万円 |
運輸業・郵便業 | 約384万円 |
卸売業・小売業 | 約453万円 |
金融業・保険業 | 約553万円 |
不動産業・物品賃貸業 | 約507万円 |
学術研究・専門・技術サービス業 | 約596万円 |
宿泊業・飲食サービス業 | 約347万円 |
生活関連サービス業・娯楽業 | 約380万円 |
教育・学習支援業 | 約574万円 |
医療・福祉 | 約395万円 |
複合サービス業 | 約428万円 |
サービス業(他に分類されないもの) | 約394万円 |
最も平均年収が高い業界は「電気・ガス・熱供給・水道業」で、約624万円です。2番目に多い業界は「学術研究・専門・技術サービス業」で約596万円です。
平均年収が低い業界の場合は、今後も収入が増える可能性は低いといえます。老後資金をしっかり貯めたい場合は、副業や起業で収入を増やすことも検討しましょう。
【学歴別】55歳の平均年収は大学院卒がトップ
55歳の平均年収は約452万円ですが、大学院卒は約772万円、大学卒は約599万円となっており、平均年収よりも大幅に高いことがわかります。
学歴 | 平均年収 |
高校卒(55~59歳) | 約387万円 |
専門学校卒(55~59歳) | 約420万円 |
高専・短大卒(55~59歳) | 約409万 |
大学卒(55~59歳) | 約599万円 |
大学院卒(55~59歳) | 約772万円 |
一方、高校卒や専門学校卒は、平均年収に届いておらず、平均年収が少なくなっています。
この学歴別のデータからは、学歴によって大きな収入の格差が生じていることがわかります。
【雇用形態別】55歳の平均年収は正社員・正職員が高い
雇用形態別に55歳の平均年収をみてみると、55歳の正職員・正社員の年収は約486万円です。
それに対して、正社員・正職員以外の平均年収は約266万円となっており、非常に大きな差があることがわかります。
年齢階級 | 正社員・正職員 | 正社員・正職員以外 |
20歳~24歳 | 約274万円 | 約234万円 |
25歳~29歳 | 約316万円 | 約260万円 |
30歳~34歳 | 約353万円 | 約266万円 |
35歳~39歳 | 約392万円 | 約265万円 |
40歳~44歳 | 約426万円 | 約265万円 |
45歳~49歳 | 約449万円 | 約261万円 |
50歳~54歳 | 約473万円 | 約267万円 |
55歳~59歳 | 約486万円 | 約266万円 |
60歳~64歳 | 約419万円 | 約308万円 |
65歳~69歳 | 約375万円 | 約278万円 |
また、この統計によると「正社員・正職員以外」の平均年収は、どの年代でも20代の頃と大きな差はありません。
これは、「正社員・正職員以外」の収入が10年、20年経っても変わらず、定年までほぼ同じ給与水準であることを示しています。
「正社員・正職員以外」の場合は、給与がほぼ変わらないため、やりがいを感じられなかったり、モチベーションの維持が難しいこともあるでしょう。
より多くの収入を求める人は、副業をしたり、独立・起業するなど、収入を増やす方法を検討すると良いでしょう。
都道府県別の平均年収はどれくらい?
全年齢の都道府県別の平均年収を見てみると、以下のようになっており、大きな地域差があることがわかります。
年齢 | 平均年収 |
東京 | 442万2,000円 |
大阪 | 408万円 |
広島 | 356万2,800円 |
福岡 | 356万7,600円 |
北海道 | 346万2,000円 |
最も平均年収が高いのは、東京で働く場合です。広島や福岡、北海道は東京に比べて約80万円低く、地域差が大きくなっています。
このように、都心部、特に東京で働くと平均年収が高くなることがわかります。ただし、東京は物価が高いため、生活のコストも高くなるというデメリットがあります。
役職による平均年収の違いはどれくらい?
平均年収は、役職についているかどうかでも大きな違いが生まれます。「令和5年 賃金構造基本統計調査」の役職別・平均年収のデータでは、年齢別のものがないため、全年齢の役職別の平均年収をみてみましょう。
役職 | 年収 |
部長級 | 約715万円 |
課長級 | 約589万円 |
係長級 | 約445万円 |
このように、役職によって平均年収に大きな差があり、「部長級」と「課長級」の平均年収では、約126万円の差があります。
また、「課長級」と「係長級」では、約144万円の差があります。このように、昇進して役職が上がるほど平均年収は高くなる傾向にあります。
ただし、50歳代後半から60歳にかけて「役職定年」を迎えると、部長や課長という役職から退くため、役職手当等がなくなり、給与が大きく下がるケースが多くなっています。
役職手当の割合が高い場合は、役職定年後に年収が大きく下がる可能性があることを覚えておきましょう。
55歳の平均年収で生活費をまかなえる?
