50歳で早期退職をしたい場合、貯金がいくらあれば安心して辞められるのでしょうか。また、退職後の生活資金はどれくらい必要なのでしょうか。
50歳での早期退職を検討する場合は、退職後の生活資金や費用を計算し、退職後も安心して生活を送れるよう資金計画を考えることが大切です。
完全にリタイアしようと考えている人も、まずは生活資金や貯金がいくら必要なのかを把握し、老後を見据えた資金計画を考えましょう。
この記事では、50歳で早期退職し、リタイアするために生活資金や貯金がいくらあればよいのか、必要資金額のシミュレーションと計算方法について解説します。
伊藤FP事務所代表。ファイナンシャルプランナー(AFP)兼ライター。大学卒業後、証券会社・保険コンサルタントを経て事務所代表兼フリーライターとして活動を始める。家計の見直しから税金・保険・資産運用まで、人生の役に立つ記事を幅広く執筆。
50歳で早期退職してリタイアするのに生活資金と貯金はいくら必要?【単身世帯】
50歳でリタイアし、平均寿命(男性81歳・女性87歳)まで過ごした場合、必要な生活資金額は男性で約6,271万円、女性で約7,408万円です。
また、50歳の早期退職時に必要な貯金額は以下のように男性で約2,627万円、女性で約2,960万円となります。
シミュレーションの項目 | 男性 | 女性 |
①50歳~65歳までの生活費 | 約3,017万円 | 約3,017万円 |
②65歳~平均寿命までの生活費 | 約3,029万円 | 約4,166万円 |
③50歳~60歳までの国民年金保険料 | 約198万円 | 約198万円 |
④50歳~65歳までの健康保険料 | 約27万円 | 約27万円 |
支出の合計額 | 約6,271万円 | 約7,408万円 |
⑤50歳で受け取る退職金 | 約1,500万円 | 約1,500万円 |
⑥年金受給額 | 約2,144万円 | 約2,948万円 |
収入の合計額 | 約3,644万円 | 約4,448万円 |
必要な貯金額(支出合計額ー収入合計額) | 約2,627万円 | 約2,960万円 |
(注)平均寿命は「令和4年簡易生命表の概況」により男性約81歳・女性約87歳で計算。
ただし、人によって生活のスタイルは変わるので、これらの金額はあくまでも目安として参考にしてください。
このシミュレーションの計算方法は、後述します。
50歳で早期退職してリタイアするのに生活資金と貯金はいくら必要?【二人以上世帯】
50歳で早期退職してリタイアする場合、二人以上世帯で必要な生活資金額は約1億2,523万円、退職時に必要な貯金額は約6,743万円です。
シミュレーションの項目 | 二人以上世帯 |
①50歳~65歳までの生活費 | 約5,292万円 |
②65歳~平均寿命までの生活費 | 約6,780万円 |
③50歳~60歳までの国民年金保険料 | 約396万円 |
④50歳~65歳までの健康保険料 | 約55万円 |
支出の合計額 | 約1億2,523万円 |
⑤50歳で受け取る退職金 | 約1,500万円 |
⑥年金受給額 | 約4,280万円 |
収入の合計額 | 約5,780万円 |
必要な貯金額(支出合計額ー収入合計額) | 約6,743万円 |
二人以上世帯は、単身世帯に比べて年金収入が増えるものの、生活費も多くかかるため、必要資金額は多くなっています。
このシミュレーションの計算方法についても後述します。
50歳で早期退職してリタイアするのに必要な生活資金額と貯金額【単身世帯】
50歳で早期退職する場合のシミュレーションを、以下の条件で計算してみましょう。
- 50歳に早期退職
- 独身(単身世帯)
- 年金受給開始まで無職
- 国民年金保険料は満額支払う
- 選択定年制(自己都合)で退職
50歳から65歳までに必要な生活資金額
最初に、50歳から65歳までに必要な生活費はどれくらいになるのかをシミュレーションします。
単身世帯(平均年齢58.2歳)の人の1ヶ月あたりの消費支出は、「総務省統計局の家計調査(2023年)」によると、以下のように16万7,620円となっています。
消費支出 | 16万7,620円 |
(食料) | 4万6,391円 |
(住居) | 2万3,815円 |
(光熱・水道) | 1万3,045円 |
