定年退職後は再就職、再雇用、どの選択肢がよい?選ぶべき働き方とは

定年退職を迎えた方には、再雇用や再就職、独立、引退など、さまざまな選択肢がありますが、どれを選ぶべきか悩む方も多いでしょう。

本記事では、定年退職後のキャリアの選択について、28年にわたり雇用調整や再就職支援を行ってきた髙松さんが解説します。

また、定年退職後のセカンドキャリアの考え方と行動、準備すべきことも紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。

Talent Fine Tuning 代表 髙松 健司
28年間にわたり人材の出口戦略、特に雇用調整および再就職支援に従事。これまでに約10,000人以上の方の再就職を支援してきた。
希望退職、事業所閉鎖、事業譲渡時の社内コミュニケーションのアドバイザリーも担当。合併、工場・事業所閉鎖、事業譲渡、会社分割、事業清算など、多岐にわたるプロジェクトを成功に導く。また、企業内でのキャリア相談の経験も豊富で、これまでに約2,000人以上の対象者とのキャリア相談を実施している。転職8回、出戻り1回、一人称でシニアのキャリアを語れる68歳。現在、個人事業主(Talent Fine Tuning 代表)

定年退職後の選択肢は何がある?

定年退職後の主な選択肢には、以下の4つが挙げられます。

  • 再雇用
  • 再就職
  • 独立
  • 引退して悠々自適な生活を送る

定年退職後、どの選択肢を選ぶべきかは人それぞれですが、ご自身の経済状況をよく考えた上で、働き方を選ぶことが重要です。

例えば、再雇用の場合は役割や給与が大きく変わるため、そのまま惰性で再雇用に進むのではなく、事前に条件を確認したり、再雇用を経験した先輩の話を聞いて、その働き方が自分に合うかどうかを確認する必要があります。

再就職も選択肢の1つですが、定年退職後は転職が難航する傾向にあるため、定年退職前から早めの準備が必要です。

独立、起業も一つの選択肢でしょう。経験豊富な方であれば現実的な選択肢です。ただ、いきなり独立するのはリスクが伴うため、独立前に副業を始めたり、人脈形成のために社外の交流を増やしたりなど準備をする必要があります。

定年退職を機に、仕事から引退して悠々自適な生活を送る選択も挙げられますが、年金の受給開始年齢の引き上げや、物価の上昇など、日本の今後の状況を考えると難しいかもしれません。

このように、選択肢によって、その後の経済状況や求められる準備などが変わってきます。改めて現在の状況を振り返り、どの選択肢が最適かを考えてみましょう。

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定年退職後も働く人が多い理由は?

これまでは「定年退職=引退」というイメージがありますが、実際には定年退職後も働く人が毎年増えている傾向にあります。

下記の内閣府「令和5年版高齢社会白書」の年齢別階級別就業率を見ると、全体的に右肩上がりです。60歳から64歳の就業率は2022年時点で73.0%に達しており、10年前の2012年の57.7%から約15.3%も上昇しています。

出典:「令和5年版高齢社会白書(全体版)」|内閣府

また、年齢を重ねるにつれて、個人事業主として働く人が増えています。

令和2年の内閣府のデータによると、65歳から69歳の男性の中では、自営業主や個人事業主として働く人が29.1%を占めており、65歳から69歳のパート・アルバイトとして働く男性26.4%を上回っています。75歳以上の男性は56.7%と半数を上回っている状態です。

出典:「2 就業の状況|令和2年版高齢社会白書(全体版)」|内閣府

定年退職後も長く働く人が増えている理由として、経済面と健康面の不安が考えられます。

中高年の抱える主な不安要素には「健康」「経済面」「住まい」「社会とのつながり」の4つがあり、こうした不安が定年退職後の働く動機になっています。

経済面では、年金支給開始年齢の引き上げや、老後資金の不足などが懸念されます。例えば、アメリカでは年金支給開始年齢が66歳で、2027年までに67歳へ引き上げられる予定です。イギリスでも同様に、2026年から2028年にかけて67歳に引き上げられる計画があります。こうした海外の動きも、今後日本でも導入される可能性があり、高齢者にとって不安要素と言えます。

また、社会とのつながりが薄れることによる孤独感も、働き続ける理由の一つでしょう。例えば、イギリスでは高齢者の孤独が社会問題となっており、65歳以上の4割が「テレビが一番の友達」と答えています。

この問題に対処するため、2018年に「孤独問題担当国務大臣」が設置されています。孤独は1日15本のタバコを吸うのと同等の健康被害があると言われており、生産性の低下にもつながることから国家的な対策が講じられているのです。

日本でも同様に、心身の健康のために定年退職後も働き続ける人が増えているのでしょう。

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定年退職後は「再就職・再雇用・独立」どれを選ぶべき?

