定年退職時の退職金に税金はかかる?受け取り方や税金の計算方法を解説!

定年退職時に支給される退職金。再雇用を予定している方でも定年時には退職金を受け取ることができます。しかし、再雇用が予定されている場合でも退職金に税金がかかるのか、自分に支給される退職金にどのように税金が課せられるか気になっている方も多いでしょう。

そこで今回は、再雇用を予定している方に向け、退職金の支給方法や支給方法別の税金の計算方法をご紹介します。自分に支給される退職金を把握するために、ぜひ参考にしてみてください。

この記事を監修者
梶本 卓哉
税務署法人課税部門(税務大学校首席卒業)、大手監査法人や大手投資銀行勤務等を経て公認会計士・税理士事務所開設。税務のみならず会計監査やIPO(新規株式公開)実務に強みを有する。これまでの職務経験を基にnoteでも情報発信中。
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再雇用を予定していても退職金には税金がかかる

まず注意しなくてはならないのが、再雇用を予定している場合でも、退職金は所得として課税されるということです。再雇用される・されないに関係なく、退職金にかかる税金を避けることはできません。

また、退職金の支給方法にはいくつかの種類があり、支給方法によって税金の計算方法が異なることに注意しなければいけません。さらに、退職金制度は企業独自の制度であり、受け取り方などは企業によって定められていることもあるので、受け取り前に確認しておく必要があります。

以降では、退職金の受け取り方やそれぞれにかかる税金の計算方法をご紹介します。

再雇用時の退職金の受け取り方は3種類

定年退職後の意向確認書

再雇用される場合に選択できる退職金の受け取り方は、3種類あります。

退職一時金

退職金を全額一括で受け取る方法です。企業の大半が退職金の受け取り方法を一時金としているとされています。

退職年金

退職金を年金のように一定額を定期的に受け取る方法です。退職金額をもとに受け取り期間や頻度を決めることができます。

退職一時金と退職年金の併用

退職一時金と退職年金の特徴を組み合わせて受け取ることができます。

退職金の受け取り方で税金の計算やメリットが異なる

退職金の受け取り方には3つの種類があると説明してきましたが、それぞれの受け取り方で税金の計算やメリットが異なっています。ここからは、それぞれの税金の計算方法やメリットを確認していきましょう。

退職一時金で受け取る場合

まずは、退職一時金で受け取る場合の税金の計算方法とメリットを解説していきます。

退職一時金にかかる税金の計算方法

退職一時金として全額一括で受け取る場合は、退職金が税制上では「退職所得」として区分されます。退職所得の課税方式は、他の所得と混ぜずに退職所得のみで税額を計算する「分離課税方式」です。

また、退職所得には「退職所得控除」が適用され、税制上の優遇を受けることができます。退職所得控除の算出方法は以下のとおりです。

「退職所得控除の算出方法」

  • 勤続年数が20年以下の場合:40万円×勤続年数(80万円に満たない場合は80万円)
  • 勤続年数が20年超の場合:800万円+70万円×(勤続年数-20年)

※勤続年数の1年未満の端数は切り上げ

退職所得控除額の算出方法がわかったら、さっそく課税対象となる退職所得額を計算してみましょう。退職金は「1/2課税」という制度によって、退職金額から退職所得控除額を差し引いた金額の1/2で算出されます。

課税対象の退職所得額を計算する際は、以下の計算式で求めることができます。

課税対象の退職所得額=(退職金額-退職所得控除額)×1/2

例えば、勤続40年の人が2,800万円の退職一時金を受け取った場合、退職所得控除額と課税対象の退職所得額は以下のようになります。

退職所得控除額=800万円+70万円×(40年-20年)=2,200万円
課税対象の退職所得額=(2,800万円-2,200万円)×1/2=300万円

最後に、課税対象の退職所得額をもとに、実際にかかる所得税の源泉徴収額を計算してみましょう。計算をする際は、以下の速算表を使うと便利です。

課税退職所得額税率控除額
195万円以下5%
195万円超〜330万円以下10%9万7,500円
330万円超〜695万円以下20%42万7,500円
695万円超〜900万円以下23%63万6,000円
900万円超〜1,800万円以下33%153万6,000円
1,800万円超〜4,000万円以下40%279万6,000円
4,000万円超45%479万6,000円

先ほど例であげた勤続40年の人が2,800万円の退職一時金を受け取るケースでは、課税退職所得額が300万円だったため、以下のように算出できます。

退職金の所得税=(300万円×10%-9万7,500円)=20万2,500円

※平成25年1月より復興特別所得税2.1%が計算に加算されます。
※別途住民税が10%かかります。

退職一時金で受け取るメリット

退職一時金として受け取る最大のメリットは、退職所得控除額が大きく税負担が軽いことです。退職所得控除額は勤続年数が長くなるほど大きくなり、勤続20年では800万円、勤続30年では1,500万円、勤続40年では2,200万円の控除が受けられます。