(家具・家事用品) | 5,955円 |
(被服及びはきもの) | 4,712円 |
(保健医療) | 7,426円 |
(交通・通信) | 2万1,796円 |
(教育) | 2円 |
(教養娯楽) | 1万9,425円 |
(その他の消費支出(諸経費・小遣い・ 交通費・仕送り金)) | 2万5,051円 |
(注)本資料の数字は、表章単位未満を四捨五入しているため、内訳を足し上げても 必ずしも合計とは一致しません。
50歳から65歳までの15年間の生活費を計算すると、以下となります。
・16万7,620円×12ヶ月×15年=3,017万1,600円
65歳の年金受給開始から平均寿命までに必要な生活資金額
年金受給開始の65歳から平均寿命までに必要な生活費は、いくらになるのでしょうか。
厚生労働省の「令和4年簡易生命表の概況」によると、日本人の平均寿命は男性が81.05歳、女性が87.09歳で、令和3年よりも男女ともに平均寿命が少し短くなっています。
「総務省統計局の家計調査(2023年)」によると、65歳以上の単身世帯の生活費は以下です。
実収入 | 12万6,905円 |
消費支出 | 14万5,430円 |
(食費) | 4万103円 |
(住居) | 1万2,564円 |
(光熱・水道) | 1万4,436円 |
(家具・家事用品) | 5,923円 |
(被服及び履物) | 3,241円 |
(保健医療) | 7,981円 |
(交通・通信) | 1万5,086円 |
(教育娯楽) | 1万5,277円 |
(その他の消費支出) | 3万821円 |
非消費支出 | 1万2,356円 |
(社会保険料) | 5,799円 |
(直接税) | 6,437円 |
(注)本資料の数字は、表章単位未満を四捨五入しているため、内訳を足し上げても 必ずしも合計とは一致しません。
1ヶ月の生活でかかる費用は、「消費支出」と「非消費支出(税金と社会保険料)」の合計額で、15万7,786円です。
年金受給開始から平均寿命までの年数は、男性が約16年、女性が約22年です。
このことから、65歳以降に必要な生活費は
・【男性】15万7,786円×12ヶ月×16年=3,029万4,912円
・【女性】15万7,786円×12ヶ月×22年=4,165万5,504円
と計算します。
毎月の実収入と支出の差を計算すると、15万7,786円ー12万6,905円=30,881円となり、毎月約3万円の赤字という結果になっています。
年金だけでは生活は難しいため、毎月約3万円を貯金等から切り崩すかたちになります。
50歳から60歳までの国民年金保険料
50歳の早期退職後、60歳まで国民年金保険料を支払うと仮定します。
保険料は1万6,520円なので、10年分の国民年金保険料は以下のように計算します。
・1万6,520円×12ヶ月×10年=198万2,400円
早期退職で失業状態になった場合は、条件を満たせば国民年金保険料の特例免除を申請できる場合があるため、お住まいの市区町村役場の保険年金課に相談してみましょう。
また、早期退職後に他の企業などで厚生年金被保険者として働く場合は、国民年金保険料に厚生年金保険料が上乗せされるため、年収によって保険料が変わります。
個人事業主として独立する場合は、厚生年金への加入はないため、国民年金保険料分のみを納めることになります。
50歳から65歳までの国民健康保険料
50歳から65歳までの国民健康保険料は、どれくらいの金額になるのでしょうか。
国民健康保険料は、収入によって保険料が変わる「所得割」の部分と、収入がなくても支払わなければならない「均等割」の部分に分かれています。
また、自治体によっては「均等割」に加えて、「平等割」が設定されているところもあります。
早期退職によって無職になった場合は、以下のように「均等割」のみ、もしくは「均等割」と「平等割」の合計額を、保険料として納めることになります。
国民健康保険料は、自治体によって異なります。
ここでは例として、埼玉県さいたま市の1年間の国民健康保険料(令和6年度)をみてみましょう。
さいたま市のそれぞれの均等割は、以下のようになっています。(さいたま市では、平等割の設定はありません)