以下では、「年齢に縛られない働き方」を実現するための、定年退職後の選択肢と注意点を解説します。

結論、定年退職後は再雇用と兼業の組み合わせがよい

結論として、年齢に縛られない働き方を実現するためには、再雇用と兼業の組み合わせからはじめるのが現実的といえます。

60歳から65歳までの再雇用期間中に、兼業先での仕事を徐々に増やしていき、65歳以降は兼業先を主な収入源とすることが理想的な流れです。安定した収入を確保しつつ、新たなキャリアやスキル、収入源を得られます。

また、定年退職後のキャリア形成を検討する際は、雇用契約のデメリットも理解しておくことが重要です。雇用契約で働く場合、在職老齢年金の制限があります。報酬と年金の月額合計が50万円を超えると、年金が減額されるのです。また、国民年金は59歳までの支払い義務のため、60歳以降に働き続けると「年金の支払い損」と言えます。

このような雇用契約のデメリットを考慮すると、兼業や個人事業主としての働き方を検討することも有効といえます。

定年退職後の再就職は難しいケースが多い

再就職を選ぶ人は、現在の企業の将来性への不安や、退職金と加算金がもらえるうちに辞めたいという理由が多いです。

しかし、実際には定年退職後の再就職のハードルは一気に高くなり、特に60歳を過ぎてから正社員で採用されるのは困難といえます。

「どうにかなるだろう」と楽観的に考えて転職活動を始めると、その厳しい現実に直面し苦戦することが多いのです。さらに60代以降の再就職には、年齢による市場価値の低下があったり、大企業に勤めていた方は、中小企業への転職に伴う環境や待遇のギャップに苦しんだりなど、さまざまな課題が伴います。

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定年退職後に再就職を成功させるポイント

定年退職後の再就職は厳しいと理解しながらも、それでも再就職を希望する方もいらっしゃるでしょう。

再就職を成功させるには、企業が求めるスキルを理解することがポイントです。「私は〇〇ができます」と一方的にアピールするだけでは不十分です。

例えば、自動車メーカー出身の方で、ソフトウェア会社に再就職できた方がいました。そのソフトウェア会社はマニュアル作成に課題を持っていたため、「作業手順書や標準書を作成するスキル」が評価されていました。

「転職する業界が違えばスキルが活かせないだろう」と思いがちですが、人手不足の現状では、雇用側も自社と接点を見つけようと努力してくれることがあります。

しかし、多くの転職エージェントの場合は、過去の経験やスキルだけを見て企業を紹介するため、各個人のスキルを深く分析し紹介してくれるわけではありません。

また、求人サイトのマッチングは、職務経歴書などのキーワードで行われることが多いため、自身のスキルや経験に結びつく適切なキーワードを入力しなければ、求める求人とマッチングしない可能性があります。

そのため、自身の機能を細かく因数分解しながら、企業が求めるスキルや経験を把握することが不可欠なのです。

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定年退職後のキャリアの方向性の決め方とは?

