50歳で早期退職して後悔しないための準備について再就職支援のプロが解説

  • 「早期退職の募集が始まったが、応募しようか悩んでいる」
  • 「早期退職をして理想の転職先は見つかるのだろうか?」
  • 「早期退職をして後悔している人もいたから少し不安だ」

このように、早期退職に踏み出すべきか悩んでいる方もいらっしゃるでしょう。今回は50歳で早期退職を考える上で、どのような準備をおこなうべきか。また早期退職後にはどのようなキャリアを考えるべきかについて、27年にわたり雇用調整および再就職支援を行ってきた髙松さんが解説します。

Talent Fine Tuning 代表
髙松 健司

27年間にわたり人材の出口戦略、特に雇用調整および再就職支援を積む。
これまでに約10,000人以上の方の再就職を支援してきた。

希望退職、事業所閉鎖、事業譲渡時の社内コミュニケーションのアドバイザリーも担当。合併、工場・事業所閉鎖、事業譲渡、会社分割、事業清算など、多岐にわたるプロジェクトを成功に導く。また、企業内でのキャリア相談の経験も豊富で、これまでに約2,000人以上の対象者とのキャリア相談を実施している。転職8回、出戻り1回、一人称でシニアのキャリアを語れる67歳。現在、個人事業主(Talent Fine Tuning 代表)

早期退職制度は大きく2種類ある

早期退職制度には、大きく分けて2つのパターンがあります。

1つは1年を通して応募できる恒常的な制度で、もう1つは特定の期間(例えば3ヶ月間)のみ応募可能な期間限定の制度です。

重要なのは恒常的な制度の場合、退職理由が「自己都合」となるのに対し、期間限定の制度の場合は、業績が悪化の改善や、企業の新陳代謝を目的として外科手術的に行うため、「会社都合」となるという点です。

この違いにより、退職金や失業給付の金額が大きく変わってきます。早期退職を検討する際は、自社の制度がどちらのパターンに当てはまるのかを確認し、ハローワークの認定も含めて、よく調べておくことが大切です。

企業が早期退職制度を導入する背景とは?

前述の通り、企業が早期退職を導入する背景には、企業の新陳代謝があります。一昔前では、企業の業績が悪くなった際に実施されるケースが多かったのですが、最近は業績の良し悪しに関わらず、外部の環境変化に対応するために、企業が職種ごと廃止するケースがよく見られます。

例えば、医薬品の情報を取り扱うMRでは、元々は医師や薬剤師のところへ足繁く通うことが主な仕事でした。しかし、新型コロナウィルスが流行した頃、感染拡大防止のため、病院側から訪問自粛を要請するようになり、営業活動の手段はメールやビデオ通話、またYoutubeで情報発信するなど、活動する場がオンラインに移行しました。

コロナが流行した2019年以降、MR職の就業者数は減少傾向にあり、有名な製薬会社もMR職の大リストラを実行するなどのニュースが一時期注目されていたかと思います。

このように急激に変化する環境に対して企業は対応する必要があり、その結果、早期退職制度のような施策につながります。

早期退職を募集している会社に残るべきか?

早期退職を考える際に有形資産であるお金は大事ですが、今回はキャリアなどの無形資産に焦点を当てて解説します。

結論、早期退職者を募集している会社に残ったとしても、そのような企業は成熟産業などが多いため、この先より良い状況になることは考えにくいでしょう。そういった会社にいること自体が、今後のキャリアにおいて不利になるという認識を持っている方が健全かと思います。

語弊を恐れずにいうと、早期退職者を募るということは、

  • 「今のお給料に対してあなたの仕事は求められている基準に達していない」
  • 「社内で活躍の場がないので、今後は社外で仕事をすることを考えてほしい」

というメッセージとして受け取れます。

会社が、これまでの仕事・職種を廃止した上で、対象者に新しい仕事を任せることもありますが、その場合、本人にとって本意ではない仕事を任せられる可能性もあります。

日本企業はジョブ型ではなく、メンバーシップ型なので、極端な話、「明日から社内郵送物の集荷だ!」と言われたら、それがあなたの仕事になるのです。

これはあくまで極端な例ですが、早期退職を募集している会社に残ったとしても、今後自分が目指すキャリアを作ることは難しいということを認識しておきましょう。

早期退職を決断した多くの方が直面する障壁とは?