令和6年度 | 医療分均等割 | 支援分均等割 | 介護分均等割 | 合計(年間) |
35,000円 | 12,200円 | 13,400円 | 60,600円 |
多くの市町村では、低所得者にむけての国民健康保険税の軽減を行っています。
さいたま市では軽減割合は「7割」「5割」「2割」の3種類があり、早期退職して所得がゼロの人は、7割の軽減が適用されます。
ただし、軽減については世帯の収入が審査対象となります。配偶者に所得がある場合は軽減割合が縮小されることがあるため、市町村に問い合わせをしましょう。
さいたま市の均等割の合計は60,600円なので、7割減額されると60,600円×30%=1万8,180円になります。
50歳から65歳まで無職だった場合、15年間の国民健康保険料は、1万8,180円×15年=27万2,700円と計算できます。
50歳の早期退職でもらえる退職金
早期退職をすると、退職金を受け取れるケースが多いと考えられます。
早期退職では、定年の年齢を選べる「選択定年制度」と、会社が希望退職者を募る「希望退職制度」があり、選択定年制度では自己都合、希望退職制度では会社都合となります。
「令和3年 賃金事情総合調査」によると、大学卒、事務・技術労働者、総合職相当の人の勤続35年の退職金額は以下の通りです。
大学卒、事務・技術労働者、 総合職相当 | 勤続30年(自己都合・52歳) | 約1,706万円 |
勤続25年(自己都合・47歳) | 約1,143万円 | |
勤続30年(会社都合・52歳) | 約1,915万円 | |
勤続25年(会社都合・47歳) | 約1,398万円 | |
短大・高専卒、事務・技術労働者、総合職相当 | 勤続30年(自己都合・50歳) | 約1,243万円 |
勤続30年(会社都合・50歳) | 約1,348万円 | |
高校卒、事務・技術労働者、総合職相当 | 勤続35年(自己都合・53歳) | 約1,546万円 |
勤続30年(自己都合・48歳) | 約1,197万円 | |
勤続35年(会社都合・53歳) | 約1,669万円 | |
勤続30年(会社都合・48歳) | 約1,367万円 |
このシミュレーションでは、「大卒、事務・技術労働者の総合職相当」の「自己都合」による退職と仮定します。
50歳の統計がないため、47歳と52歳の間をとって、「50歳退職・1,500万円の退職金」として計算します。
50歳で早期退職した人がもらえる年金受給額
50歳で早期退職した場合、65歳からどれくらい年金がもらえるのでしょうか。
リタイアした後も国民年金保険料を支払い続け、老齢基礎年金を満額もらえると仮定して計算します。
年収500万円で28年間働いた人(大卒で22歳から働き、50歳早期退職を想定)の年金受給額は老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせて、一年間で約134万円です。
(厚生労働省の「公的年金シミュレーター」により算出)
65歳から平均寿命までの間、もらえる年金額の合計は、
・男性 134万円×16年=2,144万円
・女性 134万円×22年=2,948万円
となります。
厚生年金の受給額は加入月数や年収によって大きく変わります。
より正確な年金受給額を知りたい場合は、ねんきん定期便を手元に用意して、日本年金機構の「ねんきんダイヤル」に問い合わせましょう。
50歳で早期退職してリタイアするために必要な資金の計算結果【単身・男性】
50歳に早期退職してリタイアする際にかかる必要資金を、生活資金・退職金(大卒総合職のケース)・年金をもとに計算すると、以下のようになります。
シミュレーションの項目 | 男性 |
①50歳~65歳までの生活費 | 約3,017万円 |
②65歳~平均寿命までの生活費 | 約3,029万円 |
③50歳~60歳までの国民年金保険料 | 約198万円 |
④50歳~65歳までの健康保険料 | 約27万円 |
支出の合計額 | 約6,271万円 |
⑤50歳で受け取る退職金 | 約1,500万円 |
⑥年金受給額 | 約2,144万円 |
収入の合計額 | 約3,644万円 |
必要な貯金額(支出合計額ー収入合計額) | 約2,627万円 |