55歳の平均年収は約452万円ですが、生活に余裕がある賃金水準なのでしょうか。二人以上世帯と単身世帯それぞれについて平均年収と支出の関係について詳しくみていきましょう。
55歳二人以上世帯の手取り年収と生活費の比較
「総務省統計局の家計調査(2023年)」によると、55歳~59歳・二人以上世帯の1ヶ月当たりの消費支出は33万7276円です。年間の消費支出は約405万円になります。
消費支出(1ヶ月当たり) | 33万7,276円 |
(食料) | 8万5,738円 |
(住居) | 1万8,534円 |
(光熱・水道) | 2万4,981円 |
(家具・家事用品) | 1万2,556円 |
(被服及びはきもの) | 1万1,862円 |
(保健医療) | 1万3,946円 |
(交通・通信) | 5万6,265円 |
(教育) | 1万6418円 |
(教養娯楽) | 3万2,007円 |
(その他の消費支出(諸経費・小遣い・ 交通費・仕送り金)) | 6万4,967円 |
55歳の平均年収は約452万円です。平均年収の75%を手取りとして考えると、年間の手取り年収は約339万円です。
年間の消費支出は約405万円のため、世帯主以外が働いていない場合は、生活が苦しいと考えられます。
55歳単身世帯の手取り年収と生活費の比較
「総務省統計局の家計調査(2023年)」によると、35歳~59歳・単身世帯の1ヶ月あたりの消費支出は、以下のように19万4,438円、年間では約223万円となっています。
消費支出 | 19万4,438円 |
(食料) | 4万6,498円 |
(住居) | 3万4,261円 |
(光熱・水道) | 1万2,471円 |
(家具・家事用品) | 5,377円 |
(被服及びはきもの) | 4,538円 |
(保健医療) | 7,252円 |
(交通・通信) | 2万447円 |
(教育) | 0円 |
(教養娯楽) | 1万1,717円 |
(その他の消費支出(諸経費・小遣い・ 交通費・仕送り金)) | 3万3,683円 |
55歳の平均年収は約452万円なので、手取り年収を75%とすると、約339万円です。
55歳単身世帯の場合は、手取り年収が約339万円、年間の消費支出は223万円のため、ゆとりある生活ができ、老後のための貯蓄もできる計算になります。
55歳は老後に向けてどれくらい貯蓄すべき?
55歳になると、老後に安心して過ごせるための貯蓄額について考えることも増えるでしょう。55歳は子育ても一段落し、貯蓄しやすくなる年齢といえますが、老後資金はどれくらい必要なのでしょうか。
ここでは、二人以上世帯・単身世帯が必要な老後資金について、それぞれくわしく解説します。
55歳二人以上世帯が必要な老後資金
55歳の二人世帯が必要な老後資金は「65歳以降で必要な生活費」と、「老後生活の期間」を使って計算できます。
このシミュレーションでは、90歳まで老後生活が続くと仮定して計算していきます。
年金受給開始年齢の65歳以降・二人以上世帯の生活費(支出)は、「総務省統計局の家計調査(2023年)」によると以下のようになっています。
消費支出 | 25万2,928円 |
非消費支出 | 3万3,248円 |
支出の合計 | 28万6,176円 |
統計によると、実収入は25万5,973円のため、毎月約3万円の赤字になる計算です。
90歳まで生きると仮定すると、必要最低限の生活を送るための必要資金は
- 3万円×12ヶ月×25年=900万円
となり、年金収入以外に900万円あれば、生活できるということになります。次にゆとりある老後生活のための生活資金を考えていきましょう。
生命保険文化センター実施の「2022年度 生活保障に関する調査」によると、夫婦2人でゆとりある老後を送るために必要な上乗せ額は平均すると月14.8万円とされています。
生活費の赤字分の3万円を足すと、ゆとりある老後生活に必要な資金は合計で月17.8万円になり、90歳までに必要な資金は
- 17.8万円×12ヶ月×25年=5,340万円
になります。これらの計算の結果をまとめると、老後に必要な資金は
- 90歳まで必要最低限の生活を送るための資金は900万円
- 90歳までゆとりある老後を送るための資金は5,340万円