早期退職を検討し始め、転職活動を開始するものの、なかなかうまくいかないという方をこれまでたくさん見てきました。早期退職に際して、直面する壁は大きく以下の2つがあります。

  • 家族に引き止められる
  • 転職活動がうまくいかない

それぞれについて詳しく解説します。

家族に引き止められる

ご家族から反対で早期退職に踏み出せない方も多くいらっしゃいます。例えば早期退職を打診すると、「会社の看板がなくなるのが嫌だ」、「聞いたことがない会社だと嫌だ」と言われることが多くあります。

過去に、とある銀行の幹部の方から、日本の銀行の将来性を危惧して「息子が将来銀行に就職しないように説得してほしい」と相談があり、会いに行ったのですが、お子さんの話を聞いてみると、「有名な企業で働いている父親がかっこいい」と有名企業で働くことに対して憧れを持たれていました。

このように大企業で就職していることに対してご家族が憧れや執着を持っているとなかなか転職などに踏み出せないものです。そのため、日頃からコミュニケーションを取り、家族の職業観をアップデートすることも重要になります。

転職活動で苦労する

早期退職を検討する年齢は40代以降、ボリュームゾーンは50代あたりですが、50代から転職活動をしても、なかなか理想の仕事に辿り着けないのが現実です。

転職がうまくいかない原因は大きく3つあります。

年齢が原因で選考が通過しない

まず、50代以降になると、他の年代と比べて年齢が原因で落とされることが多くなります。前述の通り、企業が50代の正社員を積極的に採用したいと考えていることは少なく、ストレートな表現になってしまいますが、労働市場において、50代は賞味期限が近い商品と同じであり、企業はあえてそれを買わないということです。

また正社員として50代を採用して、その企業と求職者の相性が悪かった場合、解雇することが大変であるため、50代を採用する際はかなり慎重になるのです。

50代での転職がなぜ厳しいかについては以下の記事でも解説しているので、ぜひ参考にしてください。

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等身大の自分を知らない

大企業出身者によくあることですが、これまで享受してきた待遇を転職先に求めたり、提示される条件などが飲み込めず、転職活動が長期化する方が多くいらっしゃいます。

このような結果になる原因は、ご自身が認識している市場価値と実際の市場価値が乖離しているためです。よく「大企業の座布団の上に乗っている」状態と表現しているのですが、これまで受けてきた待遇などは「大企業だから実現できていた」というケースがほとんどです。

それを認識しないで転職活動をすると、「本当は年収1000万円以上欲しいのに、選考を受けた企業から提示されるのはどれも400~600万円ばかりだ」ということになるのです。

転職経験がない

転職経験がない方も、転職活動時に苦労される方が多い印象です。一昔前は一社に長く勤めることが評価される節はありましたが、現代はビジネス環境が多様になり、働く社員には柔軟性が求められる時代なので、企業は就労経験が1社しかない人を敬遠する傾向にあります。

2、3社ほど転職経験があると、比較的スムーズに次のステップに行くことができるでしょう。ご自身にとっても、やはり転職経験が一度でもあると、「転職はこういう流れでやるのか」と感覚が掴むことができ、たとえ転職先があわなかったとしても、すぐに次の転職へと踏み出すことができます。

まだ早期退職までに時間に余裕がある方は、一度転職にチャレンジして、ご自身の市場価値を高めてみるのもよいかもしれません。

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失業期間が長いことは決して悪いことではない

早期退職後に転職活動を始めるもののうまくいかず、失業期間が3~6ヶ月ほどになる方も少なくありません。しかし、失業期間が長くなることは決して悪いことではありません。