50歳の早期退職とリタイアのために必要な生活資金は約6,271万円となり、退職金と年金以外に貯金等として、約2,627万円が追加で必要という結果になります。
50歳から65歳までの15年間、年間約175万円・毎月約14.6万円の収入があれば、この不足分を埋めることができます。
50歳で早期退職してリタイアするために必要な資金の計算結果【単身・女性】
女性は男性よりも平均寿命が約6年長いため、生活費が多くかかる反面、生涯で得られる年金も多くなっています。
50歳で早期退職をした単身女性のシミュレーション結果は、以下となっています。
シミュレーションの項目 | 女性 |
①50歳~65歳までの生活費 | 約3,017万円 |
②65歳~平均寿命までの生活費 | 約4,166万円 |
③50歳~60歳までの国民年金保険料 | 約198万円 |
④50歳~65歳までの健康保険料 | 約27万円 |
支出の合計額 | 約7,408万円 |
⑤50歳で受け取る退職金 | 約1,500万円 |
⑥年金受給額 | 約2,948万円 |
収入の合計額 | 約4,448万円 |
必要な貯金額(支出合計額ー収入合計額) | 約2,960万円 |
単身女性が50歳に早期退職で辞めるために必要な生活資金は、約7,408万円です。また、退職金と年金以外に、約2,960万円の貯金が必要な計算です。
50歳から65歳の間に年間約197万円・月間約16.4万円の収入があれば、不足資金をまかなえる計算になります。
50歳で早期退職してリタイアするために必要な生活資金額と貯金額の計算方法【二人以上世帯】
50歳の夫婦(世帯主と専業主婦)のケースは、以下の条件で計算します。
- 50歳に早期退職
- 二人以上世帯(夫婦)
- 夫婦は同年齢で、二人とも85歳まで生きると仮定
- 年金受給開始まで無職
- 国民年金保険料は満額支払う
- 選択定年制(自己都合)で退職
二人以上世帯では、毎月の生活費が多くかかることから、必要資金はより多くなります。
それでは、50歳で世帯主が早期退職し、夫婦は同年齢で85歳まで生きると仮定したシミュレーションを説明します。
55歳で早期退職したいと思った場合、いくらあれば安心して退職することができるのでしょうか。近年は早期退職制度を利用して、会社を辞めた後に新しいステップを踏み出す人が増えていますが、そのためには老後のための資金計画が必要不可欠です。 […]
早期退職した50歳から65歳までに必要な生活資金額【二人以上世帯】
2022年(令和4年)の家計調査報告によると、65歳までの二人以上世帯の生活費は、以下のようになっています。
消費支出 | 29万3,997円 |
(食料) | 8万6,554円 |
(住居) | 1万8,013円 |
(光熱・水道) | 2万3,855円 |
(家具・家事用品) | 1万2,375円 |
(被服及びはきもの) | 9,644円 |
(保健医療) | 1万4,728円 |
(交通・通信) | 4万2,838円 |
(教育) | 1万448円 |
(教養娯楽) | 2万9,765円 |
(その他の消費支出(諸経費・小遣 い・交際費・仕送り金) | 4万5,777円 |
(注)本資料の数字は、表章単位未満を四捨五入しているため、内訳を足し上げても 必ずしも合計とは一致しません。
これらのデータから計算すると、50歳から65歳までの15年間にかかる生活費は、29万3,997円×12ヶ月×15年=5,291万9,460円です。
65歳の年金受給開始から平均寿命までに必要な生活資金額【二人以上世帯】
二人以上世帯で、65歳以上無職の世帯の生活費は、以下のようになっています。
実収入 | 24万4,580円 |
消費支出 | 25万959円 |
(食費) | 7万2,930円 |
(住居) | 1万6,827円 |
(光熱・水道) | 2万2,422円 |
(家具・家事用品) | 1万477円 |
(被服及び履物) | 5,159円 |
(保健医療) | 1万6,879円 |
(交通・通信) | 3万729円 |
(教育娯楽) | 2万4,690円 |
(その他の消費支出) | 5万839円 |
非消費支出 | 3万1,538円 |
(社会保険料) | 1万8,435円 |
(直接税) | 1万3,090円 |
