50、60代の独立の「法人化」について、営業のしやすさや相続税対策の観点から解説

独立を検討する際によくある悩みが「個人事業主」と「法人」のどちらを選ぶかという問題です。

一般的に、多くの記事では税制面の観点から比較されることが多いですが、今回は「営業のしやすさ」の観点から「個人事業主」と「法人」の違いについて解説します。

これから独立を検討されている方や個人事業主から法人化するべきか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。

法人よりも個人事業主から始める方が多い

独立を検討される方から「個人事業主と法人、どちらでスタートするのがよいでしょうか」とよく相談を受けます。確かに個人事業主は開業届1枚を提出するだけで始められるので、開業時の負担は少ないです。

一方で、法人の場合は設立自体に費用がかかります。それらと比較すると書類1枚で申請ができ、費用負担がない個人事業者を選ぶ方がほとんどです。

特にこれまでの知見を生かして、コンサルタントなどの業務で独立されている方は個人事業主を選ぶ傾向があります。

一方で飲食店経営を始める方やSaaSのようなソフトウェアを開発する方などは、資金調達が必要になるケースもあるため、独立時から法人を設立される方もいます。ただ、私がこれまでシニアと会ってきた中では圧倒的に個人事業主から始められる方が多かったのが実情です。

見落とされがちな法人化のメリットとは?

独立後、早い段階で法人化することで得られるメリットは大きいと考えています。

世に出ている記事などでは法人化のメリットは税制面について語られることが多いですが、実はそれだけではありません。以下では、見落とされがちな法人化に関するメリットを解説します。

法人化するとビジネスチャンスが広がる

個人事業主が参加できない交流会や、取引を法人のみに限定している企業がある

他の記事でもお伝えしているようにシニアが独立した際に武器となるのは、「会社員時代の人脈」です。しかし、人脈経由以外で仕事を増やしていく場合には、経営者交流会に参加するなど、新しい出会いを作るために行動しなければなりません。

ただし、経営者交流会は「経営者」のためのイベントであり、個人事業主が参加できないケースがよくあります。そのため、個人事業主のままだと営業先が限られてしまい、その時点でビジネスチャンスを失っているとも言えるのです。

また最近は少なくなってきているものの、「取引先は法人のみに限定している」といった企業も一定数あります。せっかく商談につながっても、受注に繋がらない可能性があり、そのような点においても法人化した方が良いといえます。

個人事業主は仕事を探しにきている「テイカー」と思われることもある

個人事業主は基本的にビジネス交流会のような場においても、仕事を探しにきている「テイカー」であることが多く、お互いに受発注し合う関係に発展しづらいと思われがちです。

経営者同士の場合は仕事を発注し合うこともありますが、個人事業主側から大きな仕事を発注することはそこまで多くはありません。

そのため、相手が「個人事業主」とわかった瞬間に「ビジネスの話には発展しなさそうだな」と相手に思われてしまう可能性が高いのです。

法人化している時点で「個人事業主の段階を超えた方」という視点で見てもらえますし、「ある程度は成功して稼いでるんだな」と話を聞いてもらえる可能性が高くなります。

責任範囲が有限責任になる

これもあまり話されていないメリットですが、個人事業主は責任範囲が「無限責任」です。例えば個人事業主として仕事を受けている際に、過失により情報漏洩をしてしまい、クライアントに損害が発生、1億円の損害賠償請求を受けたとしましょう。その損害賠償を支払う義務がありますが、個人の財産にまで責任が及ぶので、最悪の場合、自己破産することになります。

一方で、株式会社の場合は責任範囲が「有限責任」です。先ほど例に挙げた状況が、会社で仕事を受けている際に起きたとしても、会社を閉鎖することで損害賠償を清算することができ、個人の資産に影響が及ばない可能性があります。

*資本金の額などによって、代表者個人の保証が求められる可能性もあります。

特別な理由がない場合は、法人化をした方がいい

法人化のデメリットとして「費用がかかること」、「決算の手続きが煩雑」とよく言われますが、この点をデメリットと捉えるのはもったいないといえます。

逆に考えると、設立費用を支払えば経営者交流会への参加権を得ることができ、新しい営業チャネルにアクセスすることができます。

また「決算の手続きが煩雑」といった点に関してですが、法人の成り立ちや税金などのお金の流れは自分で手続きをして初めて理解できるものです。企業向けのコンサルタントとして独立し、経営者と関わる機会が増える方もいらっしゃると思いますが、自分で法人を設立することで、クライアントとの会話の糸口になったり、経営者の悩みへの理解もより深まるのではないでしょうか。

そのため、法人を設立すること自体が今後の役に立つこともあるでしょう。「経営者と同じ目線で提案する」ためにも、まずは自分が経営者になって体感することも重要といえます。

また決算業務や税務申告といった手続きは会計ソフトを使えば簡単に申告までできますし、税理士にお願いすることもできますので、デメリットというほどではないのかなと思います。

個人事業主のままでもよいケースはあるのか?