実は失業期間を2〜3ヶ月ほど経験している方が、転職先の定着率が高い傾向にあります。転職した当初は「前の会社ではこうだった」「なぜ会社に食堂がないんだ。」「なぜ提示される年収がこんなに低いんだ」と理想と現実のギャップに苦しむことがありますが、時間が経つと、徐々に等身大の自分を認識し始めます。

要は失業期間が長くなると、「早く働きたい」と徐々に”お腹がすいた状態”になり、「どうすれば採用されるのか」を考えるようになります。

結果として自分の中の妥協ラインを探すようになり、その基準にあった転職先が見つかり、等身大の自分で入社するため、転職後のギャップも抑えられます。

失業期間が長くなることを決してネガティブに捉えずに、等身大の自分に近づいている、より良い転職が実現できる、とポジティブに捉えましょう。

早期退職後に後悔・苦労する可能性がある人の特徴

これまで多くの方の再就職支援に携わってきた中で、早期退職後に後悔や苦労される方には大きく以下の2つの共通点があります。

年収だけを見て転職してしまった人

早期退職後、年収だけを見て転職した人は、以下のような不満を漏らす傾向があります。

  • 入社前は年収だけを見ていたが、実際働き出すと思っていた仕事内容と違う
  • 転職後は役職が変わり、権限が無くなって張り合いがない
  • 部下がいないから自分で資料を作らないといけない
  • 部下が優秀じゃなくて困っている

大企業では周りに優秀な方がたくさんいらっしゃったかもしれません。しかし、中小企業では常に人手不足で、優秀な方が不足している状況が当たり前に起きています。年収だけを見て転職すると、そのような大事な部分を見落とすリスクがあるので注意が必要です。

前職の常識が抜けないまま転職した人

先ほどの話に付随しますが、前職の習慣が抜けないまま転職した方は、その後の転職先でも苦労される傾向にあります。

例えば、

  • 会社に食堂がない
  • 福利厚生が充実していない
  • 交通費を精算した後、すぐに振り込まれない

など大企業ならではの習慣を、中小企業に転職した後も固執している人が一定数います。長年大企業で働いていた方がそのような習慣からなかなか抜け出せないことは理解できます。

しかし、世の中にあるほとんどの会社が中小企業であり、多くの場合、そのような恵まれた環境は提供されません。早期退職を機に転職を考えている方は、柔軟に対応する姿勢も意識する必要があります。

50歳で早期退職をして後悔しないための準備とは

以下では50歳で早期退職をして後悔しないために、どのような準備ができるかについて解説します。

大きく以下の7つがあると考えられます。

  • 明確なキャリアプランを作る
  • 履歴書・職務経歴書を年に1回以上更新する
  • 退職のタイミングに注意する
  • 成長フェーズの企業に転職し、キャリアップを狙う
  • 満足できる仕事の基準を見つける
  • 健康的な生活を送る・体調を整える
  • 社外のつながりを増やす

それぞれについて解説します。

明確なキャリアプランを作る

早期退職をする場合でも転職後の明確なキャリアプランを考え続ける必要があります。

多くの方はいつか会社を退職しなければいけないということを意識して動いてはいません。来たる退職のタイミングに備えて、どのようなキャリアを作りたいか、そのためにはどのような準備をするべきかを逆算して考える必要があります。

職務経歴書を年に1回以上更新する

早期退職までにまだ時間の余裕がある方は職務経歴書を毎年1回以上、更新するようにしましょう。これを実施するだけでもスキルの棚卸しになり、自分のキャリアを客観視することができます。

更には、その作成した職務経歴書をビズリーチやLinkedInなどに登録して、どれほどスカウトが来るかを確認してみましょう。しばしば、「私は〇〇の会社で役職を持っていて…」と社内の評価を全面に押し出す方がいますが、社内評価と労働市場の評価は異なります。