各個人のキャリアの方向性は、「一概にこれだ」とは言い切れません。というのも、市場のニーズによって求められるスキルや経験が異なるためです。

そのため、先述したように自身のスキルや経験を細かく分析し、市場にあわせて強みを活かせる分野を探ることが重要なのです。

以下では定年退職後のキャリアを決めるために必要な心構えについて解説します。

契約形態にこだわらず社会と関わり続ける

先ほど、定年退職後は正社員として採用されることが難しくなると説明しましたが、定年退職後は、契約形態にこだわらない意識が重要です。

実際に、最初から正社員を目指すのではなく、派遣社員として入社し、その後正社員に転職した事例もあります。

また、アルバイトや派遣社員からスタートすることで、新たなキャリアの可能性が見つかることもあるのです。

例えば、人口減に伴う労働不足、特にドライバーとして病院と駅の送迎業務で月収30万円を得ている人もいるなど、新しい仕事のチャンスが広がっています。

非正規社員や年齢に縛られない業務委託など、さまざまな雇用形態を検討し、社会と関わり続けることが、キャリアの機会や可能性を広げるカギです。

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積極的に新たな人脈を築く

再就職やキャリア転換を成功させるためには、新たな人脈を積極的に築くことが欠かせないポイントです。

大企業では特に自ら動かなくても仕事が与えられますが、兼業やフリーランスの場合は自分で動かなければ仕事は得られません。

アルバイトやパートでの仕事を「新しい出会いの場」と捉えることも、キャリアの可能性を広げるうえで有効です。

また、自分と異なる価値観を持つ人や業種の人とコミュニケーションを図ると、視野や可能性が広がり、新たなキャリアを築くチャンスも増えます。

まずは、副業のマッチングサイトや転職エージェントに登録したり、異業種交流会に参加したりして、社外のネットワークに飛び込み、人脈を広げていきましょう。

BEYOND AGEではシニア向けの交流会イベントを定期的に開催しておりますので、気になる方はお気軽にお問い合わせ下さい。

業務委託での協働を提案する

業務委託で働く人と一緒に仕事を進める協働もおすすめです。発注者側が再委託を禁止していない限り、業務を遂行するために何人で取り組むかは問われません。

そのため、業務委託で働く経験豊富な人に「手伝います」と申し出て、一緒に仕事をすることも有効です。業務委託の働き方や仕事の知見を得られ、スキルアップにつながります。徐々にスキルが身につき、将来的に独立につながります。

そのためにも、先述したように、人脈を広げることが大切です。知人や趣味のコミュニティ、異業種交流会などを通じて、自分とは異なる業種や雇用形態の人と関わり、協業できる相手と出会う機会を増やしましょう。

定年退職後はどのようなセカンドキャリアを構築すべきか?

ここでは、定年退職を迎えた方がセカンドキャリアを構築するために大切な行動や考え方を解説します。

「セカンドキャリア」は終わりではなく始まり

定年退職後のキャリアは「セカンドキャリア」という言葉で表現され、「現役は終わり」などとイメージしてしまう人も多いでしょう。しかし、定年退職後も数十年あるので「これから」の人生であり、新たな可能性に挑戦する時期と前向きに考えるべきです。

企業も従業員に新たなキャリアの可能性を与えるために、早期退職を促すことが多く、従業員側もその合理性を理解し、次のキャリアに向けて早めの準備が求められます。60代はまだ人生の中間地点です。定年退職後の働き方を「消化試合」にせず、積極的に新しいことに挑戦する意識を持つことが大切です。

体力低下を防ぐために運動を行う

加齢に伴う体力の低下は、新しいことにチャレンジする行動力や生活の質にも大きな影響を与えます。そのため、年齢に関係なく鍛えられる筋力トレーニングを行うことが重要です。

筋力トレーニングは、体力を維持・向上させるだけでなく、脳の活性化にもつながります。健康な体があってこそ、充実したセカンドキャリアを築けます。

また、精神面の健康を保つためには、定年退職後に孤独にならないよう人との交流やつながりを持つことも大切です。肉体面と精神面の両方を鍛えることを意識してください。

人は、仕事や家庭、趣味など多様な側面を持っています。セカンドキャリアを切り開くためには、これまで気づかなかった自分の特徴や強みを発見することも大切です。このような行動や考え方が、新しい挑戦やキャリア形成につながります。

50代後半から準備するのがベスト

キャリアチェンジのタイミングとして、50代後半から準備を始めることが理想的です。どうしても、時間が経つにつれて市場価値が下がってしまい、キャリアの選択肢が減ってしまうため、早めの行動が重要です。

正社員への再就職は難航する傾向にありますが、自分の強みを理解し、それを市場のニーズに合わせて柔軟にアピールすることが、将来のキャリアの成功につながります。早めに準備を始めることで、豊かなセカンドキャリアを築けるでしょう。

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まとめ

定年退職後は正社員に限らず、さまざまな働き方にチャレンジして社会との関わりを持ち続けることが重要です。定年退職をゴールではなく、新たなスタートと捉えて、自分らしいセカンドキャリアを築いていきましょう。

自身の市場価値やキャリアに悩む方は、シニア人材に特化した支援サービスを提供するBEYOND AGEの無料キャリア相談で、今後の方向性や自身の強みを客観的にアドバイスをもらうのも一案です。自身の可能性を広げるためにも、ぜひ何か1つでもセカンドキャリアに向けて行動してみましょう。

 

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