退職金は長期勤続に対する報酬的給与として支払われる性質があるため、退職金に対する税負担が軽くなるように配慮され、控除が充実しています。また、一時金として受け取った退職金は退職所得となり分離課税方式で計算されるため、社会保険料がかかりません。控除額が大きいため、手元に残る現金が多くなるのが魅力です。

手元の現金が増えるため、住宅ローン返済や自宅のリフォームなど、多額の現金が必要となるライフイベントに備えることもできます。一方で多額の現金がはいるため、使い込んでしまう点には注意する必要があります。老後の生活のためにも、しっかりと資金計画を立てることが大切です。残った現金を投資などの資産形成に充てるのもよいでしょう。

退職一時金での受け取りは、勤続年数が多い方や、まとまった現金が欲しい方、資産形成ができる方におすすめの方法です。

退職年金で受け取る場合

次に、退職年金で受け取る場合の税金の計算方法とメリットを解説していきます。

退職年金にかかる税金の計算方法

退職年金で定額を定期的に受け取る場合は、退職金が税制上では「雑所得」として区分されます。雑所得の課税方式は、他の所得と合計して税額を計算する「総合課税方式」です。

また、退職年金は「公的年金等控除」が適用されます。公的年金等控除の算出方法は以下のとおりです。収入額には公的年金の収入も含めてください。

受給者の年齢合計年金額控除額
65歳未満60万円以下全額
60万円超130万円未満60万円
130万円超410万円以下収入額×25%+27.5万円
410万円超770万円以下収入額×15%+68.5万円
770万円超1,000万円以下収入額×5%+145.5万円
1,000万円超195.5万円
65歳以上110万円以下全額
110万円超330万円以下110万円
330万円超410万円以下収入額×25%+27.5万円
410万円超770万円以下収入額×15%+68.5万円
770万円超1,000万円以下収入額×5%+145.5万円
1,000万円超195.5万円

例えば、60歳の人が1年間で300万円の年金のみを受け取った場合、公的年金控除額等と課税対象の雑所得額は以下のようになります。

公的年金控除額等=300万円×25%+27.5万円=102.5万円
課税対象となる雑所得額=300万円-102.5万円=197.5万円

課税対象の雑所得額をもとに、実際にかかる所得税の源泉徴収額を計算してみましょう。計算をする際は、以下の速算表を使うと便利です。

雑所得額税率控除額
1,000円〜194万9,000円5%0円
195万円〜329万9,000円10%9万7,500円
330万円〜694万9,000円20%42万7,500円
695万円〜899万9,000円23%63万6,000円
900万円〜1,799万9,000円33%153万6,000円
1,800万円〜3,999万9,000円40%279万6,000円
4,000万円以上45%479万6,000円

先ほど例であげた、60歳の人が1年間で300万円の年金を受け取るケースでは、課税対象となる雑所得額が197.5万円だったため、以下のように算出できます。

年金を含む雑所得の所得税=(197万5,000×10%-9万7,500円)=10万円
※平成25年1月より復興特別所得税2.1%が計算に加算されます。
※別途住民税が10%かかります。

退職年金で受け取るメリット

退職金を分割する退職年金で受け取るメリットは、勤めていた会社が退職金を一定の利率で運用してくれるので、受給額が「一時金」より多くなる可能性があることです。

また、老後の資金を使い込む心配がありません。定期的な収入源をつくることで、精神的な安心感を得ることもできるでしょう。

受け取る期間や頻度を選択できるので、「公的年金が始まる65歳までの間に受け取る」「70歳から80歳まで長期間で受け取る」といった具合にライフスタイルに合わせて選択することもできます。ただし、受け取り期間が長いと、亡くなる時期によっては受給金額が少なくなるケースもあるので注意しましょう。退職年金での受け取りは、退職金を自分で運用するのが難しい方や安定した収入を得たい人におすすめです。

退職一時金+退職年金の併用で受け取る場合

最後に、退職一時金+退職年金の併用で受け取る場合の税金の計算方法とメリットを解説していきます。

退職一時金+退職年金の併用にかかる税金の計算方法

退職一時金と退職年金と組み合わせて受け取ると、退職一時金の部分に退職所得控除が適用され、退職年金部分は公的年金等控除の対象となります。

所得税の計算をする際は、退職一時金で受け取る額と退職年金で受け取る額をそれぞれ先ほどの計算方法で計算してください。

退職一時金+退職年金の併用で受け取るメリット

退職一時金と退職年金の併用で受け取るメリットは、納税額を最小限に抑えられる可能性が高いことです。退職所得控除より退職金額が多いときに、一時金と年金を組み合わせることで優遇を受けることができます。また、年金として受け取る退職金は、企業に運用してもらえる点も魅力です。