となります。
55歳からの貯蓄と、退職金の額などを計算して、自分が貯めるべき資金額を把握するようにしましょう。
55歳単身世帯が必要な老後資金
年金受給開始年齢の65歳以降・単身世帯の生活費(支出)は、「総務省統計局の家計調査(2023年)」によると以下のようになっています。
消費支出 | 14万5,430円 |
非消費支出 | 1万2,243円 |
支出の合計 | 15万7673円 |
実収入は12万6,905円となっているため、毎月約3万円赤字になる計算です。90歳までの必要資金を計算すると
- 3万円×12ヶ月×25年=900万円
となり、単身世帯も、二人以上世帯と同様に、最低限の生活をするための資金が900万円必要な計算です。
次にゆとりある老後生活のための資金について考えていきましょう。
ゆとりある老後生活のために上乗せする資金を二人以上世帯の半分、つまり約7万円として計算すると、赤字の3万円を足して、毎月10万円が必要な計算になります。
90歳までゆとりある老後生活を送るための資金は、
- 10万円×12ヶ月×25年=3,000万円
となります。
これらの結果をまとめると、単身世帯が必要とする老後資金は、
- 90歳まで必要最低限の生活を送るための資金は900万円
- 90歳までゆとりある老後を送るための資金は3,000万円
となります。
50歳代は老後について少しずつ考え始める時期ですが、平均貯蓄額や中央値はどれくらいなのでしょうか。老後資金として、どれくらいの金額を目標に、50歳代から貯蓄すれば良いのでしょうか。 この記事では、金融広報中央委員会が実施した「家計の[…]
55歳から年収をアップする方法
55歳で年収を増やし、少しでも多くの老後資金を貯めたいという人も多いでしょう。ここでは、年収をアップする方法について紹介します。
副業して年収を増やす
夕方退社した後や休日に副業をして、収入を増やすのもひとつの方法です。近年は、副業を認める企業も増えてきています。
副業であれば、オンラインで仕事を受注したり、パートをするなど自分に合った仕事を見つけやすいというメリットもあります。
本業がおろそかにならない範囲で、自分に合った副業をはじめてみると良いでしょう。
シニア世代の方々にとって、副業は収入源を確保する以上に重要な意味を持ちます。50代、60代になると、転職や役職定年、再雇用などにより収入が減少するケースが多々あります。 また、それらの状況の変化を通じて仕事へのやりがいを失う可能性も[…]
独立・起業して平均年収を増やす
60歳以降を見据えて、独立・起業して年収を増やすという方法もあります。
独立・起業のメリットとしては、会社に雇われる身ではなくなるため、自分のライフスタイルに合った自由な働き方ができること、定年がないため、体調や体力に合わせて働き続けられることが挙げられます。
65歳の定年を迎えても何らかのかたちで働き続ける人が増えていますが、独立・起業をしていれば、自分の得意な仕事を続けられることも魅力です。
独立・起業に気軽に取り組む方法としては、最初は、本業と並行して「副業」としてスタートし、定年前後に専業に移行するというやり方があります。
やりがいを感じながら生き生きと働き続けたいという人は、体力・気力が充実している55歳から独立・企業を検討しても良いでしょう。
50歳以降で起業するときは、誰しも不安を感じますが、それをどのように乗り越えて成功につなげているのでしょうか。長年A国の銀行で働き、帰国後起業をしたKさんに、50歳で起業にチャレンジした理由や直面した問題、それをどう乗り越えたのかなどにつ[…]
まとめ
55歳の平均年収は約452万円で、全年齢の中で最も年収が高い年代といえます。学歴別では大学院卒が最も平均年収が高くなっています。部長などの役職がある人、正社員や正職員の人のほうが、平均年収が高くなる傾向にあります。
55歳は平均年収が高いものの、役職定年を迎えると年収が大きく減る可能性があります。
今後年収を減らしたくない人や、より多くの収入を得たい人は、副業や独立・起業などの方法も検討することが大切です。
55歳から年金受給開始の65歳までは10年あるため、しっかりと老後資金を貯められる時期でもあります。収入を確保して、老後に向けて計画的な資産形成を行うようにしましょう。