職務経歴書を労働市場に出すことによって、自分のリアルな市場価値を確かめることができます。これはいわゆる消防訓練のようなもので、何か起こってから行動するのではなく、起こりうる問題に対して事前に対策しておくことが重要なのです。

成熟した産業が多い日本において、早期退職などは急に始まる場合もあるので、今から着手しておくことで、いざという時に備えることができます。

退職のタイミングに注意する

退職のタイミングについても注意しましょう。役職がある状態で転職する場合はまだ多くの選択肢から選ぶことができますが、転職を先延ばしにして、その間にポストオフになったり、権限や責任範囲が狭くなったりすると、いざ転職するときに選択肢が限定されてしまいます。

いわゆるスキーのジャンプ台のようなもので、役職があるときは飛び出す位置が高く、その分遠くまでジャンプできるのですが、飛び出す位置が徐々に低くなると、それに伴い飛ぶ距離も短くなります。

「来年ポストオフになるから今、転職する。」といったように計画的に転職することが重要です。

成長フェーズの企業に転職し、キャリアップを狙う

50代で転職する際には、成長フェーズの企業に転職することも、キャリアアップを図る上で有効な手段です。中小企業は、常に人手不足という背景もあり、役職定年や再雇用を導入していないケースもよくあります。

大企業出身の方が転職先を探される際に、大企業にこだわる方がよくいらっしゃいますが、大企業自体が50、60代の社員から卒業してほしいと考えている傾向があり、志望してもなかなか転職先が見つかりません。

運よく大企業に転職できたとしても、その企業でも近い将来、役職定年や、定年退職、再雇用など、同じ問題に直面することになります。

「年齢関係なく、バリバリと働きたい」という方は中小企業への転職がおすすめです。そちらの方が大企業よりも求人数が多く、成長フェーズの企業に入ることでその後のキャリアの選択肢も多くなるでしょう。

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健康的な生活を送る・体調を整える

何事もそうですが、新しいことにチャレンジする際には、健康が一番大事です。そんな当たり前のことかと思うかもしれませんが、これまでたくさんの方の相談を受けてきた中で、健康状態が悪く、就職できないという方が案外多くいらっしゃいました。

採用側の目線で考えると、やはり健康状態が良い人を採用したいと考えるものです。そのため、体調が芳しくない方は、まずは健康的な生活を送り、体調を整える必要があります。50代以降というのは、今までのように気力と体力で何とか乗り切るということができなくなっていくものです。

社外のつながりを増やす

早期退職後に転職しても、いずれは会社を退職する日が訪れます。その時には、そのまま退職するかいつまでも働くために独立するかといった選択肢を検討することになるでしょう。

「独立してどうやって仕事を獲得できるのか?」と疑問に思う方も多いのですが、安定して仕事を獲得するためには「弱いつながり」を持つことが重要です。

Strength of weak ties (弱い絆の強さ)という論文がアメリカで発表されていますが、弱いつながりを社外で持つことには、自分の市場価値への理解、キャリア開発、人脈形成、収入UPなど多くのメリットがあります。

弱いつながりを作るためには、会社ではなく個人の名刺を作り、自分ができる仕事やこれまでの経験などを資料にまとめて、あらゆる社外のコミュニティに参加することです。そこで周りの方に自分が何ができるかを知ってもらうことで、仕事の獲得につなげていくのです。

これまで会社員だった方は社外のコミュニティに参加する習慣がなかったと思いますが、今後のセカンドキャリアを見据えると積極的に取り組んでおきたいものです。

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まとめ

今後、インフレ経済の移行で持続的な賃上げが焦点となります。低収益事業の縮小ならびに売却が進み、生産性向上に舵をきらざるを得ない環境下では、早期退職制度の募集が増えてくると見込まれます。

そうした中、早期退職制度を自分事として今一度考えてみては、いかがでしょうか?