(注)本資料の数字は、表章単位未満を四捨五入しているため、内訳を足し上げても 必ずしも合計とは一致しません。
毎月必要な生活費は、消費支出と非消費支出の合計で、25万959円+3万1,538円=28万2,497円です。
65歳から85歳までの20年間に必要な生活費は
・28万2,497円×12ヶ月×20年=6,779万9,280円
となります。
毎月の収支を考えると、約3万8,000円の赤字です。
50歳から60歳までの国民年金保険料【二人以上世帯】
夫が早期退職した後は、夫・妻ともに第1号被保険者となるため、それぞれ国民年金保険料を納めることになります。
50歳の早期退職後、60歳までの10年間、国民年金保険料を支払うと仮定すると、保険料は1万6,520円なので、夫婦二人分の10年分の保険料は、
・1万6,520円×120ヶ月×2=396万4,800円となります。
50歳から65歳までの国民健康保険料【二人上世帯】
早期退職後リタイアして働かない場合は、単身世帯のシミュレーション時と同様に、国民健康保険料が減免され、安くなります。
さいたま市を例にすると、均等割の合計は60,600円です。失業時は7割減免の条件をクリアできるため、1人当たりの年間保険料は1万8,180円となります。
夫婦それぞれ保険料を納める必要があるため、50歳から65歳までの国民健康保険料は、以下のように計算します。
・1万8,180円×15年×2人分=54万5,400円
また、「退職後2年間のみ、退職した企業の健康保険を継続できる」という制度がありますが、事業者負担分の保険料も支払わなければならず、保険料が高くなってしまいます。
継続制度を利用するよりも、国民健康保険のほうが割安になる可能性が高いため、シミュレーションでは、国民健康保険料の7割減免の金額で計算しています。
50歳の早期退職でもらえる退職金【二人以上世帯】
単身世帯の計算で説明したように、50歳の早期退職でもらえる退職金は、以下の通りです。
大学卒、事務・技術労働者、 総合職相当 | 勤続30年(自己都合・52歳) | 約1,706万円 |
勤続25年(自己都合・47歳) | 約1,143万円 | |
勤続30年(会社都合・52歳) | 約1,915万円 | |
勤続25年(会社都合・47歳) | 約1,398万円 | |
短大・高専卒、事務・技術労働者、総合職相当 | 勤続30年(自己都合・50歳) | 約1,243万円 |
勤続30年(会社都合・50歳) | 約1,348万円 | |
高校卒、事務・技術労働者、総合職相当 | 勤続35年(自己都合・53歳) | 約1,546万円 |
勤続30年(自己都合・48歳) | 約1,197万円 | |
勤続35年(会社都合・53歳) | 約1,669万円 | |
勤続30年(会社都合・48歳) | 約1,367万円 |
単身世帯のシミュレーションと同様に、退職金額は1,500万円とします。
自身の生活資金額を計算する際には、自分のケースに最も近い退職金額を用いてください。
50歳で早期退職した人がもらえる年金受給額【二人以上世帯】
50歳で早期退職した人がもらえる年金額は、退職までの勤務年数と年収によって変わります。
年収500万円で28年間働いた人(大卒で22歳から働き、50歳早期退職を想定)の年金受給額をシミュレーションすると、老齢基礎年金と老齢厚生年金を合わせた受給額は、年間約134万円です。
妻も老齢基礎年金を満額受給(令和5年は79万5,000円)できると想定すると、夫婦の1年間の年金受給額は約134万円+約80万円=約214万円です。
65歳から85歳までの20年間でもらえる年金額の合計は、
・214万円×20年=4,280万円
となります。
50歳で早期退職してリタイアするために必要な資金の計算結果【二人以上世帯】
今までのデータをもとに、二人以上世帯の人が50歳で早期退職してリタイアできる資金を計算してみましょう。
シミュレーションの項目 | 二人以上世帯 |
①50歳~65歳までの生活費 | 約5,292万円 |
②65歳~平均寿命までの生活費 | 約6,780万円 |
③50歳~60歳までの国民年金保険料 | 約396万円 |
④50歳~65歳までの健康保険料 | 約55万円 |
支出の合計額 | 約1億2,522万円 |