しかし、退職金を一部退職年金で受け取る場合は、社会保険料や住民税の負担が増えてしまうこともあるので、事前にシミュレーションを行いましょう。

退職一時金と退職年金の併用は、ライフプランに合わせて資金計画を立てやすい点もメリットといえます。住宅ローンの返済などで一時的に現金が必要な時は、退職一時金でまかない、残りの退職年金を老後の資金として使い込みを防ぐことも可能です。

税負担を抑えることができるので、退職所得控除額より退職金額が多い方におすすめの受け取り方といえます。

再雇用後の2回目の退職金は税金計算に注意

悩む中年男性

再雇用として働いていた方は、再雇用期間終了後の退職時に2回目の退職金をもらうケースもあるでしょう。再雇用終了時にもらう2回目の退職金も同様に税金を支払う必要があります。

基本的には、退職金の計算方法と変わりません。ただし、再雇用の勤続年数が5年以下である場合は、「短期退職手当等」として退職一時金の税制優遇措置に制限が設けられています。退職一時金額から退職所得控除額を差し引いた残額が300万円を超える部分は1/2課税が適用されません。

例として、勤続5年で700万円の退職一時金を受け取るケースをみてみましょう。勤続年数が5年のため、退職所得控除額は200万円(=40万円×5年)です。

退職一時金額から退職所得控除額を差し引いた残額=700万円-200万円=500万円

500万円のうち、300万円を超える分の200万円は1/2課税の適用対象外となります。

結果、課税対象となる退職所得額は以下のようになります。

課税対象となる退職所得額=300万円×1/2+200万円=350万円

退職金をもらった際は確定申告が必要?

退職金は、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、税金が源泉徴収されるので、原則として確定申告をする必要はありません。「退職所得の受給に関する申告書」の手続きを行うことで、退職金が支払われる際に所得税・復興特別所得税や住民税が、源泉徴収および特別徴収されます。

「退職所得の受給に関する申告書」とは、退職金を受け取る際に、退職金額や勤務年数などに合わせた正しい税率で源泉徴収を行うために必要な書類のことです。退職金の支払いを受ける前日までに、勤務していた企業に提出する必要があります。一般的には、退職する企業から提示されるので、必要事項を記入して提出しましょう。

仮に、退職所得の受給に関する申告書を提出せず退職金を受け取ってしまうと、退職金の20.42%(復興特別所得税を含む)が、一律で源泉徴収されてしまいます。万が一、退職所得の受給に関する申告書の提出が漏れてしまった場合は、確定申告により所得税を精算しなければいけません。

確定給付企業年金(DB)や確定拠出年金(DC)にも税金がかかる

退職に伴って給付される確定給付企業年金(DB)や確定拠出年金(DC)にも税金がかかることを忘れてはいけません。確定給付企業年金(DB)や確定拠出年金(DC)は、退職年金の受け取りで説明した、公的年金等控除の対象となり、雑所得として課税されます。

定年延長などによって年金の受給時期が変わると課税対象となる雑所得の金額も変化することはありますが、退職の有無や勤続年数が直接税金に影響することはありません。

一方、退職により支給される確定給付企業年金(DB)や確定拠出年金(DC)の一時金(脱退一時金または選択一時金)は、退職一時金と同様に退職所得に該当します。その際、退職所得控除額の計算に用いる勤続年数は、支払金額の計算の基礎となった期間です。60歳から65歳に定年延長した際は、60歳で資格喪失しているケースもあるので注意しましょう。

この場合、実際に勤務した期間は5年延長されていますが、計算時は60歳までを勤続年数として計算されます。必ずしも実際の勤続年数とは一致しないことに気をつけなければなりません。

再雇用でも退職金に税金がかかる。自分にあった受け取り方を

再雇用を予定している人でも退職金には税金がかかります。また、退職金の受け取り方で退職金にかかる税金の計算が異なることに注意しなければいけません。

受け取る退職金の額や自分のライフプランに合わせて、適切な受け取り方を選択してください。どの受け取り方がよいか判断する際は、実際にかかる税金をシミュレーションするとよいでしょう。また、自分で判断がつかなく迷ってしまう場合は、Beyond Age社でも相談を受け付けております。