「全ての方が法人化するべきか?」といわれると、必ずしも法人化すればいいというものでもありません。例えば、定年退職後に独立し、友人の会社だけを手伝っていきたいという方もいらっしゃるでしょう。

一方で事業を大きく展開したいという方の中にも、法人化せず個人事業主として続けられる方もいます。

現時点で人脈や販路が確保されていてビジネスが成功していたり、今後、営業活動が必要ないという方は「個人事業主のままで良い」という方もいます。

今後、どのように仕事を広げていきたいかによっても個人事業主と法人、どちらを選択するべきかが変わってくるのです。

法人化のタイミングは?

「〇〇〇万円まで売上(所得)を生み出すことができれば法人化したほうがいい」と勧めている書籍などもありますが、明確な答えはないと思っています。

一定の収入を継続して見込める場合には、個人事業主よりも法人の方がメリットが大きい場合が多いので、迷っている方は法人化を検討してみてはいかがでしょうか。

 
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法人化するなら「株式会社」の方が良い

法人化には、一般的に大きく2つの選択肢があります。株式会社と合同会社です。合同会社は設立にかかるコストも安く、株式会社とは異なり決算の公示も必要ありません。設立するのも維持するのも楽と言えます。

一方で、合同会社は、代表取締役を名乗れません。決定権を持つ社員という意味の「代表社員」を名乗ることになります。

そのため、名刺に「合同会社」と記されていたら、「1人でやられている = 個人事業主と大きく変わらない」と相手に思われてしまう可能性があります。同じ法人化でも、約15万円程度の費用の違いで「周りからの見られ方」に差が生まれてしまいます。

どちらかで迷う場合は、少しコストはかかりますが株式会社にした方が良いとアドバイスすることが多いです。

相続税を見据えた法人化を

50、60代の方が定年後に独立し、法人化する際に相続税の観点からいくつか検討するべきポイントがあります。

お子様を株主にして、会社を作ると相続税対策になる

シニアが法人化する場合、相続税にも配慮が必要です。例えば、法人化にあたっては、設立当初からお子様を株主にするケースがあります。

例えば自身が100%の株を所有し、5000万円の利益剰余金が残っているとしましょう。このケースでは相続財産として5000万円がカウントされてしまいます。もしお子様が100%の株を持っていれば、その5000万円はもともとお子様の財産ですので相続財産としてカウントされません。(注:話を単純化するために税金その他の観点は無視しています)

議決権の数を逆転させる方法もある

ただし、お子様が会社の経営に関わっていない場合、議決権は譲りたくないケースもあるでしょう。この場合は無議決権株式の発行により、議決権の過半数を保持することは可能です。

そのような相続対策をすることも一つテクニックとして覚えておくとよいでしょう。実務的な話は司法書士や税理士にお問い合わせ下さい。

特に売上が大きくない段階は、会計ソフトで対応できる

「法人化したら決算が大変そうだな」と思う方も多いでしょう。会社員として勤務されてきた場合、決算はなじみのない作業のひとつです。法人化した場合はやはり税金の計算などが少し複雑になるので、戸惑うこともあるかもしれません。

ただし、最近は便利な会計ソフトが多数登場しています。日々の取引を会計ソフトに入力していけば、ソフトが自動的に集計してくれ、決算書の作成まで行ってくれます。

とはいえ、一定の事務作業が生じるので、時間を節約して仕事に集中するのであれば、月額数万円ほどの顧問料を支払って税理士に頼むことも一案です。

法人化した後は積極的に交流会などに参加を

シニアで独立後の営業先は、これまで築き上げてきた人脈です。これは法人化していなくても同じです。しかし、長くビジネスを続ければ続けるほど、既存の人脈以外の営業先開拓に悩むことになるでしょう。

法人化すれば、「経営者」として経営者交流会にどんどん参加できるようになり、新たな人脈を切り開いていけるのです。

人生100年時代、長く活躍されたい方はぜひ法人化にチャレンジしていただきたいと思います。

今回のような法人化に関するお話や、新規顧客開拓などについて、課題を感じている方は株式会社BEYOND AGEまでご相談ください!

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