⑤50歳で受け取る退職金 | 約1,500万円 |
⑥年金受給額 | 約4,280万円 |
収入の合計額 | 約5,780万円 |
必要な貯金額(支出合計額ー収入合計額) | 約6,743万円 |
50歳で退職してからの支出と収入を比較すると、50歳で早期退職するためには、生活資金として約1億2,522万円、貯金として約6,743万円が必要です。
50歳から65歳までの15年間、夫婦で年間約448万円、月間約37万円の収入を得ると、老後の生活資金が不足せず、生活していける計算です。
二人以上世帯は生活費がかかるため、単身世帯に比べて早期退職後もしっかりとした収入が必要です。
住宅ローン返済が残っている場合の2つの対処方法
50歳での早期退職時に、住宅ローン返済が残っているという人も多いでしょう。ここでは、早期退職時の住宅ローンの対処法について解説します。
働いて毎月ローンを支払う
退職金などを使って一括返済できる場合でも、貯蓄が少なくなると不安だという人は、何らかの形で働いて今まで通り住宅ローンを返済しましょう。
たしかに、一括返済をすると当初の支払利息予定分を節約できるため、最も堅実な方法ではあります。
しかし、まとまった資金が手元からなくなってしまい、何かあったときに対処できなくなるというリスクもあります。
50歳はまだまだ元気な年代のため、働いて返済するという方法も検討しましょう。
一括返済する
手元資金にかなりの余裕がある場合は、一括返済するのもひとつの方法です。
安心できる貯蓄額が残るのであれば、一括返済して支払利息分を節約するようにしましょう。
50代はまだまだ働き盛り。働くことも選択肢に入れる
50代はまだまだ働き盛りで、知力・体力ともに充実している時期のため、完全にリタイアするには少し早いとも言える年齢です。
早期退職後のシミュレーションを見てもわかるように、退職後の生活にはまとまった資金が必要です。完全にリタイアするのではなく、自分のライフスタイルに合わせて無理なく働くことで、資金面にゆとりが生まれて安心感を得られます。
早期退職を検討しているものの、再就職先が見つからず悩んでいる場合、以下のような対策があります。
・派遣社員として新たな経験を積む
・業務委託契約で仕事を受ける
早期退職後に希望する職種への再就職が難しい場合、まずは派遣社員として半年ほど経験を積むのもひとつの方法です。派遣社員として働き、足りないスキルや経験を補完してから、再び正社員の転職にチャレンジすると良いでしょう。
また、今までの知識や経験を活かし、フリーランスとして仕事をするという選択肢もあります。
業務委託契約は複数の企業から受注できるため、仕事で関わる企業や人の幅も広がり、充実感を得られるでしょう。また、自分のライフスタイルに合わせて、無理なく仕事を続けられるため、年齢を重ねてもその時の状況に合わせた、柔軟な働き方ができます。
できるだけ長く働きたいという人は、フリーランスという働き方を検討すると良いでしょう。
このように、早期退職後はさまざまな働き方の選択肢があります。シミュレーションからもわかるように、50歳以降も何らかのかたちで働いて収入を得ることが大切です。
正社員にこだわらずに、自分に合った働き方を探すようにしましょう。
50代で早期退職後、再就職に苦労する方が多くいらっしゃいます。長年同じ企業で働いてきた人にとって、いきなり転職市場に飛び込むのは容易ではありません。それに加えて、年齢が高くなるほど転職先の選択肢は限られてきます。 本記事では、早期退[…]
まとめ
50歳でいくらあれば辞められるかのシミュレーションでは、必要な生活資金は単身男性が約6,271万円・単身女性が女性が約7,408万円、必要な貯金額は単身男性が約2,627万円・単身女性が約2,960万円です。
また、二人以上世帯のケースでは、必要な生活資金は約1億2,522万円、必要な貯金額は約6,743万円という結果になりました。
50歳で早期退職をする場合は、まとまった資金が必要となるため、何らかのかたちで働き、収入を得ることで金銭的・精神的な余裕が生まれます。
50代は気力・体力がまだまだ充実している時期です。希望するライフスタイルと両立できるような、自分に合った働き方で収入を得て、老後の生活を安心して過ごせるようにしましょう。